小寄道

日々生あるもの、魂が孕むものにまなざしをそそぐ。凡愚なれど、ここに一服の憩をとどけんかなと想う。

只見線・奥只見湖・清津峡、人気スポットへ

2023年10月20日 | 日記

新潟県十日町に近い津南温泉から、只見線の大白川駅へ。

いま内外から熱い視線をあびるJR只見線は、福島県会津若松駅と新潟県魚沼市の小出駅を結ぶローカル秘境列車。沿線沿いの幾つかの駅が山間の秘境にあり、四季折々に自然の超絶景が見られ、列車とのコラボレーション写真は旅情をかきたてる。大規模な水害で不通になった区間もあるせいか、単線を走る小さな列車と人を寄せつかせない秘境との構図は、なんとも儚く、そして美しい。その希少さこそ唯一無二であり、消失してしまうものへのノスタルジアを醸成すると言っていい。海外のファンが増えるのも、むべなるかなであろう。

鉄道オタクのみならず外国の秘境マニアが訪れるこの路線、去年10月から全線開通した。秋の紅葉を満喫する臨時列車も増車するらしい。小生らはシーズン序の口だから、と軽く考えていたが、実際には座る席がないほど中高年の旅行者が多かった。大白川駅は秘境ではないものの、魚沼市を流れる破間川沿いの風光明媚なところにある。まあ、ほんの少しのおさわり、大白川駅から越後須原駅までを乗る、いわば只見線の初体験ツアーを愉しんだ。

 

▲列車から破間川を見る。自動車を流石から防御するための鉄のトンネルであろうか?

越後須原駅を降りて、バスで道の駅・深雪へ向かう。そこに昼飯の弁当を届けてくれる手配になっていた。その名を「開高めし」といい、芥川賞作家の開高健にちなんだ弁当で、こんな口上が書かれていた。「酒と銀山湖と魚を愛した作家開高健のリクエストで生まれた山菜焼き飯」。たまごや蒲鉾はともかく、山菜の種類が豊富で、新鮮かつ美味な惣菜。ご飯にも山菜を混ぜこんで、油をほとんど使わない焼き飯というが、炊き込みご飯のようなふっくらとした旨さ。久々の逸品であった。

開高健は釣り師としてキャッチアンドリリース思想を世にひろめ、同時に奥只見の魚の保護にも尽力した。並の釣り師ではできない、魚を釣ることが世界を考えるに等しい、そんな気宇壮大な人だった。ベトナム戦争に従軍したことにも通じることなのか・・。

作家になる前は、サントリーの広告宣伝部にいて、山口瞳とともに一世を風靡する多くの広告コピーを世に送り出した。今のコピーライターの先駆けであり、当時は広告文案家と呼ばれていた。小生の若い頃、彼らが書くもの、小説、エッセイは、必読の教科書のようにして読み込んだものだ。「開高めし」を食べて、懐かしき昭和の頃を思い出し、感慨を深めた。

▲朝日新聞臨時特派員としてベトナム戦争を取材。南ベトナム軍に従軍し、多くのルポルタージュや小説『輝ける闇』を執筆。そんな開高の後半生は、魚釣りと旅の大家になった。

午後は奥只見湖に向かう。尾瀬燧ケ岳、会津駒ケ岳の北方、越後三山(越後駒ケ岳・中ノ岳・荒沢岳)の東側にある人造湖である。江戸時代に銀山で活況を呈したらしいが、黒部と同じように近代化に呼応する水力発電を国は推進した。その時のダム建設を担ったのが電源開発、いまのJパワーだ。人造湖としての貯水量は日本一とのこと。紅葉度はレベル2ぐらいといったところか。天気が良いせいか、湖上の風も気持ちよく爽やかで、すれ違う遊覧船どうしで手を振りあう客も多かった。

ここを離れて次は上信越高原国立公園にある清津峡に向かう。

黒部、大杉谷とともに日本三大渓谷の一つで、柱状節理が露出した地殻変動パワーのダイナミックな景観が見事だ。そして2018年に、以前からある渓谷トンネルをリニューアル。アートの趣向を凝らした各所の施設は、その斬新さで大反響をよんだ。そのハイライトが「光の洞窟」・パノラマステーションで、若者たちの人気スポットになり、ネットではかなりの評判になった。ここに行くと知らされたとき、ちょっとはにかみつつ喜んだ。「ああ、おれにはミーハーの血が流れているのか」と。

 

 

清津峡の渓谷トンネルでは、出発地点からファイナルのパノラマステーションまで、往復で約2キロの道程がある。白馬では登山用のストックを使用したが、ここでは足だけで歩いた。行きは軽い登りの傾斜があり、すぐに息切れして休んだ。最後の光りの洞窟では、さすがにへとへとになり、妻に被写体になってもらい、撮影に徹した。歩き通したことで小さな自信がついたし、5月にスマホに入れた万歩計アプリが新記録達成を祝ってくれた。

{追記:柱状節理のはなし}ぶらタモリというTV番組では、地学に関係する地殻変動、岩石の成立ちがよく話題となる。柱状節理もその一つで、清津峡は柱状節理の隆起と清津川の浸食により、それが地上に露出し、谷がさらに深くなったそうだ。これが約260万年前で、柱状節理そのものは、それより450万年前をさかのぼり、「マグマが七谷層に流入し、石英閃緑ひん岩となる。冷えて固まる際に堆積が収縮し、柱状節理となる」とパンフレットにあった。「この冷えて固まるときの体積収縮によって、垂直に六角柱状の節理が生まれ」たそうな。このメカニズムというか数学的解析を、数学者岡潔がある時期に挑んでいた話があったと思う、が忘れた。

 

▲トンネル内の通路は暗く演出されていて、赤や青、緑の光りで気分を盛りあげる。

▲一人で独占している、のように見える。が、左側には次なる被写体の人たちが列をなしている。日本人の美徳であろう。

ベリー系の実をつける植物をみた。違うようだが、名前は分らない。

 

 

 

 

 

 

 

 


最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (jeanlouise)
2023-10-24 00:23:12
ひとり独占しているかのように手を広げている写真、こちらまでうれしい大きな気持ちになってきます。
そして「開高めし」、前傾姿勢で目で味わいました。開高健ならどんなお酒と食するのだろうかと思いつつ。
初秋の小旅行に連れていってくださりありがとうございました!
返信する
Jeanlouiseさま (小寄道)
2023-10-24 09:36:51
嬉しいコメントです。ありがとうございます。
「開高めし」は、ほんとうに美味しかった。開高健がいろいろなアイデアと注文を出して、徐々に出来上がったそうで、フキとか細い竹の子の佃煮?など、忘れることのできない味の数々・・。

ともかく、今回は元気をもらったいい旅でした。
ありがとうございました。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。