小寄道

日々生あるもの、魂が孕むものにまなざしをそそぐ。凡愚なれど、ここに一服の憩をとどけんかなと想う。

長生きが後ろめたい日、来るーっ。

2014年03月02日 | エッセイ・コラム

 煙草を吸わなくなって6,7年。約40年間ヘビースモーカーだった私に、止めるきっかけをくれたのは30歳になるかならないかの若手医師だった。
 社会医療費が国家予算を半端ないほど圧迫している。喫煙を起因とする循環器系の病気治療が増えている事実。
 たぶん国は確実に本腰をいれて禁煙政策に乗り出すだろう。これからは気軽に喫煙する環境はなくなるだろうし、煙草にかかる税金もどんどん割増しされるに違いない。
「××さん、止めるならいまでしょ」と、彼が言ったかどうか忘れたが・・。私はそのとき、「1日5,6本ぐらいだったら」とか、「個人の嗜好だから止めた時のストレスの方が体に悪い」などと曖昧な態度をみせた。

 忘れもしない、医師はこうつぶやいた。
「私の親父である団塊世代のみなさんはだいたいそうですね。自分を変えようとは絶対に思わないんだ。なんか言い訳の理由をつくる、自分を曲げることになるとか。要するに意志力に乏しいことを認めない傾向があるんだな」と宣まわれた。

 私はカチンときた。私は団塊世代ではない。その証拠をこの若造に見せてやらねばと。
約1週間ほどで、私は完璧に煙草を止めた。いまでは彼に感謝している。

 しかし、それから3,4年たっても、健康診断の結果が毎年「高血圧・糖尿病予備軍」というお達しを受け、不本意ながら降圧剤を1日1錠呑むことになった。
オルメテックというARBタイプのもので、日本ではカルシウム拮抗薬に次いでよく使用されているポピュラーな降圧剤。副作用が少なく、糖尿病の発症を抑制する効果もある。

 先ごろ、降圧剤ディオバン事件が報道されたが、この薬の販売元、外資系製薬会社ノバルティスファーマの社員が身分を隠して京都府立医大に入り医療データをねつ造したという事件だった。(アカデミックなお墨付きがあると、薬の販売は飛躍的に伸びる)

 私が服用している薬と同じARBタイプだが、会社が違うので一安心。関心はすぐに薄れ、事件はほどなく忘れた。

 今日のビデオニュース「ディオバン事件と利益相反という日本の病理」をみて、事件の背景が相当深く、日本の部分的な医療問題ではすまされない、原発問題にも通底するような、日本の「村」システムの劣化や腐敗があることを知った。

 現在、高度医療は日々充実し、良い薬が次々と開発されている。さらに、国民皆保険の恩恵により、普通のひとは約三分の一程度の経費で済む。つまり三分の二は税金だ。100兆円ほど国家予算の約30%が社会医療費で38兆円余りにも上る。そのうち薬剤費分は年間約8兆円ぐらいの税金が投入されている。はからずも病気になり、病院や薬を使うようになると税金の世話になる。私たちが払う税金だから当然の権利といえるが、その生殺与奪を握るのがお医者さんだ。薬の処方権をもつ医師の判断ひとつで、一人あたり年間4000万円もの高額な薬剤を投与される。もちろんそんなケースは特異な病気である。また、高額医療の適用で患者負担は、その上限金額も決まっている。(ふつう8万円ぐらい、低所得者は4万円ほど)  

 ともかく医療・薬剤費は今後40兆円もの市場規模になる。医療機関、医者、製薬会社など様々な当事者の癒着、腐敗を生み出すはずである。これをチェックするのが行政・公的機関だが、血液製剤問題の時のように、問題があまりも高度化・複雑化しているので、大きな期待はできない。

 国民皆保険はやはり両刃の剣かもしれない。といって、なければ悲惨だ。

来たるべき超高齢化社会。寝たきり老人となって、ひたすら税金を使うだけの境遇になったら・・。長生きするのが申し訳ないと思う、なんて厭な時代はきっと来るだろう。


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