秘境という名の山村から(東祖谷)

にちにちこれこうにち 秘境奥祖谷(東祖谷山)

奥祖谷秋風景

2008年10月12日 | Weblog
里の江に着いた頃には夕暮れはしずかに深く降りてきていた
遠い昔の日本では「秋は夕暮れ」の美的感性が培われていた。

和尚は今の世の様変わりを浦島太郎のように眺めているのであろうか
それも仕方の無いことかもしれない、なにしろ奥祖谷も1000m近い
標高にある雲上寺の和尚で世情に疎い変わり者である。

里の江は確かにあったが、荒涼とした廃墟と化した集落となっていた
草木が絡まり生い茂りススキは延び放題でなんの風情も無い有様であった。

和尚はその辺りに転がったいる大きな石に腰掛けていたが、住んでいた
住人の庭石であったであろう形のよい石であった。

山村の夕暮れはさすがに寒くなってきた、風も出てきて樹木がざわめき
雲の多い空には月が見え隠れしていた。
里の江の光景は風情のある景色とはあまりにもかけ離れて鬼気迫るものさえ
感じられたが、和尚は意に感じなかったのである。

十三夜の月夜は更けて、和尚は動かなかった。
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