無音の切迫感が太い幹を貫いて天空に突き刺さったが空虚の感触に
うろたえたものだが、いまさら何をほざいて訴えているのやら
黙っていれば良いものを、いったい誰に話しかけているんだ、さあーて
あなたの後ろのあなたに呼びかけているのでしょうよ。
いまどきそんな風流なことを話す御仁が山里に居るものかと聞いてみると
ああーあのひとは遂、先だって亡くなりました、今頃は三途の川を渡って
いるころでしょう。
なあんだ、死んでいるのか、死んでいるのに話し声が聞こえるのかと訝ると
それは逆転の風景ですよ、ほれ、天空に刺さっているでしょう。
一瞬わたしは頭から足先までをうろうろと眺め回したが地面と天空の境目が
判らずあたふたと探しても埒が明かずに、ままよ、どうにでもしてくれと
ふて腐れた顔を死神は苦笑してお前さんも踊れ、それが応分の報酬というもんだ。
生あるものの往生など何時とも知れぬ、今日か、明日かと訊ねても愚かなことよ
と云われて、それもそうだと神妙に観念して否が応でも踊らにゃなるまい。
大向こうを唸らす器量など元からありもしないが地獄に一抹の涼風でしょう。