何時歩いてもしづかな集落である、いま住んでいるのは数軒ぐらいである
ほとんど廃家になってしまった、歩いていても偶にしかひとに逢うだけの寂しさである
最上部にNさんの家がある、数年前にお会いしたときはお元気であったがと思いながら
お家を訪ねると、屋上のベランダに居られた
Nさんは今年傘寿を迎えられたそうで、相変わらずお元気な笑顔で、よもやま話をされた
一時の話にお互いに至福を感じて、やっぱり年寄りの話は何時もいいものだなあ
帰りにこのお家にもおばあさんが居たよなあと道の入口に立ち止まるとすでに廃家であった
道路工事に使用する標識が一つ置かれて倒れていた
庭を覗いてみると、小さな細い茎の草花が小刻みに震えたいるようにぽつんとしていた
文字摺草であった
近くの水溜まりに水すましが絵を描いていた、ただそれだけの寂寥の廃家であった
道をしへ案内乞ふも廃家かな
寂寥に文字摺草の揺れにけり
空描きピカソ曲線水すまし