標高700あまりの山家はお隣さんといっても、わが家に入る小道の上に一軒のみで
あり、もともと限界集落みたいなもので、林道を走る車など数えるほで、朝と夕方に
仕事の行きかえりに車の音が聞こえるだけで、まったく静かである
朝涼しいうちに、部屋中の窓を開け開けて、空気の入れ替えをして、布団、毛布を何枚も
干す仕事は手間はかかるが、閉まっている時間が長いだけに必要なことである
持ってきたベニヤを適当に切って、天井の撓んでいる場所に打っちゃって、補強して大工仕事はおわりだ
テレビ、ネット環境のない暮らしはシンプルである、ぼーとして、ゆっくりと、時間が過ぎてゆくのを味わいながら
庭の草花を眺めたり、杉の小枝を掃除したりで、朝の時間は
いつの間にか経っていく
太陽のきつい時間を見計らって、楽しみの一つになっているのが、素っ裸になって、庭で
水浴びをすることである
なにしろ、ひとの目を気にしないでいいからである、だれも来ることはない、林道を歩く
ひともいない、気兼ねなく、子供心に帰って、楽しむことができる
そうはいっても、長い時間は敵わない、山水だから、すぐに身体が冷えてきて、終いには
震えることもあるのである
スッキリした気分になって、お昼ねを楽しむのも、贅沢な時間である
とばりが降りはじめると、ひぐらしの鳴き声が止まりだして、代わりに秋虫が鳴きだす
いま、しきりに鳴いているのは馬追、スイッチョ~ンの声を聞きながら俳句の一句も
出てきそうな雰囲気、だが、そう簡単にはものごとははかどらずに
だんだんと瞼が閉じていくのを覚えて
サマーベットでいつの間にか転寝していた
夜なかに、目が覚めて、ゆめのなかで句作したらしい
馬追やしきりに鳴きて恋の事
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