木々は緑の装いを急ぎ、春も盛りを過ぎようとしている豊かな瀬戸風峠を歩くよろこびは
また、格別である
散り残ったさくらの花も僅かとなり、若葉ばかりが目立つこのごろは陽射しや風の動きも
夏の間近いことが感じられて、晩春の雑木林風景なかで小鳥たちの透き通るような鳴き声
けたたましい警戒の鳴き声などを聞けて面白くたのしいものである
さくらのころの華やかな行楽の日々は、はや、過ぎ去りてなんとなく物さびしい心持ではあるものの、
春まさに尽きんとするとき、時の流れがひしひしと打ち寄せてくる容赦のなさを如何とも
出来ずに、ただただ、流れ行く水のごときに身を任すだけである
過ぎ行く春を惜しむ感傷のなかにも、勢いを増すみどりに圧倒されて埋没したい衝動に駆られながら
「いま、ここに」に生を確かめ、豊かさを感じて歩くたのしさもある





