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やきもの・鑑賞・入門

今回も「民藝が分からない」シリーズ。

ご存知のように民藝の藝は工芸の芸だ。
この「工芸」というのが明治以降に成立した結構厄介な概念である上に、
なかでも「やきもの」というジャンルは歴史が長く、
また、茶道具から日用品まで幅が広いので、なんだか大変なのだ。

ところが、民藝にとってはやきものは基本ジャンルである。
そもそも柳宋悦が民藝に目覚めたのが李朝陶器というやきものだし、
同人には後に人間国宝になったような陶芸家が大勢いる。
そのやきものが分からないので民藝が分からないのではないか。

・・・ということで、やきものの入門書を読んでみました。
やきもの鑑賞入門 (とんぼの本)やきもの鑑賞入門 (とんぼの本)
出川 直樹

新潮社 1997-01
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以下、同書から陶磁史関係のポイント抜書き。

世界での一般的な陶磁器の歴史=「進化」の歴史
・土器(低温焼成)→せっ器(高温焼成)→陶器(粘土+釉薬)→磁器(石粉+釉薬)
*18世紀以降は実用品(食器類)も美術作品も磁器が多い。
日本:
○各時代のものが現在も残っている「多様性」
・歴史的には中国・朝鮮半島の圧倒的な影響下にある
・進化の流れに沿った代表例・・・有田陶器(西欧への輸出、伊万里・柿右衛門の人気)
○日本独自の美意識
室町~桃山期「侘び茶」の美学(村田珠光)が日本人の美意識・感性を育んだ
・鑑賞対象としての「無釉焼締め」
 世界:土を材料としながら、土から離れる方向に美的進化「薄い・明るい・白い」(景徳鎮等)
 日本:土への回帰・・・土の個性を引き出す「無釉焼締め」(信楽・伊賀・備前・丹波・常滑)
・織部様式
 桃山時代に登場した新しい美学
 左右非対称で動きのある造形、抽象文様に特徴

<鑑賞の変遷>
唐物自慢(青磁、耀変天目等)

侘茶の美学(井戸茶碗→織部の創造)

大正期の新しい美学(茶陶一辺倒の古陶磁鑑賞界への新風)
○鑑賞陶器:中国古陶器(唐三彩、宋磁等)、古九谷、柿右衛門、鍋島等が美的鑑賞の対象に
○民藝:李朝陶器、丹波古陶、沖縄等の「発見」、個人作家の輩出

戦後~現在(価値観の多様化と画一化)
○前衛陶芸(純粋造形運動「走泥社」)
○伝統工芸としての陶芸(桃山時代の優品群の跡追い?)
○生活古陶磁を楽しむ(高度成長期以降の愛好家層の拡大)
・明治期の伊万里、美濃、瀬戸、本郷等の銅版印刷の磁器類
・雑器類(幕末の伊万里焼、各窯の油壺、瀬戸の石皿・馬の目皿・ソバ猪口、等々)

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