「ママ、イチゴかって!」
まだ苺が出回り始めたばかりの5月、私は母にねだった。
母は高いイチゴを、不思議なくらいすんなりと買い物かごに入れてくれた。
もともと絵を描いたり工作したり、何かを作るのが好きだった私は
小学校も中学年になると「お菓子作り」の本を読むのが大好きになっていた。
本に出てくるパンやケーキが焼けるあまい香りを想像しては、つくってみたい、
といつも思っていた。しかし、我が家にはオーブンが無かった。
母の日に、私は本でとても魅力的だった「苺のババロア」を作ろうと考えた。
ババロアなら、冷やして固めるだけだから、オーブンが無くても出来るお菓子だ。
それに母はババロアが好きだと言っていたのだし。
家に帰って母を誘っていっしょに作り始めた。
ゼラチンを熱くした牛乳で溶かすとき、牛乳を手にかけてやけどをしてしまった。
母が
「もうやめる?あとはママがやってあげようか?」
と言ったが、私は、
「痛いくないから続きを作ろう」
と意地を張った。ほんとうは、ひりひりと痛かったのに。
はじめて泡立てる生クリームはなかなか手強かった。かき回してもかき回しても、「つの」が立たない。
苺はひとパック全部をつぶして裏ごしした。ジューサーなど無かったから、大変な手間だ。
それでも、なんとか冷蔵庫に入れて冷やし固めた。
父が帰るのも待ち遠しく、ババロアを取り出しひっくり返してお皿に開けると、
鮮やかなピンク色がぷるぷると震えた。
「母の日ありがとう」
と母に差し出した。
母は美味しそうにパクパクと食べてくれた。
私はなぜか夜遅くまで食べずにいたのだけれど、寝る前にとうとう食べてみた。
ドキドキしながら、一口スプーンですくって口に入れた。
「あれ?」
レモンを入れすぎて、すごく酸っぱかった。
お菓子作りは思っていたより、難しかった。
あのはじめてのババロアは、やはり失敗だったのだろうかと今でも考える。
********************************
またもや六花亭のエッセイ募集に応募しようと考えた。
今回のお題は「思い出のおやつ」
リベンジ!
まだ苺が出回り始めたばかりの5月、私は母にねだった。
母は高いイチゴを、不思議なくらいすんなりと買い物かごに入れてくれた。
もともと絵を描いたり工作したり、何かを作るのが好きだった私は
小学校も中学年になると「お菓子作り」の本を読むのが大好きになっていた。
本に出てくるパンやケーキが焼けるあまい香りを想像しては、つくってみたい、
といつも思っていた。しかし、我が家にはオーブンが無かった。
母の日に、私は本でとても魅力的だった「苺のババロア」を作ろうと考えた。
ババロアなら、冷やして固めるだけだから、オーブンが無くても出来るお菓子だ。
それに母はババロアが好きだと言っていたのだし。
家に帰って母を誘っていっしょに作り始めた。
ゼラチンを熱くした牛乳で溶かすとき、牛乳を手にかけてやけどをしてしまった。
母が
「もうやめる?あとはママがやってあげようか?」
と言ったが、私は、
「痛いくないから続きを作ろう」
と意地を張った。ほんとうは、ひりひりと痛かったのに。
はじめて泡立てる生クリームはなかなか手強かった。かき回してもかき回しても、「つの」が立たない。
苺はひとパック全部をつぶして裏ごしした。ジューサーなど無かったから、大変な手間だ。
それでも、なんとか冷蔵庫に入れて冷やし固めた。
父が帰るのも待ち遠しく、ババロアを取り出しひっくり返してお皿に開けると、
鮮やかなピンク色がぷるぷると震えた。
「母の日ありがとう」
と母に差し出した。
母は美味しそうにパクパクと食べてくれた。
私はなぜか夜遅くまで食べずにいたのだけれど、寝る前にとうとう食べてみた。
ドキドキしながら、一口スプーンですくって口に入れた。
「あれ?」
レモンを入れすぎて、すごく酸っぱかった。
お菓子作りは思っていたより、難しかった。
あのはじめてのババロアは、やはり失敗だったのだろうかと今でも考える。
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またもや六花亭のエッセイ募集に応募しようと考えた。
今回のお題は「思い出のおやつ」
リベンジ!