仁の背中には絵が描いたあった。首の付け根の辺で尻尾が絡み合い、肩甲骨で輪を描いて、両腕をぐるぐる回って、手首の少し手前で口を開いている竜が張り付いていた。最近は体に色が付いている人が珍しくない存在になった。でも、当時は、暴力関係の人以外はとても珍しい存在だった。刺青があるだけで近づきがたい人という感じだった。仁が呼吸に入ると竜が踊るみたいに見えた。それは美しく、仁の呼吸とシンクロしていた。
激しい呼吸が終息するとアキコが動いた。手を拡げ、ゆっくりと仁とナオンに向かった。仁が血だらけで「ベース」に戻ったときのように二人を包みこむように肌を合わせた。ヒトミが、ヒロムが、そこにいるすべてのものが二人に重なりあった。柔らかい呼吸の中で仁に抱かれていたナオンは静かに涙を流していた。すでに、覚醒からは解き離れていた。皆はナオンが同種であることを感じていた。涙は暖かかった。言葉のない共有が皆の魂に拡がった。
目を瞑り、力の抜けた仁からアキコとヒトミがナオンを離すと、仁はまだ勃起していた。ナオンをゆっくりと寝かせ、二人は仁を慰めた。「神聖な儀式」が終わった。
なぜ、10人もの人間がテルホの1室には入れたのか、今と違って、当時は和室が必ずといっていいくらい用意されていた。だから、そこを選んで僕らは、「ベース」からの行動を継続した。人が人を呼ぶ。「沈黙」の中で始まった集団は、その規模を徐々に大きくしていった。
目を瞑り、力の抜けた仁からアキコとヒトミがナオンを離すと、仁はまだ勃起していた。ナオンをゆっくりと寝かせ、二人は仁を慰めた。「神聖な儀式」が終わった。
なぜ、10人もの人間がテルホの1室には入れたのか、今と違って、当時は和室が必ずといっていいくらい用意されていた。だから、そこを選んで僕らは、「ベース」からの行動を継続した。人が人を呼ぶ。「沈黙」の中で始まった集団は、その規模を徐々に大きくしていった。