仁、そして、皆へ

そこから 聞こえる声
そして 今

朝の臭いの中でⅥ

2009年05月08日 16時00分11秒 | Weblog
「仁さん、ほんとに三日くらい起きないの。」
「前もそうだったよ。仁ちゃん。トイレにも行かなかったよ。」
マサルが切り出した。
「今日どうする。」
「誰かついてないと。」
「じゃあ、仁さんの布団を・・・いいかあ。ベッドルームに運ぼう。」
「もう少しここにいない。不思議だったの。昨日のことが・・・・」
「いいけど。不思議って。」
「マーちゃんも、ミサキさんも、初めてだったんでしょ。昨日みたいなことって。」
マーも、ミサキも、同じことを考えていた。
「昨日ね。たぶん、皆と交わったって。一緒になれたって感覚はあるんだけど。誰とどんな風にしたか、ぜんぜん覚えてないの。」
ハルは仁を見ていた。
「マサルとマーちゃんと三人でしたときは・・・・・」
「あは、そうなんだよう。マミちゃんともしたはずなのに、蝶のことはぜんぜん覚えてないんだよ。」
「マーちゃんはもうー。」
「仁さんって・・・。」
「マミちゃんって。マサミさんのこと。」
ヒカルが聞いた。
「うん、さっき決まったんだ。」
「そんな感じもなかったね。」
「何が。」
「うん。「ベース」にたどり着いた頃さ。名前なんかなかったよ。」
「そうだね。」
マサルとヒカルの目が合った。
「ちょっと怖いの。」
「仁さんのこと・・・・たぶん僕らと違う力を・・・・」
「仁ちゃんは普通だよ。」
マサミがポツンといった。
「仁ちゃん。子供殺したって、泣いてたもん。それから・・とても優しくなって・・」
マーが立ちあがり、ドレムスの所に行った。軽くリズムを刻み始めた。
「やんない。」
「仁さんは・・・・」
マサルとヒカルが布団ごと仁をリビングのセンターから動かした。
「ねえ。また怒られない。」
「でっかい音じゃなきゃ。大丈夫だよ。」
「どうしようかなあ。」
「何で。」
「だって、また感じたら・・・。あっ。ヒカルさん。ベース弾けるんだね。」
「ヒカルにしてよ。」
「ミサキさんも、ミサキでいいの。」
「何でもいいわ。」
マサミが言った。
「賛成。」
マサルとハルが手をあげた。ミサキもマサミもふきだした。
「どうせやるなら、仁さんに聞いてもらおうよ。」
マーが言い出し、皆が仁の回りに集まり、布団を壁際に運び、上体を壁につけるようにして皆が見えるようにした。
「何か、追悼コンサートみたいね。」
「バカ。」
マサルがハルをぶった。
「仁ちゃん、目が覚めたりして。」
「いいねえ。」
マサルが電源を入れた。