それから、性的展開はなかった。演奏者は楽器から手を離し、赤い唇の仁の言葉を、いや、言葉に同化した。赤い唇の仁を囲み、円を作るように座り、意味も解らない言葉を唱和した。彼らはもう現実の世界にはいなかった。赤い唇の仁の造る世界にのめり込んでいた。思考も、感情も、感覚も、直感も、その快楽とも、恐怖とも、いや、畏怖すべき不思議な世界の中では意味を成さなかった。赤い唇の仁の舞が静かに終局を向かえ、センターに座り込んだ。と思うまもなく、大の字になって眠りについてしまった。周りを囲む円の皆もそのまま、後ろに倒れ込み、手を触れ合って眠った。
もう直ぐ、日がかげるだろう時刻にマサルの部屋の呼び鈴がなった。マサルは玄関まで行って自分が全裸であることに気付いた。魚眼レンズの向こうにはヒデオをアキコがいた。
「ちょっと待って。」
マサルは皆を起こし、バスローブを羽織らせた。急いで、玄関に戻り、ドアを開けた。
「お帰り。」
ヒデオとアキコは部屋の中から交じり合う男と女の体臭を感じた。
「何してたんだよ。」
「セッション。」
リビングに入ると赤い唇の仁が全裸でセンターに寝ていた。その周りに同じバスローブの集団が膝を抱えて、座っていた。それは普通に見るとヘンな風景だった。
「はは、何してるのかな。健康優良不良少年、少女諸君は。」
アキコの声に、というより言葉に、皆がいっせいに笑った。
「仁は」
「仁ちゃんなら、大丈夫。きっと直ぐに起きるわ。」
「ねえ、ほんとに何してたの。」
アキコが聞いた。
「解らないけど、気持ちよかった。」
「また、一緒になっていたの。」
「うん、でも、セクスはしてないよ。」
「違う国に行ってたみたい。」
「もう、うらやましい。」
アキコの言葉に皆がまた笑った。アキコは皆を静止させ、バッグから見取り図のコピーを取り出した。
もう直ぐ、日がかげるだろう時刻にマサルの部屋の呼び鈴がなった。マサルは玄関まで行って自分が全裸であることに気付いた。魚眼レンズの向こうにはヒデオをアキコがいた。
「ちょっと待って。」
マサルは皆を起こし、バスローブを羽織らせた。急いで、玄関に戻り、ドアを開けた。
「お帰り。」
ヒデオとアキコは部屋の中から交じり合う男と女の体臭を感じた。
「何してたんだよ。」
「セッション。」
リビングに入ると赤い唇の仁が全裸でセンターに寝ていた。その周りに同じバスローブの集団が膝を抱えて、座っていた。それは普通に見るとヘンな風景だった。
「はは、何してるのかな。健康優良不良少年、少女諸君は。」
アキコの声に、というより言葉に、皆がいっせいに笑った。
「仁は」
「仁ちゃんなら、大丈夫。きっと直ぐに起きるわ。」
「ねえ、ほんとに何してたの。」
アキコが聞いた。
「解らないけど、気持ちよかった。」
「また、一緒になっていたの。」
「うん、でも、セクスはしてないよ。」
「違う国に行ってたみたい。」
「もう、うらやましい。」
アキコの言葉に皆がまた笑った。アキコは皆を静止させ、バッグから見取り図のコピーを取り出した。