仁、そして、皆へ

そこから 聞こえる声
そして 今

さて、その家のドアを開けるのはⅡ

2009年05月28日 17時50分43秒 | Weblog
 楽器は不思議だ。演奏する人のその瞬間の感性が音に出る。マサルは何を弾くという意図があったわけではなかった。フレットを押さえる指の走るままに音を追いかけた。
 ハルはマサルの周りに音の創り出す世界を見た。見たことのない生き物がマサルに取り付き、天女が一緒に演奏をしていた。音の創るイメージが、その周りの存在物を微妙に変化させた。さらに空気は、虹色のグラデーションとなり、暗黒と清涼が入り混じり、安堵と不安が足元に忍び寄った。対立するものが交互に現れ、溶け合うように見えては分離した。ハルはその世界に引き込まれていきそうになった。床に手をつけ、這うように、まるでトカゲか何かになったようにしてマサルに近づいた。