仁、そして、皆へ

そこから 聞こえる声
そして 今

もう一つの「ベース」根拠地に向かってⅡ

2009年05月18日 17時55分07秒 | Weblog
 それは家の見取り図だった。ヒデオとアキコは船橋から市川に周り、本八幡に戻り、再び、市川に向かった。江戸川沿いのかつて農家だったらしい一戸建てを見つけた。船橋、本八幡の物件に比べると土地も広く、建坪、床面積ともの広かった。
すでに時間もなく、手付金だけ置いて、不動産屋を出た。まあ、詳しいことは聞かなかったが、実際に現地にいくことになったとき、何か、とてつもないとこが起こったのだろう場所であることを発見することになった。それでもそのときは条件のよさに興奮気味で見取り図を開いていたのだが。一階には土間があり土間の奥に台所があった。マサルの部屋も広いがそれはそれ、農家の広さは凄かった。見取り図を見ながら、興奮気味に話すアキコをヒデオが諭すようにしながら「ベース」の構想を話した。
 自分らは個々の必然性によってかつての「ベース」にたどり着いた。だから、新しい「ベース」もいつもそこを必要とする人間のためにオープンにしておきたい。そのスペースが一階で取れる。さらに二階は今、ここにいる人間が暮らすことができる広さが充分ある。そして、家賃が安い。改造をしてもかまわない。建て替え以外なら何をしてもいいという条件。
「ここから、新しい「ベース」根拠地を始めないか。」
ヒデオの言葉には力があった。誰も何も言わなかった。笑顔でヒデオの手を握った。ハルがポツンといった。
「演奏はできるの。」
「それはまだ現地にいってないんで解らないんだ。」
「えー、まだ見てないの。」
「でも地図を見ると、一番近い住宅まで五百メートルはあるから・・・」
「お金いるんでしょ。」
「うん。まあ、とにかく安いから、オレとアキコでなんとかなりそうなんだ。」
「いいですよ。僕、お金は何とかしますから。今度のお休みの日に見に行きましょう。」
「仁、起きないかな。」
皆が仁を見た。