仁、そして、皆へ

そこから 聞こえる声
そして 今

その暗闇の臭いと住人2

2010年01月06日 11時32分28秒 | Weblog
 リハーサルを始めた。マーがドラムスを壁際からセンターに持ち出した。
「おもしろいねえ。」
ジミーさんは止めるつもりもないらしかった。というのも音を出し始めると壁際にセットされていた位置からではマーは他の音が聞こえなかった。ジミーさんとマサルとハルとミサキがドレムスのマイクをセッティングし直した。
「すごいねえ。みなさん自分でできるんだねえ。」
ボーイソプラノには似合わないオジサン調の話し方にまた噴出しそうになった。
「ジミーさんお一人でやってるんですか。」
「スタッフはいるけど、あてにならないからね。そのうち、明りのと、コックが来ると思うよ。」
「思うよって・・・・。」
 マサルは手際が良かった。それでも、ヴォーカルのマイクをセットすると、ドラムスに使えるのはベードラ、スネア、上二本だった。モニターは四本あった。マーを前後に囲むようにして二本とクロスする形で外向きに二本置いた。マーを中心にハルとミサキ、ヒデオとアキコが向かい合うように並んだ。ドアのある壁をフリーにして、マーの後ろにヒカル、ヒカルの右手にマサミ、その反対側にマサルが立った。音を出した。さっきよりは聞こえるようになった。壁の音の吸収は良くなかった。反響が音をグチャグチャする感じがした。聞こえてくる音が変化した。マサルがジミーさんに近づいた。
「ちょっといじってもいいですか。」
「ああいいよ。」
オーディオで使うような卓だった。ミキサーについているサブのマイクで皆に指示を出した。
 ジンジンジンオーイェー
リフレインが始まった。マサルは片手でギターを弾きながら、イコライザーを調節した。それぞれの音に輪郭がでた。ルームでやる時の音に、何とか近づいた。
「じょうずだねえ。」
「マー、どう、モニターは。」
「うー、やっぱり、回るけど、いいんじゃない。」
「ハル、ミサキ、聞こえる。」
「だいじょうぶだと思うよね。」
「うん。」
「ここが一番いいかも、」
ヒカルが言った。
「私はだいじょうぶ、こんなのなれてるから。」
マサミは聞かれる前に返事をした。マサルも自分のポジションについてみた。マーの言った意味が良くわかった。後は自分の調節で何とかなるか、という感じだった。それでも気になって、ベースアンプ、ギターアンプを調節した。ヒデオとアキコは身体を揺らし始めた。マサルのギターがエンディングに向かうフレーズに変わった。今回は一人づつ抜けるのではなく、マーのフィルインでブレイクできるように練習した。ピタッと止まった。ジミーさんが拍手をした。
「おもしろい。おもしろい。」
「ジミーさんセッティングは元に戻したほうがいいの。」
「大丈夫、大丈夫、他のはそんなの気にしないから・・・。」
「そうだ。何回やる。」
「何かいって・・・。」
「朝までだから、演奏なくてもいいんだけど。やれたらやってよ。」
「客入れ何時からですか。」
「ウー、決まってないんだな。」