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実験が無事終了したことが成果
「地球に無事戻ったとき、人間は本当に火星に行けると確信した」と、フランス人のシャルル・ロマンさん(32)は成果を強調した。
密室で6人が生活する。しかも、四六時中モニターで監視されながら…。ちょっと考えただけでも、いやになりそうな生活を520日間も続けた「Mars500」が終了した。帰還後の6人の笑顔を見て、ほっとした。人類に火星旅行は無理かもしれないと思っていたからだ。これなら何とか行けるかもしれない。
ロシア人は我慢強いのかもしれない。ロシアの宇宙ステーション「ミール」の時代から、長期滞在実験を始めていた。今回の火星旅行を想定した実験も、ロシア科学アカデミー生物医学問題研究所で行われた。昨年6月から始まった実験は、11月4日についに終了。6人の晴れやかな笑顔が、火星旅行の実現を一歩近づいたのは間違いない。
6人は火星飛行実現への期待を語り、実験を主導したロシア科学アカデミー生物医学問題研究所のボリス・マルコフ所長は今後、国際宇宙ステーションでも同様の実験を検討していることを明かした。
6人はロシア、フランス、イタリア、中国から参加した技術者や医師ら。ロシア人のスフロブ・カマロフさん(39)は「実験が終わった後、すぐに家族の元に帰った。実験中は電子メールしか許されず、つらかった」と苦労話を披露した。6人には心から拍手を贈りたい。
擬似火星から帰還
2011年11月4日、約1年半の“有人火星探査ミッション”が終了し、帰還した宇宙飛行士たちはモスクワで盛大に迎えられた。写真は昨年夏に撮影した、ロシア製宇宙服のテスト風景。
6人のクルーは、実際に火星と地球を往復したわけではない。ロシア科学アカデミー(RAS)と欧州宇宙機関(ESA)主導の下、有人宇宙探査が精神へ与える影響を分析する模擬火星旅行実験「Mars500」の一環として、520日間をモスクワの“模擬宇宙船”の中で過ごしたのである。
このミッションでは火星探査の状況を忠実にシミュレートするため、クルーを外界から物理的に隔離。20分間の通信遅延も再現された。
心身に関する実験、機器の修理など、彼らにはさまざまな任務が課され、マネキンに対する心肺蘇生法など緊急事態への対応訓練も行われた。余暇は読書やビデオゲームで過ごしたという。
ミッション半ばでは、砂が敷き詰められた“火星”に降り立ち、土壌サンプルの採取やセンサーの設置を行っている。(National Geographic News November 7, 2011)
Mars500、実験開始から1年
2011年6月、6人がモスクワ近郊の施設で過ごし始めて365日が経過した。この施設は、ESAが最終目標とする有人火星飛行の環境をほぼ全面的に再現した“擬似宇宙船”だ。
模擬宇宙船は、密閉した4つの円筒形構造をつなぎ合わせた作りになっている。それぞれ個室を与えられたクルーは、国際宇宙ステーション(ISS)に滞在する宇宙飛行士と可能な限り同じように生活し、作業を行っている。
「この実験で辛かったのは、365日同じ時間に起床しては、同じ機器を使って同じ健康管理を受けなければならなかったところだ。1年間、週末も休日もなかった!」とクルーの一員、ロマン・シャルル(Romain Charles)氏は日誌に記している。
Mars500は、IMBPと欧州宇宙機関(ESA)の共同プロジェクトで、火星探査ミッションのシミュレーションが目的だ。個室が用意され、キッチンの椅子とテーブルで食事ができるが、実際はこのような余裕は無いだろう。
NASAの同様のプロジェクトでは約100日間の滞在に留まっており、520日間の隔離実験は過去最長だ。
アメリカ、アリゾナ砂漠で惑星探査をシミュレーションした「Desert RATS」プロジェクトの主任エンジニア、ジョー・コスモ氏は、「この長期実験は少し強引だったかもしれない」と言う。アメリカ版では機器のテストが目的で、クルーの心理状態まで調査しなかった。「深宇宙へ往還する目処を付けてからでも遅くない。隔離実験でリジリエンス(ストレスからの回復力)を見るのはその後で良い」。(National Geographic News June 13, 2011)
参考HP Natonal Geographic 擬似火星から帰還、Mars500完了
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