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立山の氷河、国内初の認定か?
富山県の北アルプス・立山連峰で氷河が現存することが国内で初めて確認される可能性が出てきた。立山カルデラ砂防博物館(富山県立山町)の研究チームが、雪渓内の氷塊が流動しているのを観測し、11月15日、東京都立川市で開かれた極域気水圏シンポジウム(国立極地研究所主催)で発表した。
氷河は、一年中解けず、重みで長期間、流動する氷の塊。日本雪氷学会から認定されれば、極東アジアでは、ロシアのカムチャツカ半島とされる氷河の南限が一気に下ることになる。
研究チームが調査した氷塊は、立山の主峰・雄山(おやま)(3003メートル)の東側斜面にある御前沢(ごぜんざわ)雪渓と、剱岳(2999メートル)北方稜線(りょうせん)の東側にある三ノ窓雪渓と小窓雪渓の計3か所。御前沢の氷塊は長さ700~800メートル、幅が最大250メートル、厚さ最大30メートル。三ノ窓は長さ約1キロ、幅100メートル以上、厚さ30メートル以上で、小窓は長さ約1キロ、幅150メートル以上、厚さ20~30メートルだった。(2011年11月15日 読売新聞)
昨年に引き続き、移動を確認
同博物館は昨年8月下旬~10月、御前沢雪渓で目印となるポールを氷塊に埋め込み、全地球測位システム(GPS)で動きを測定した。1か月あたり6~30センチ動いているとの結果が得られたが、学会から「観測期間が短く、誤差の範囲内では」との異論が出て認定は見送られた。
今年は9~10月に三つの雪渓で測定。動かない岩盤上にGPSのポイントを設定して誤差も計測した。その結果、三ノ窓雪渓の2地点では約1か月でそれぞれ24センチ、31センチ、小窓雪渓の2地点では17センチ、32センチと、測定誤差(約4センチ)を大幅に上回る流動が観測された。
御前沢では6地点のうち3地点で52日間に7~9センチと、2年連続で流動が確認された。同所の誤差は約1センチだった。カメラによる連続撮影でも、三ノ窓でクレバスが広がっていく様子や、御前沢でポールが下流側に移動していく様子が確認できた。
同博物館の福井幸太郎学芸員(38)によると、観測した時期は氷塊を覆う雪が解けて荷重が少なくなるため、流動速度が1年のうちで最も遅い。福井学芸員は「最も遅い時期にこれだけ動いていれば、年間を通して動いているのは間違いない」としている。三ノ窓、小窓の年間の流動速度は少なくとも4メートル程度と推定されるという。
日本雪氷学会の元会長、藤井理行(よしゆき)さんは「今年は誤差をはるかに超えた観測値で、実際に動いていることがはっきりした。学会に氷河と認められる可能性は非常に高い」と評価している。研究チームは今年度中にも論文を同学会に提出する。(2011年11月16日 読売新聞)
氷河とは何か?
氷河(glacier)は、山地では重力、平坦な大陸では氷の厚さと高さによる圧力によって流動する、巨大な氷の塊である。氷河は、山がちな、または傾斜した地形に、複数年にわたって氷や雪が堆積し、万年雪が圧縮されることでできる。下部には過去の氷期にできたものが融けずに残っている。氷河は侵食、堆積を活発に行い、独特な氷河地形を生む。
地球の気温と氷河は密接な関係があり、海進、海退の原因となる。現在陸上に見られる氷河は、南極氷床、グリーンランド氷床を最大級として、総計1,633万km²に及び、陸地面積の約11%を覆う。近年は地球温暖化の影響でその縮小が激しく、問題となっている。
氷河でできる地形としては、立山連峰で、1905年(明治38年)に日本で最初に発見され学術的に記載された圏谷「山崎カール」がある。以後、多くの圏谷を含む氷河地形が国内で発見・調査され、日本に氷河時代が存在したことが証明された。
これまで、氷河が過去にあったことを証明する地形は発見されたが、氷河自体は日本には発見されておらず、極東アジアの南限はカムチャツカ半島とされていた。
ところが、立山の「御前沢カール」に、氷河の可能性のある「氷体」が発表された。2009年9月に北海道大で開かれた日本雪氷学会で、立山カルデラ砂防博物館の福井幸太郎学芸員(36)が発表。話題を呼んでいた。
「御前沢カール」と呼ばれる雪渓に広がる「氷体」は、長さ700メートル、最大幅200メートル、厚さ30メートルで国内最大級。同博物館は実際に動いていることを確かめるため、10月から全地球測位システム(GPS)を使った測定を開始した。2010年10月には氷河であるかどうか結果が分かるという期待が高まっていた。
氷河期とは何か?
氷河期(ice age)は、地球の気候が長期にわたって寒冷化する期間で、極地の氷床や山地の氷河群が拡大する時代である。グリーンランドと南極に氷床が存在する現代、我々は未だ氷河期の中にいることになる。最後の氷河期は1万年前に終了したということになる。科学者の多くは氷河期が終わったのではなく、氷河期の寒い時期「氷期」が終わったとし、現在を氷期と氷期の間の「間氷期」と考えている。
過去数百万年は、4万年から10万年の周期で多くの氷期が起こり、これについては研究がさかんに行われている。各氷期と間氷期ではそれぞれ平均気温が異なり、最近の氷期では年平均気温で7-8℃以上低下したというデータもあるが、「気温何度から氷期」というわけではない。その間にも小氷期、小間氷期が認められる。ヨーロッパでは「ギュンツ」、「ミンデル」、「リス」、「ウルム」の4氷期に区分されている。
現在は間氷期?
最近の氷期が終わったのは、1万年ほど前である。現在は典型的な間氷期が1万2000年ほど続いていると考えられているが、氷床コアデータによる精密な時期の断定は難しく、世界的な寒冷化をもたらす新しい氷期が間もなく始まる可能性もある。今のところ「温室効果ガス」を増加させている人為的な要因の方が、ミランコビッチの軌道周期のどの影響よりも重いだろうと信じられているが、地球軌道要素に対するより最新の研究は、人間活動の影響が無いとしても、現在の間氷期は少なくとも5万年は続くだろうとも示唆している。
氷期と間氷期の変動に関連して、アメリカ国防総省が専門家に依頼して作成した地球温暖化の影響による大規模な気候変動を想定した安全保障についての報告書(Schwartz, P. and Randall, D. 2003)の存在が2004年に明るみに出て注目を集めた。 それによると、地球温暖化による海流の変化が原因で、北半球では2010年から平均気温が下がり始め、2017年には平均気温が7~8℃下がるという。逆に南半球では、急激に温度が上がり、降水量は減り、旱魃などの自然災害が起こるという。
氷河期はなぜ起きるか?
なぜ「氷河期」が起こるのか。これは大きなスケールで起こる氷河期についても、氷河期の中で起こるより小さな氷期/間氷期の繰り返しについても、いまだ議論されている問題である。一般的な総意としては、大気組成(特に二酸化炭素とメタンのフラクション)と、「ミランコビッチ・サイクル(英語版)」として知られる、太陽を回る地球の軌道要素(おそらく銀河系を回る太陽系の軌道も関係する)、太陽活動の減少、の3つの要素が組み合わされたものがその原因とされている。
3つの要因のうち、最初の「大気組成の変化」は特に最初の氷河期について重要な原因とされている。スノーボールアース仮説では原生代後期の大規模な氷河時代の始まりと終りは、大気中の二酸化炭素濃度の急激な減少と、急激な上昇が原因であると主張している。残りの二つの要素については、現在最も議論が盛んに行われている。
参考HP Wikipedia「氷河」「氷河期」・ とやま雪の文化 氷河を立山で発見か?
ヤマケイ アルペンガイド8 剣・立山連峰 (ヤマケイアルペンガイド) | |
クリエーター情報なし | |
山と溪谷社 |
氷河地形学 | |
クリエーター情報なし | |
東京大学出版会 |