GPFを見終えて。
スポーツは結果が全てと申しますが、結果というのはイコール「過去」です。
未来に繋がっているのは、今は表に出てきていない裏の流れ。
故に、表層に現れた結果だけを見ていても未来を予想することはできません。
神ならぬ身に知る由もなし。
最初FSが終わった時には、私も何が起きたのか分からずパニくってましたが(…の割に仮面ライダーがどうとかアホなこと言うてましたが)、今は大分頭の整理が付いたかなという感じです(少しずつ情報も出て来ましたしね)。
そもそもこのGPFは、大ちゃんに取っては「出られるかどうかわからなかった試合」で、始めから「経験を積む場」だと位置づけられていました。勝負はさほど優先せず、「勝てたらラッキー(意訳)」みたいなコメント出してましたよね。
「フィギュアスケートで、同じ怪我から第一線に復帰した例がほとんどない(多分、探してみた限りで似た症例が見つからなかったのではないかと)」という怪我からの復帰で、どこまで戻せるのか当初は全く分からない状況。
「いつまでも『怪我明けだから』を言い訳にする訳にはいかない」という意見もありますが、精神論でどうにかなるほど甘い怪我やブランクではなかったと思います。
それでも、GPFに勝ち残るだけの成績を残せるまでになった。前のエントリーにも書きましたが、彼にとってはこの試合の場所にいることだけでも既に奇跡です。
その上、NHK杯・スケートカナダと2週間おきに続く3連戦は、普通の選手でもハードなスケジュールですよね。
そんな中で叩き出したSPの高得点。
報道によると、スケートカナダの後で宮本さんと振り付けを手直しして来たのだそうです。確かにスケートカナダでは、FSの高い評価に比べると(本人比で動きが硬かった&試合の流れにもよるとは言え)、SPの評価はちょっと物足りない数字に思えました。
そこで泣いたりせずにプログラムを見直し、対策を立てて来た。SP1位という結果は決して偶然ではなくて、経験を元に積み重ねてきたことの成果だったんですよね。
フィンランディア杯で復帰して以来、一試合ごとに一歩ずつ着実に進歩している大ちゃんですが、この試合でも間違いなく、一段高い階段を上がったのだと思います。
ただ、そこで思わぬ好結果が出てしまったことで、見ている私たちも欲が出ちゃいましたね(笑)。
でもきっと本人も同じだったんじゃないかなと思います。勝てるかも、と思った所で当初の目標から気持ちがブレてしまった所はあったのかも知れませんね(それもまた貴重な「経験」かとは思いますが)。
それに、スケートカナダからの短い期間でSPを手直ししたことで、FSの方は余り練習する時間がなかったとも考えられます。
よくメンタルのことが言われますが、本当の自信というものは「練習」という事実の裏づけによって得られるもの。十分な練習ができず、自信を持って臨むのが難しい状況だったのかなと推測します。
それでも、今回の演技にもちゃんと「進化」はありました。スポーツナビによると、「怪我をしてから一番気持ちよく演じることが出来た」というコメント。
そう言えばこの『道』は、2008年に曲名が発表された当初は、大ちゃんに取っては表現的な意味での「挑戦」になると言われてました。
基本的に大ちゃんの表現は、音楽が持つイメージをダイレクトに受信し、「音楽そのもの」を表現するもの(←これができるのが彼の非凡さだと思うんですけどね)。
その彼に初めて明確に、音楽ではなくストーリーやキャラクターを「演じる」ことを要求したのがこの『道』というプログラムだとカメレンゴさんは言っていたし、大ちゃん自身も「殻を破らなければいけない」「演じることに恥ずかしさがある」と発言していました。
いやー、すっかり忘れてましたよ。だってフィンランディア杯で見た最初から全然余裕で「演じてる」ように見えたんだもん(笑)。
でも独自のこだわりを持つ大ちゃんには、自分の「演技」に中々納得できないものがあったのかも知れないですね。
スケートカナダで初めて「アピールできたかな」と感じて、それが高い評価に繋がった。そして今回やっと、彼自身に納得の行く手応えを掴んだのかも知れません。
今回、技術的にはボロボロになっても演技構成点の方はスケートカナダに負けないような高得点でした。単に地元だからというだけではなくて、このプログラムを「演じる」ことを自分の中でものにした大ちゃんの表現がきちんと伝わったということなのかも知れません。
結果や順位がどうあれ、間違いなく前進はしているんじゃないでしょうか。
SPには大きな手応えがあっただろうし、FSの表現的な部分にも一つの答えが出せた。この上でやるべきことは…私なんかが口を出さずとも、ご本人たちには分かっていると思います。
(今回、試合の直前に靴を替えたという報道もありましたので、一緒に見た方の仰っていた「右足のエッジがひっかかっている感じがする」という部分は、靴がなじむことで解決することを期待しています)
ものごとが上手く運ばない時というのは、考えようによってはチャンスだとも言えます。
うまく行っている時に何かを変えるというのは難しいし、何か問題があっても中々見えて来ないもの。不調な時は問題が分かりやすく表に表れているということで、それは問題を解決する良い機会でもある訳なので。そして大ちゃんは過去もそうして、どんな経験も無駄にせずに自分の力に変えて来ました。
多くの課題を一度に全部は解決できないかも知れませんが、信じて見守って行くしかないかなと思っています。
4回転に関しては…私はNHK杯の6分間練習で、カンペキな4回転を飛ぶ大ちゃんを目の前で見ちゃってますからね(笑)。…というのはともかく。
試合前「この試合は経験を積む場」→試合後「GPFは守る試合ではない」
終始一貫しています。実に明確。「勝つ」ことが最優先ではないと、最初からそう言っていた。
「五輪に向けて経験を積むのが目的なのだから、五輪で飛ぶつもりの4回転を飛ぶのは当たり前」という感覚なのではないでしょうか☆
ここまで中々4回転が決まらないことで、見ている方にも焦りが出てきているのかも知れませんが、今年の4月まで氷に乗ることもできなかったし、6月まではジャンプも飛べなかった。
2回転のジャンプでさえ「感覚が全然わからない」と途方に暮れていた所から6種類の3回転ジャンプを取り戻して来たのですから、私はもう少し長い目で見守りたいなと思います。
ともあれ、「経験を積む」という当初の目的は、十分過ぎるくらい果たせた試合なんじゃないかなという気がします(笑)。
そして観に行った私自身も、今回は色々と今までになく濃い経験をさせて貰いました。
行って良かったと思います。ありがとう。
正直「あんまり無茶するなよー」と思うこともないではないですが、こういう人を応援するからには、振り回される事も覚悟の上。
…いや、振り回されることも幸せです。去年のことを思い起こせば。
***
拍手コメントへのお返事
■2009/12/7 14:01
情報ありがとうございます。実は既に別の方に教えて頂いていました。
大ちゃんの周辺には、プロ意識の高い、本質を語れる人が多いですね。
GPFでは相変わらずのジェットコースターっぷりを見せてくれた大ちゃんですが(笑)、全日本も安全ベルトを装着の上、腹を括って応援して参りたいと思います。
スポーツは結果が全てと申しますが、結果というのはイコール「過去」です。
未来に繋がっているのは、今は表に出てきていない裏の流れ。
故に、表層に現れた結果だけを見ていても未来を予想することはできません。
神ならぬ身に知る由もなし。
最初FSが終わった時には、私も何が起きたのか分からずパニくってましたが(…の割に仮面ライダーがどうとかアホなこと言うてましたが)、今は大分頭の整理が付いたかなという感じです(少しずつ情報も出て来ましたしね)。
そもそもこのGPFは、大ちゃんに取っては「出られるかどうかわからなかった試合」で、始めから「経験を積む場」だと位置づけられていました。勝負はさほど優先せず、「勝てたらラッキー(意訳)」みたいなコメント出してましたよね。
「フィギュアスケートで、同じ怪我から第一線に復帰した例がほとんどない(多分、探してみた限りで似た症例が見つからなかったのではないかと)」という怪我からの復帰で、どこまで戻せるのか当初は全く分からない状況。
「いつまでも『怪我明けだから』を言い訳にする訳にはいかない」という意見もありますが、精神論でどうにかなるほど甘い怪我やブランクではなかったと思います。
それでも、GPFに勝ち残るだけの成績を残せるまでになった。前のエントリーにも書きましたが、彼にとってはこの試合の場所にいることだけでも既に奇跡です。
その上、NHK杯・スケートカナダと2週間おきに続く3連戦は、普通の選手でもハードなスケジュールですよね。
そんな中で叩き出したSPの高得点。
報道によると、スケートカナダの後で宮本さんと振り付けを手直しして来たのだそうです。確かにスケートカナダでは、FSの高い評価に比べると(本人比で動きが硬かった&試合の流れにもよるとは言え)、SPの評価はちょっと物足りない数字に思えました。
そこで泣いたりせずにプログラムを見直し、対策を立てて来た。SP1位という結果は決して偶然ではなくて、経験を元に積み重ねてきたことの成果だったんですよね。
フィンランディア杯で復帰して以来、一試合ごとに一歩ずつ着実に進歩している大ちゃんですが、この試合でも間違いなく、一段高い階段を上がったのだと思います。
ただ、そこで思わぬ好結果が出てしまったことで、見ている私たちも欲が出ちゃいましたね(笑)。
でもきっと本人も同じだったんじゃないかなと思います。勝てるかも、と思った所で当初の目標から気持ちがブレてしまった所はあったのかも知れませんね(それもまた貴重な「経験」かとは思いますが)。
それに、スケートカナダからの短い期間でSPを手直ししたことで、FSの方は余り練習する時間がなかったとも考えられます。
よくメンタルのことが言われますが、本当の自信というものは「練習」という事実の裏づけによって得られるもの。十分な練習ができず、自信を持って臨むのが難しい状況だったのかなと推測します。
それでも、今回の演技にもちゃんと「進化」はありました。スポーツナビによると、「怪我をしてから一番気持ちよく演じることが出来た」というコメント。
そう言えばこの『道』は、2008年に曲名が発表された当初は、大ちゃんに取っては表現的な意味での「挑戦」になると言われてました。
基本的に大ちゃんの表現は、音楽が持つイメージをダイレクトに受信し、「音楽そのもの」を表現するもの(←これができるのが彼の非凡さだと思うんですけどね)。
その彼に初めて明確に、音楽ではなくストーリーやキャラクターを「演じる」ことを要求したのがこの『道』というプログラムだとカメレンゴさんは言っていたし、大ちゃん自身も「殻を破らなければいけない」「演じることに恥ずかしさがある」と発言していました。
いやー、すっかり忘れてましたよ。だってフィンランディア杯で見た最初から全然余裕で「演じてる」ように見えたんだもん(笑)。
でも独自のこだわりを持つ大ちゃんには、自分の「演技」に中々納得できないものがあったのかも知れないですね。
スケートカナダで初めて「アピールできたかな」と感じて、それが高い評価に繋がった。そして今回やっと、彼自身に納得の行く手応えを掴んだのかも知れません。
今回、技術的にはボロボロになっても演技構成点の方はスケートカナダに負けないような高得点でした。単に地元だからというだけではなくて、このプログラムを「演じる」ことを自分の中でものにした大ちゃんの表現がきちんと伝わったということなのかも知れません。
結果や順位がどうあれ、間違いなく前進はしているんじゃないでしょうか。
SPには大きな手応えがあっただろうし、FSの表現的な部分にも一つの答えが出せた。この上でやるべきことは…私なんかが口を出さずとも、ご本人たちには分かっていると思います。
(今回、試合の直前に靴を替えたという報道もありましたので、一緒に見た方の仰っていた「右足のエッジがひっかかっている感じがする」という部分は、靴がなじむことで解決することを期待しています)
ものごとが上手く運ばない時というのは、考えようによってはチャンスだとも言えます。
うまく行っている時に何かを変えるというのは難しいし、何か問題があっても中々見えて来ないもの。不調な時は問題が分かりやすく表に表れているということで、それは問題を解決する良い機会でもある訳なので。そして大ちゃんは過去もそうして、どんな経験も無駄にせずに自分の力に変えて来ました。
多くの課題を一度に全部は解決できないかも知れませんが、信じて見守って行くしかないかなと思っています。
4回転に関しては…私はNHK杯の6分間練習で、カンペキな4回転を飛ぶ大ちゃんを目の前で見ちゃってますからね(笑)。…というのはともかく。
試合前「この試合は経験を積む場」→試合後「GPFは守る試合ではない」
終始一貫しています。実に明確。「勝つ」ことが最優先ではないと、最初からそう言っていた。
「五輪に向けて経験を積むのが目的なのだから、五輪で飛ぶつもりの4回転を飛ぶのは当たり前」という感覚なのではないでしょうか☆
ここまで中々4回転が決まらないことで、見ている方にも焦りが出てきているのかも知れませんが、今年の4月まで氷に乗ることもできなかったし、6月まではジャンプも飛べなかった。
2回転のジャンプでさえ「感覚が全然わからない」と途方に暮れていた所から6種類の3回転ジャンプを取り戻して来たのですから、私はもう少し長い目で見守りたいなと思います。
ともあれ、「経験を積む」という当初の目的は、十分過ぎるくらい果たせた試合なんじゃないかなという気がします(笑)。
そして観に行った私自身も、今回は色々と今までになく濃い経験をさせて貰いました。
行って良かったと思います。ありがとう。
正直「あんまり無茶するなよー」と思うこともないではないですが、こういう人を応援するからには、振り回される事も覚悟の上。
…いや、振り回されることも幸せです。去年のことを思い起こせば。
***
拍手コメントへのお返事
■2009/12/7 14:01
情報ありがとうございます。実は既に別の方に教えて頂いていました。
大ちゃんの周辺には、プロ意識の高い、本質を語れる人が多いですね。
GPFでは相変わらずのジェットコースターっぷりを見せてくれた大ちゃんですが(笑)、全日本も安全ベルトを装着の上、腹を括って応援して参りたいと思います。