ウロコのつぶやき

昭和生まれの深海魚が海の底からお送りします。

ゲゲゲの女房

2010-09-29 01:18:00 | ドラマ
♪ありがとう~って伝えたくて~

…という訳で。『ゲゲゲの女房』終わっちゃいましたね。水木先生目当てで見始めたけど、脚本の良さが拾いモノでした。
面白い実話を元にした手記のドラマ化なら当然面白いだろうとは思ってましたが、原作のおもしろさにあぐらを書かずに、丁寧にポイントを押さえたいい脚本だったなと思います。

(1)実在のモデルのいる人物と、ドラマオリジナルの人物が入り乱れていますが、どの人物もきちんとドラマ上の役割を明確にして描かれていたこと。
(2)ヒロインの価値観だけが正義だと決めつけず、多面的で公正な視点が感じられたこと。
(3)丁寧に複線を張ってきれいに話をまとめたこと。
最近、こういうちゃんとした脚本のあるドラマってあんまり見ないような気がします。

例えば『ゼタ』の女性編集者として登場した加納さん。モデルとなった女性は、実際には編集長の深沢さんのモデルである長井勝一さんの奥さんだったそうですが、ドラマでは深沢さんと袂を分かっています。
『自分は表に出ず、夫の仕事を陰から支える妻』であるヒロイン・布美枝に対して、『自分の名前を表に出し、男性と肩を並べて働く女性』という対局の立場にある女性を登場させる意図があって、実在のモデルと全く違う人生を辿る事になったのではないでしょうか。
後のエピソードでは、加納さん自身が「布美枝のような生き方もありだったかも。でも両方を取る訳には行かない。自分は自分の意志でこの生き方を選んだ」という意味の台詞を口にしています。
自分を立てるか夫を立てるか。女性の二つの生き方を、どちらも否定しないのがこのドラマのポイントだと思います。
また、「大きくてやりがいのある仕事がしたい」という加納さんと「大手にはできない自由な仕事がしたい」という深沢さんの考えも、「どちらもあり」という書き方がされていたと思います。

それとこういうストーリーで扱いが難しいのが「才能」の問題。NHK的には「努力と根性が報われる」話が必要なんだろうけど、漫画を描くにはセンスも必要。努力だけではどうにもならないこともある。
漫画家を志しながらも自分独自の作風を確立できず挫折したはること、職業としてクリエイティブの道を目指すことはないが、人にはないセンスの持ち主として描かれる太一の対比は上手いと思いました。
(太一にはセンスがあるから、無名時代の水木マンガの面白さが分かったというのも説得力があるし、最終週に「沢山いる水木ファン」を象徴する存在として出てくるという役割も果たせましたよね)

最初に二人が安来で「べとべとさん」に会って(実際には青年が茂かどうかは作中でははっきりしないが、視聴者にはたぶんそうだろうと思わせる演出ができている)、最後も同じシュチュエーションで終わるのも随分長い伏線だと思いましたが(このためのオリジナルエピソードだったのかとちょっとびっくり)、これに限らず丁寧に伏線を引っ張っていたのも印象的でした。

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でも多分、女性の視聴者の心を捉えたのは、絶妙なタイミングで茂さんが奥さんに『好きだよ』『感謝してるよ』『おまえ(たち)の事をちゃんと考えとるよ』みたいなサインを送る所だと思います(笑)。
昭和の男である水木先生は、絶対にはっきりと口に出しては言いませんが、間接的に、「ああ、今のはそういう意志表示だな」と割とはっきり分かるサインが出てくる(さりげなく肩を叩くとか、何気ない風を装った頼みごととか)。布美枝さんのハートも視聴者のハートもがっちりキャッチ(笑)。ああいうの、上手いなあと思いながら見てました。

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あと最近は、特撮出身の役者さんが結構NHKに出てくるんだなーと改めて思いました。
ケータイ捜査官のケイタは地味に順調に出世してるし。ゲキレッドとゴーオンシルバーも割と目立つ役でしたが。
個人的には、アヤセ@タイムブルーの城戸くんと、真司@龍騎の須賀ちゃんが久しぶりに見れたのが嬉しかったです。二人とも相変わらず男前でした。芸能界には男前がたくさんいるから大変かもしれないけど、頑張って欲しいです。

あとやっぱり、このドラマのお陰で今年はあっちこっちで水木ブームが起きてて、水木ファンとしてはなかなか楽しい夏でした。ありがとう。

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