春休みに帰省したとき夜中に咽喉が渇いて起きたら、リビングから父さんと母さんが言い争っている声が聞こえて来た。
「俺が養子にならない事をお前も承知したじゃ無いか!」
「だって、家がどうとか墓がどうとかなんて、若いときには考えるわけないじゃない!私はただアナタと一緒になりたかった、ただそれだけよ。だから私たちの結婚を認めてくれる条件として『子供をひとり養子縁組にして跡を取らせること』って言われたときも深く考えずにOKしちゃったのよ。」
「だけど私も年を取って老後の事とか考えるようになってきたら、実家の母のことも心配になるし、両親が気に病んでいた先祖供養のことも考えるようになったのよ。それに、昨日も母から電話があって『このままじゃあ、ご先祖様に申し訳ない』って、電話口で泣かれたのよ!」
「だからって、じゃあどうしたいんだ?!俺たちの子供は幸太しか居ないんだぞ。幸太は大木の人間だからな!離婚したって幸太は渡さないぞ!・・・それにどうして?!こんなことになるんなら、あのとき二人目を産んでくれなかったんだ!」
「それは言わない約束よ!・・・私は本当は音楽教師になりたかったのよ。だけど幸太が出来て結婚して・・・・。あなたはバリバリ外で働いて。・・・私は家の中で・・・社会から取り残されていくようで堪らなかったのよ!」
「だからお前が『幸太が入園したのを機にピアノ教室を開きたい』って言ったとき、部屋を防音に改築して協力してやったじゃないか」
「そうよ!順調に生徒も増えて、軌道に乗ってきたところで、それを止められるわけ無いじゃない!」
「・・・・・それにしたって、今になって実家の事が心配だから別れてくれなんて、そんな馬鹿な話があるか!・・・・頼むから考え直してくれ。俺も良い方法が無いか考えるから」
ボクはそっと二階へ上がった。
つづく
「俺が養子にならない事をお前も承知したじゃ無いか!」
「だって、家がどうとか墓がどうとかなんて、若いときには考えるわけないじゃない!私はただアナタと一緒になりたかった、ただそれだけよ。だから私たちの結婚を認めてくれる条件として『子供をひとり養子縁組にして跡を取らせること』って言われたときも深く考えずにOKしちゃったのよ。」
「だけど私も年を取って老後の事とか考えるようになってきたら、実家の母のことも心配になるし、両親が気に病んでいた先祖供養のことも考えるようになったのよ。それに、昨日も母から電話があって『このままじゃあ、ご先祖様に申し訳ない』って、電話口で泣かれたのよ!」
「だからって、じゃあどうしたいんだ?!俺たちの子供は幸太しか居ないんだぞ。幸太は大木の人間だからな!離婚したって幸太は渡さないぞ!・・・それにどうして?!こんなことになるんなら、あのとき二人目を産んでくれなかったんだ!」
「それは言わない約束よ!・・・私は本当は音楽教師になりたかったのよ。だけど幸太が出来て結婚して・・・・。あなたはバリバリ外で働いて。・・・私は家の中で・・・社会から取り残されていくようで堪らなかったのよ!」
「だからお前が『幸太が入園したのを機にピアノ教室を開きたい』って言ったとき、部屋を防音に改築して協力してやったじゃないか」
「そうよ!順調に生徒も増えて、軌道に乗ってきたところで、それを止められるわけ無いじゃない!」
「・・・・・それにしたって、今になって実家の事が心配だから別れてくれなんて、そんな馬鹿な話があるか!・・・・頼むから考え直してくれ。俺も良い方法が無いか考えるから」
ボクはそっと二階へ上がった。
つづく