8月2日ぜんせきより
SS過疎地の供給繋いで “地域への思い”支えに頑張る
経営難に陥り廃業していくSSが増加している。
SS過疎地は拡大の一途をたどっており、中国地方にも多くのSS過疎地が存在する。
その中で、石油製品の安定供給のため、地域住民や自治体などが協力してSSを維持する取り組みを行っている地域がある。
*****
岡山県津山市 合同会社あば村
住民の出資でSSを存続
急速に過疎・高齢化が進む中、住民自治協議会を作り、行政の支援を受けながら地域の活性化を図る取り組みを行ってきた。
しかし、小学校の閉校、幼稚園の休園、行政支所の規模縮小といった多くの問題とともに、13年には村で唯一のSSが撤退することになり、このままでは近くても往復20キロの距離を走らなければガソリンを買えなくなり、冬場には暖房器具で使う灯油も買うことが一苦労となる事態が想定される状況となった。
このため全住民に対してSS存続のため「出資の意思はあるか」「価格が上がっても利用する意思はあるか」ということなどについて聞き取り調査したところ、高齢者を中心に全住民の約7割がSSの存続を望んでいることが判明した。
そこで住民自治協議会の出した答えは、自分たちでSSを続けていくため、住民出資による合同会社設立だった。
14年2月、「合同会社あば村」を設立。
社員は阿波地区の住民134人で、自分たちの手で存続させていく意思を忘れないためにも、出資者全員が社員である「合同会社」という会社形態を選び、14年6月には土地、建物をJAから借りる形でSS運営を開始、SSを復活させた。
この地区は、冬場は1メートルを超える積雪もあるというが、軽トラックの上にタンクを積んで灯油の配送も行っているという。
また、津山市阿波出張所の公用車への給油や温泉施設の灯油はこのSSを利用してもらってはいるが、地域内の若い人は市内での会社勤めが圧倒的に多い。
朝の通勤時間帯には同SSは開いておらず、帰宅時間には営業を終えているといったこともあり、市内の安いセルフSSで給油することが多くなっているのが実情。
こうしたこともあり、SSだけでは収益の確保が難しく、隣接する元のJA事務所で食料品などの日用品販売などいろいろな事業を組み合わせて収益性を確保できるよう取り組んできた。
地域としても中心部の機能を高め、拠点を作っていくことを目指しており、その1つがこのSS事業だ。
他にも自然農法の米や野菜作り、地元間伐材を燃料にした温泉薪ボイラーの本格稼働など多くの取り組みの中で地域住民にとどまらず、地域外からも協力者や移住してくる若者も増え始めているという。
この地域での取り組みのシンボルが「あば村」であり、ここでの地域再生、活性化の取り組みに廃止となったSSの復活も大きな力となっている。
※
あば村宣言 GS復活プロジェクト
http://abamura.com/gs
広島県安芸高田市 ふれあい市
減販続いても10年は
経産省の石油製品供給不安地域実証整備事業の一環として複合型SSとして2012年2月28日に全面オープンした広島県安芸高田市美土里町のふれあい市(下杉社長)。
この地域でもJAのSSが撤退し、跡をJASSのOBが引き継いでいたが、このOBも設備の老朽化などによって撤退した。
これにより同地域でもSSが1ヵ所もなくなったことから、経産省は同地域内のSS維持のために複合型給油所実証整備事業として同地域を選定し、これに基づき同地域の住民自治組織である生桑振興会が中心となって「ふれあい市」を設立し、SS運営とともに食料、日用品の販売店舗を建設。
2年後に「ヤマザキYショップ・ふれあい市」として再出発し、現在に至っている。
下杉社長は「売り上げは2年前に比べても減ってきている。若い人は町で買い物をしてくるケースも多いため、新しい客数として増える要素がない」と話す。
また「起爆剤になるような観光資源もイベントもなく、自分たちの力だけでの取り組では限界がある。しかし今年の12月で6年になるが、当初の目標である10年は続けたい」と強調した。
さらに「冬場の灯油や農繁期は需要があり、ここがなくなってしまうと地域の人たちが困ってしまう。いまは地域の方のためという思いだけで続けている。縮小は別として、継続はしていかなければならないと思っている。また、続けて行っていれば、なにか状況が変わるかもしれないと思いながら頑張っている」と話す。
※
2013年03月09日 過疎地住民、GS経営
岡山県高梁市 丸山商店
経営厳しいができる限り
以前は5カ所SSがあったが現在は丸山商店1ヵ所となっている。
2013年2月には改正消防法の期限の関係で灯油と軽油の販売ができなくなった。
「約100軒ほど配達していたが、そのお得意様は高齢者の世帯が大半で、そうした人たちの生活を支えるため踏ん張って来たが、経営も厳しくなり苦渋の決断だった」と当時の事を話す。
現在はガソリンだけの販売で営業を続けているが、「販売量の減少は顕著で経営は非常に厳しい状況にある。また子供たちも別に仕事を持っているため、自分の代で廃業せざるを得ないと考えている」という。
しかし、「商売としては非常に厳しいが、ここに話をするためにやってくる地元の人もいる。自分たちが元気でいる間は商売を続け、ここを地元の人たちのコミュニケーションの場として使ってもらえれば」との思いもある。
※
2015年08月05日 供給責任と経営難の狭間で
岡山県真庭市 ときめきSS
地元中心に顧客獲得へ努力
JAが閉鎖したSSを地元住民が出資して買い取り営業を続けている。
営業を開始した当初は運営面での問題もあったが、スタッフの懸命な努力で乗り越え、また中国自動車道を利用する車の利用もあってまずまずの状況で推移していた。
しかし米子道が2車線となってからは渋滞も減り、通過する車がほとんどで、高速道路を利用する給油客もかなり減少してしまった。
さらに「近隣のSSとの価格競争もあって営業面では非常に厳しい状況に置かれている」と話す。
スタート時点では少なくとも10年は頑張っていこうとSSの運営に取り組んできたが、すでに7年が経過した。
SSスタッフからは今後もこれまでと同様に「自分たちで出来る限りの事はやり、地元により役立つSSとして存続していけるよう努力していきたい」との声が聞かれ、「地元の人たちの出資で営業を続ける事ができているSSであることから、より多くの地元の人に利用してもらうことが当SSの運営の基本。今後も地元を中心とした顧客獲得に努め、依然として厳しい経営環境ではあるが、地域への石油製品の安定供給のため全力投球で頑張りたい」と強調している。
※
2014年10月25日 住民出資でSS再生
***
採算の取れない過疎地では撤退するJA-SS。
しかし販売数量が見込める地域ではセルフ化して廉売。
2017年07月31日 全農エネルギー@JA-SS
追記
8月4日読売新聞より
>大ガスは採算性の悪い地方のLPG事業から撤退し、比較的堅調な都市部に注力する方針
※
不採算だと撤退するのが大手。
その地域で生活している地場の個人商店は、違う。