NEST OF BLUESMANIA

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音盤日誌「一日一枚」#326 V.A.「紫のけむり(ジミ・ヘンドリックス・トリビュート)」(ワーナーミュージックジャパン WPCP-5639)

2022-10-06 05:27:00 | Weblog

2006年8月20日(日)



#326 V.A.「紫のけむり(ジミ・ヘンドリックス・トリビュート)」(ワーナーミュージックジャパン WPCP-5639)

AMGによるディスク・データ

ジミ・ヘンドリックスに影響を受けた新旧のアーティストによるトリビュート盤。93年リリース。エディ・クレーマー、ジェフ・ゴールドらによるプロデュース。

ジミとほぼ同世代のエリック・クラプトン、バディ・ガイ、ジェフ・ベックから、ザ・キュア、リヴィング・カラー、M.A.C.C.(パール・ジャム、サウンド・ガーデンによるプロジェクト)等若い世代に至るまで、さまざまなアーティストが、それぞれに趣向を凝らしてジミのナンバーをカバー。

なんと、ジャズ/フュージョン畑のパット・メセニーまで登場しているのには驚き。ロックにとどまらず、さまざまなジャンルのミュージシャンに影響を与えているんだなあ、ジミという人は。

比較的原曲に忠実なアレンジのもの(M3、M4、M5など)のものもあれば、かなり自己流というか、好きに改変しているケース(M1、M13など)もある。ギターをヴァイオリンに置き換えてのインスト、ふだんはクラシックを弾いているナイジェル・ケネディによる「ファイアー」なんて異色作もある。

ふだんはまったりとしたアダルト系の音楽ばかりやっているECも、本盤の「ストーン・フリー」では、けっこう歌、ギターともに"ロック"しているのが、ちょっと嬉しい。ちなみに、プロデュースはナイル・ロジャーズ。

個人的にイチ押しなのは、シール&ジェフ・ベックによる「マニック・ディプレッション」かな。

シールというのは、63年ロンドン生まれの黒人シンガー(ブラジル&ナイジェリア系)なんだが、抑え気味の中低音の声がなかなかソウルフルでシブく、おなじみジェフ・ベックの枯れることのないトリッキーなプレイと、見事なコンビネーションを見せている。一聴の価値ありです。

「マニック~」といえば、ポール・ロジャーズがジミヘン・トリビュートライブ盤で、実にカッコいい歌を聴かせていたが、そのロジャーズも、もちろん本盤に参加している。スラッシュ、そしてバンド・オブ・ジプシーズとの超強力コラボによる「今日を生きられない」で登場。パワフルなコクのある歌声で、聴き手を魅了してくれる。

クリッシー姐さん率いるプリテンダーズによる「ボールド・アズ・ラヴ」もいい。本盤で歌が抜群にうまいのは、彼女だな。

バックのハードなサウンドとは対照的に、意外とポップなボーカル・アレンジがなされているのは、米国の男女混成バンド、ベリーの「アー・ユー・エクスペリエンスト」。なんか、日本のブリグリにも通じる雰囲気があって、面白い。

ギター・プレイに、ジミの影響が色濃いのは、黒人バンド、リヴィング・カラーのコーリー・グローヴァー。ジミとの年齢差は22才だが、そんなことは感じさせないくらい、ジミの感性をまんま継承している。

ジミのファンキー&ラテン路線のナンバー「サード・ストーン・フロム・ザ・サン」をカバーしてみせたのは、パット・メセニー。ふだんのメロウでマイルドなメセニーとは、ひと味違ったトリッキーなプレイが新鮮です。

大トリは、若手代表という感じでM.A.C.C.の「ヘイ・ベイビー」。これが意外とストレートなカバー。変に今ふうのアレンジにせず、オリジナルのビートを尊重したのが、彼らのジミへの強いリスペクトをあらわしているようだ。

ロックの革命児、ジミ・ヘンドリックス。死後35年以上が経過した今でも、その影響力は現役トップ・ミュージシャンのそれにも匹敵するものがある。

そのギター・プレイはいうに及ばず、そのラフながらもインパクトにあふれたボーカル・スタイルにも、多くのファンがいるのだ。この一枚を聴き、さらにジミ自身の演奏に触れていくことで、ジミのスゴさは、よりはっきりと判ってくるはず。乞うご一聴。

<独断評価>★★★