2007年1月14日(日)
#344 アル・グリーン「Al Green Explores Your Mind」(The Right Stuff/Hi 72435-95219-2-3)
メンフィス・ソウルの立役者、アル・グリーン、8枚目のアルバム。74年リリース。ウィリー・ミッチェルおよびアルによるプロデュース。
筆者はガチガチなソウル・ファンでも何でもないのだが、アル・グリーンは非常に好きなシンガーである。
何より、その声に艶があり、まことに色っぽい。女性ファンが多いというのもうなずける。
この一枚、「LET'S STAY TOGETHER」でブレイクして以来、着実にその実力を発揮してきた彼の、集大成的アルバムだと思う。
とにかく、全編、曲といい、歌唱といい、ストリングスをフルに配したメロウなアレンジといい、あれこれ評するのが申し訳ないくらい、レベルが高い。最後の一曲まで、流れる川のごとく、耳に心地よいサウンドが展開される。
そう、「スムース」。これがまさに彼の本質を、ひとことで言い表している形容詞だと思う。
全曲、アルのオリジナル。その中でも看板曲はA面トップ、スウィートな味わいのヒット・チューン「Sha-La-La(Make Me Happy)」といえるだろうが、実はもう一曲、きわめて重要なナンバーがある。
二曲目の「Take Me To The River」である。
このアルバムの中では、比較的ジミめというか、辛口なノリのナンバーだが、実に耳に、そして心に残る一曲。メロディも、歌唱も、掛け値なしの超一級品である。
これにさっそく着目したベテラン・ソウル・シンガー、シル・ジョンスン(最近売り出し中の歌姫、シリーナ・ジョンスンのおやっさんね)がカバーして、75年に大ヒット(シル自身の最大のヒットでもある)となる。
さらには78年にトーキング・ヘッズもカバー、こちらもスマッシュ・ヒット(全米26位)となる。
この曲の素晴らしさが、二度のカバー・ヒットにより、見事に証明されたのである。
その後も、多くのアーティストによりカバーされ、最近では、アル自身とB・B・キング、レニー・クラヴィッツという、新旧世代による共演版なんてのもある。
しかしまあ、どのバージョンも、アル自身のオリジナルの出来に、およぶものではない。
とにかくそのファルセットを駆使した歌唱は、「完璧」としかいいようがないもの。
アルの歌声はいつものようにスムースながら、しかしきわめて熱く、ソウルフルであり、聴く者を魅了してやまない。
とりわけ、後半部のシャウトには、アルのゴスペル魂とでもいうべきものが、集約されていると思う。
後代に末永く歌いつがれていくに違いないナンバー、「Take Me To The River」。
この、たった一曲を聴くために、このアルバムを買う価値は十二分にあると筆者は思っている。
もちろん、他のナンバーもハズれなし。ソウル・ファンでなくとも、大いに楽しんでいただけるはずだ。おすすめ。
<独断評価>★★★★