2007年3月4日(日)
#349 ドクター・ジョン「GOIN' BACK TO NEW ORLEANS」(Warner Bros. 9 26940-2)
早いもんで、もう3月やね。で、今月の第一弾は、これ。
ドクター・ジョンことマック・レベナックの音楽には、ジャズ的なものとニューオーリンズR&B的なもののふたつの流れがあるが、このアルバムは後者に属する。
名盤「DR. JOHN'S GUMBO」(72)から20年を経た92年に制作されたこの「GOIN' BACK TO NEW ORLEANS」は、まさにバック・トゥ・ザ・ルーツな一枚。
ニューオーリンズR&Bのみならず、アメリカ音楽のいくつもの源流に遡った、バラエティに富んだ内容だ。
たとえばM1。「ルイ・モロー・ゴトショークにインスパイアされて」とクレジットされているように、19世紀のクラシック作曲家へのトリビュートとして作られた一曲。あるいはM4、M5。20世紀前半のラグタイム~ジャズ・ピア二スト、ジェリー・ロール・モートンの作品のカバー。ジャズの古典・M6、ニューオーリンズR&Bのカバー、M15、M16、M17、M18などなど。現代風にアップテンポにアレンジしたバラードの古典、M10なんてのもある。
ライナー中の写真、マルディグラのド派手&巨大な衣装に身をつつみ、ステージに現れたドクター・ジョンは、まさにNOの守護神の如し。
極め付きのセカンドラインM3、ドクター・ジョンもリスペクトするNO音楽の父、プロフェッサー・ロングヘア(80年没)に捧げたインスト曲M11、フェスとドクターの共作M14などは、まさに生粋のニューオーリンズっ子のドクター・ジョンでなくては生み出せない世界だ。
歌は相も変わらずの塩辛声。肩の力の抜けた、リラックスを絵に描いたようなボーカル。巧いというよりは、味のある歌だわな。
彼のピアノを中軸に、ホーン・セクションを前面に押し出したサウンドの味わいは、まさにオトナ志向。そのへんのコドモにはちょっとわかるめえ。
要するにシブシブな一枚。派手なのはドクター・ジョンの衣装ぐらいで、あとはひたすら玄人好みの音楽がズラリ。
フェスの死後はオレしかいないっしょ!という感じで、NOの象徴となった男、ドクター・ジョン。
NOサウンドの継承者としての意気込みが伝わってくる一枚。聴かないと、損でっせ。
<独断評価>★★★☆