marcoの手帖

永遠の命への脱出と前進〔与えられた人生の宿題〕

☕ 作家、全米図書賞 翻訳文学部門を受章した 柳 美里さん

2020-11-23 00:10:33 | 小説

◆受賞作品は『JR上野駅公園口』。その作品より、何が作家活動の原動力になっているのかが気になる僕としては、それはつまり、人を知るということのサンプル探しのようなものだが、(かといって、そういう自分の分析とかが一番困難なのだが、)昔、彼女の作品をかじり読みした時、過去に非常に精神的にダメージを負った人だなと思ったのだ。非常に辛辣なきつい言葉を苦もなく書き綴る・・・。それは、なぜなのかなと思っていた。◆先の桐野夏生さんのように、その理由を彼女自身が、語られた記事があったのでそれを書き留めておく。<<<・・・横浜で育った少女時代、過酷ないじめを受けた。あだなは「ばい菌」。家族は崩壊していた。英国のファンタジー「ナルニア国物語」の作品世界だけが「居場所」だった。高校を中退し、演劇の道へ。・・・岸田国士戯曲賞を受け、その後、作家デビュー。芥川賞や泉鏡花文学賞・・・東日本大震災と原発以降、`'15年に神奈川からその地域、南相馬に移転し、書店を開く。社会や国家から有形無形の圧力を受けすみかや心のよりどころを失った人、人間の尊厳を奪われた人と共にあろうとする「倫理」の作家。・・・「居場所のない人」のために物語をつづる。>>>◆あぁ、やはりな、と僕は思った。人は、それぞれ、この地上に宿題を持って生まれるのだ。それは、体験させられ、肉体に埋め込まれ、その棘を抜こうとしてあがき、言葉化する。そして、それは人が当たり前の人として生きられない人々への共感となり、先陣を切って、その宿題を解明し、言葉にしようとする行為が、人を救済に向かわしめる。この地上に命を与えた神への抗議としての回答探しである。◆最後に、彼女は大切にしている言葉があると言う。それは聖書の黄金律と言われる言葉の部分である。「心を尽くし、精神を尽くし、力を尽くし、思いを尽くす」であると。・・・実際の聖書はこうだ。「心を尽くし、精神を尽くし、力を尽くして、主なる汝の神を愛しなさい。自分を愛するようにあなたの隣人を愛しなさい。」これは、キリストの言葉である。人は、神への抗議をすると、神からの言葉の回答に必ずぶつかるものだ。それは、永遠の命への光が差し込んでくる言葉であり、永遠の世界への招待状となっているのである。