3月4日に「元素戦略/希少金属代替材料開発 第5回合同シンポジウム」が東京都港区で開催されました。主催者は元素戦略/希少金属代替材料開発合同戦略会議という産学官組織です。昨年から問題になっている中国からのレアメタルの鉱石や原材料の輸出規制によって、日本でのハイテク部品の生産に支障をきたす可能性が高まっている時だけに、その対策の進捗(しんちょく)具合を知りたいと考えた、多くの聴講者が集まりました。
現在迫られているディスプロシウム(Dy)などのレアメタル元素群の供給不足対策である希少金属代替材両開発プロジェクト〔新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が研究資金を提供し、運営〕は最近は一定の成果を上げ始めています。今回の合同シンポジウムでは、高性能な希土類磁石に添加するディスプロシウムを40%削減するメドとか、自動車の排ガス浄化向け白金族利用の触媒で、白金族の使用量を50%削減する見通しができたなどの研究開発成果を、そのプロジェクトリーダーがそれぞれ報告しました。
今回、人類は新しい科学・技術の可能性を追究しているなと感心したのは、科学技術振興機構(JST)が研究資金を提供している元素戦略プロジェクトの方です。元素が持つ可能性を追求する、チャレンジングな研究開発プロジェクトです。その成果報告の中で、聴講者の話題を集めたのは東京工業大学の細野秀雄教授の講演でした(細野教授の話は、別の機会に詳細にお伝えしたいと考えています)。
今回発表された中で、ひょっとしたら将来、革新的な基盤技術に育つかもしれないなと感じた成果報告は、九州大学教授の成田吉徳さんがプロジェクトリーダーを務めている「貴金属代替分子触媒を用いる革新的エネルギー変換システムの開発」プロジェクトです。現在、実用化され始めた燃料電池(FC)向けの水素ガスの供給体制の確立が大きな課題になっています。また、燃料電池では、水素ガスと酸素ガスを反応させて発電する触媒に白金(Pt)を利用しています。こうした水素ガスを作製したり、水素ガスと酸素ガスを反応させる触媒として、成田教授はマンガンや鉄などのありふれた金属元素を用いる錯体の分子触媒を研究開発されています。最近、マンガン系の水分解分子触媒の基本的な動作にメドをつけたとのことでした。


触媒分子構造の最適化を進めているそうです。
植物の光合成などの反応を参考に、貴金属触媒という工業的な触媒ではなく、分子的な触媒を目指しているものです。また、酸素還元触媒も優れたものの開発にメドをつけたとのことです。生物が持っている合理的で高効率な触媒反応に近い分子触媒を実現しようとしてるそうです。人類がやっと手に入れようとしている新しい科学・技術体系の入り口を感じました。
同様に、早稲田大学教授の黒田一幸さんが報告した「ケイ素酸素系化合物の精密合成による機能設計」プロジェクトも興味深いものでした。ケイ素(Si)と酸素(O)というありふれた元素のケイ素酸素化合物を新しい触媒に仕立てる研究開発プロジェクトです。成功すれば、人類は新しい可能性を持つ道を切り開きます。

今回のシンポジウムは、日本の基盤研究のレベルの高さを垣間見ることができた成果報告会でした。ただし、「各研究成果の知的財産マネジメントはあまりレベルが高くないだろうと推察できる」と、シンポジウムの際に偶然会った知人と話し合いました。
現在迫られているディスプロシウム(Dy)などのレアメタル元素群の供給不足対策である希少金属代替材両開発プロジェクト〔新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が研究資金を提供し、運営〕は最近は一定の成果を上げ始めています。今回の合同シンポジウムでは、高性能な希土類磁石に添加するディスプロシウムを40%削減するメドとか、自動車の排ガス浄化向け白金族利用の触媒で、白金族の使用量を50%削減する見通しができたなどの研究開発成果を、そのプロジェクトリーダーがそれぞれ報告しました。
今回、人類は新しい科学・技術の可能性を追究しているなと感心したのは、科学技術振興機構(JST)が研究資金を提供している元素戦略プロジェクトの方です。元素が持つ可能性を追求する、チャレンジングな研究開発プロジェクトです。その成果報告の中で、聴講者の話題を集めたのは東京工業大学の細野秀雄教授の講演でした(細野教授の話は、別の機会に詳細にお伝えしたいと考えています)。
今回発表された中で、ひょっとしたら将来、革新的な基盤技術に育つかもしれないなと感じた成果報告は、九州大学教授の成田吉徳さんがプロジェクトリーダーを務めている「貴金属代替分子触媒を用いる革新的エネルギー変換システムの開発」プロジェクトです。現在、実用化され始めた燃料電池(FC)向けの水素ガスの供給体制の確立が大きな課題になっています。また、燃料電池では、水素ガスと酸素ガスを反応させて発電する触媒に白金(Pt)を利用しています。こうした水素ガスを作製したり、水素ガスと酸素ガスを反応させる触媒として、成田教授はマンガンや鉄などのありふれた金属元素を用いる錯体の分子触媒を研究開発されています。最近、マンガン系の水分解分子触媒の基本的な動作にメドをつけたとのことでした。


触媒分子構造の最適化を進めているそうです。
植物の光合成などの反応を参考に、貴金属触媒という工業的な触媒ではなく、分子的な触媒を目指しているものです。また、酸素還元触媒も優れたものの開発にメドをつけたとのことです。生物が持っている合理的で高効率な触媒反応に近い分子触媒を実現しようとしてるそうです。人類がやっと手に入れようとしている新しい科学・技術体系の入り口を感じました。
同様に、早稲田大学教授の黒田一幸さんが報告した「ケイ素酸素系化合物の精密合成による機能設計」プロジェクトも興味深いものでした。ケイ素(Si)と酸素(O)というありふれた元素のケイ素酸素化合物を新しい触媒に仕立てる研究開発プロジェクトです。成功すれば、人類は新しい可能性を持つ道を切り開きます。

今回のシンポジウムは、日本の基盤研究のレベルの高さを垣間見ることができた成果報告会でした。ただし、「各研究成果の知的財産マネジメントはあまりレベルが高くないだろうと推察できる」と、シンポジウムの際に偶然会った知人と話し合いました。
この点は、レアメタルを用いる自動車部品の生産でも、将来起こりえると予想されています。
中国などからのレアメタルの供給が絞られると、ある自動車部品が必要数製造できなくなれば、今回と同様の生産規模の縮小が予想されます。
今回の大震災はその予行演習になったと、前向きに無理して考えると、こうした事態をどう防ぐかを考えることによって、今回の被災が半面教師として、少しは役立つことになります。