2019年12月27日に発行された日本経済新聞紙の朝刊一面の見出し「人口減時代に居住地拡大 増加面積、10年で大阪府の規模」を拝読しました。
この記事の中見出しは「進まぬ街の集約 膨らむ行政負担」です。
この記事のリードは「(日本では)人口減時代に必要なコンパクトシティーづくりが進まない。日本経済新聞社が直近の国勢調査を分析したところ、郊外の宅地開発が止まらず、2015年までの10年間で大阪府に匹敵する面積の居住地区が生まれたことがわかった。かたや東京都心部では空き家増加などで人口密度が薄まっている。無秩序な都市拡散を防がなければ、行政コストは膨れ上がる」と訴えています。
この「コンパクトシティー」とは、商業施設や住宅が市街地に集約されている都市を意味しています。現在では、地方の都市部では、自動車の普及によって、地価が安い郊外に住宅や商業施設が増えていますが、こうした市街地から分散した市では、高齢化した老人が車を運転できなくなると、「買い物難民」化する事態が進み、ゴミ収集や除雪作業などの行政コストが膨らむ問題が扶養しています。
国は地方自治体にコンパクトシティー化を進めるために、自治体に立地適正化計画を定めるように指導しています。このコンパクトシティー化計画では、自治体の中心部の市街地に商業施設や病院、公共施設を集める「都市機能誘導区域」と住宅を集める「居住誘導区域」を具体的に決めるように促しています。
日本経済新聞紙のWeb版である日本経済新聞 電子版では見出し「人口減でも町集約進まず 居住地膨張、大阪府ひとつ分」と報じています。
居住区が地方の中心部の市街地郊外に広がると、インフラや行政サービスの費用が増え、人口減や住民の高齢化によって、将来の税収入が減ると、過剰施設の維持費だけがかさむようになります。
日本全国の270の自治体が市街地に公共施設や住宅地を集約する計画を策定していますが、「実行力が乏しいとの指摘が相次いでいます」と記事は指摘しています。
日本で進む少子高齢化対策も、各都道府県・地方自治体は部分最適はいくらかできても、全体最適はできていません。
さまざまな利害が絡む中で、“部分最適”ではなく、“全体最適”を考えるのが政治の役目です。
“全体最適”を考える政治の役目が働いていない典型例は、日本の国内出生数の低下がずっと止らないことです。厚生労働省が12月24日に発表した2019年の人口動態統計の年間推計では、日本人の国内出生数は86万4000人となリました。前年比で5.92パーセントと急減し、1899年の統計開始以来初めて90万人を下回りました。
出生数が死亡数を下回る人口の「自然減」も51万2000人と初めて50万人を超え、政府の対策にもかかわらず少子化・人口減が加速しています。ここ10数年間、効果的な施策が打てていない証拠です。
子どもを産み、育てやすい社会環境をつくるというかけ声は、ここ10年以上続いています。フランスを見習って、子どもを産み、育てやすい社会環境をつくるという日本の課題に対して有効な手が打てていません。
これに、コンパクトシティーづくりが進まない日本の現状は、生活する環境にさまざまな問題を増大させます。消費税の値上げという小手先の施策では解決しない大問題です。