ヒトリシズカのつぶやき特論

起業家などの変革を目指す方々がどう汗をかいているかを時々リポートし、季節の移ろいも時々リポートします

人間の不老不死を実現した社会を描くSF小説「百年法」を読破しました

2012年09月20日 | 
 最近のさまざまな書評で紹介されたSF(サイエンス・フィクション)小説の「百年法」(発行は角川書店)を読みました。この単行本の発行日は2012年7月31日です。いくつかの書評で注目本として紹介されたためか、最初に行った大型書店では売り切れていました。

 山田宗樹さんが執筆した「百年法」は、上下2巻合わせて、合計800ページ強とかなりのボリュームです。





 かなりの長さですが、読み始めたら面白く、一気に上下2巻を読んでしまいました。

 あらすじは、「1945年に日本は太平洋戦争に負けて、米国が占領し支配下に置いて共和国にする。この際に、米国内で実用化に成功していたヒト不老化技術HAVIを日本人に適用する。HAVIを導入すると、人間は歳をとらず、不死になるため、“百年法”という法律を策定し、HAVIを適用した人間を100歳になると、安楽死させる仕組みを導入する。不死の人間が増えすぎると、後に産まれた若者が活躍する場がなくなる、あるいは子供を産まなくなるなどの不具合が生じるために、“百年法”の施行が不可欠になる」というものです。

 上巻は、HAVIを導入し、百年法の施行実施まで1年を切った2048年から始まります。時の内閣を抱えている政党は、百年法の施行による不人気によって、次の選挙に負けて政権交代に陥ることを恐れ、百年法の施行を本当に実施するのかどうかを国民投票にかけます。その結果は、百年法の施行を一時凍結するというものでした。

 百年法の施行を一時停止するという事態に、政府の内務省の担当者が一計を案じて、弱小政党を盛り立てて、政権を握り、百年法の施行を断行する政策を実行します。下巻は、百年法の施行に反対する反乱者グループなどの話です。

 読み始めたら面白く、一気に上下巻を読んでしまったと報告しました。ぐいぐい読ませる筆力はたいしたものです。でも、再読してみると、細部を構成する各エピソードがその後の布石になってないものが多く、結果的にはこのSF小説は習作だったと感じました。

 例えば、米国が日本にHAVIを導入した理由が不明です。米国でも導入しているのですが、その効果や問題点などの言及もなく、アイデア倒れです。上巻の初めに、日本は食料難になり、昆虫を原料とする“昆虫食”の話も出てくるのですが、ここで完結しています。

 さらに、日本の製造業は実力不足で、米国や韓国などの製品に比べて、性能が劣り、故障がちですが、その理由も不明で、後半の話につながっていません。いろいろと刺激的なエピソードには満ちているのですが、小説の構成には関与していません。小説の骨子は、独裁政権が陥る類型的な話です。

 ヒト不老化技術HAVIという刺激的なアイデアにおぼれた、大変惜しい内容の小説になっています。


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3 コメント

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事実は小説より奇なり (本の虫)
2012-09-22 21:38:07
 SF小説の百年法が語る、ヒト不老化技術HAVIの実現を待たずに、「日本では、2012年に100歳以上の方が5万人を突破し、2051年には70万人に達すると推定されてます」とのことです。
 正に、事実は小説より奇なりです。
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「百年法」の読後感想 (INPUT)
2012-09-23 18:35:27
山田宗樹さんの「百年法」上・下を読みました。一気に読める面白さです。
ただし、確かに全体構成の流れに関係がない、細部の話がいくつかあります。骨子は意外と単純と思いmした。
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「百年法」の読後感想 (鯉カープ)
2012-10-10 14:38:37
山田宗樹さんの最新刊の「百年法」上・下を読みました。
とても読みやすく、確かに一気に読めます。
でも、ヒト不老化技術HAVIの仕組みの説明もなく、構成要素は粗い表現が多いと感じました。
再読に耐えるのかは疑問です。
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