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これは古本ではなく本屋で真新しい文庫本の歴史小説を買った。
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作家は山本兼一という私にとっては初めての作家。
直木賞受賞作家とは後で知った。
買った訳は題名が「神変」、これは何か修験に関わりがあるのかな
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副題が役小角(えんのおずぬ)。修験道の祖だ。これはいいもの見つけたぞ
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分厚い本だが、数日で読了
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時代は持統天皇の御世。
藤原京を造営しようとする天皇とみやこ人、吉野の山奥を拠点に生きる山の民を引きいる役小角一族。
巨大な都を造営し、律令を制定し、班田=土地を与えその収穫に税を賦課し、人民から税を徴収する。
小角にはどうしてもそれが許容できない。なぜ土地を「政府」から分け与えられねばならないのか?土地はもともと「神」のものであって決して誰かの所有物ではない筈。人は誰にも強制されずに自由に生きていけるはずー
「国家」とは何か?
これを読みながら井上ひさしの『吉里吉里人』を思い出した。
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今回のテロ事件でも極悪非道のイスラム過激組織ISISを「イスラム国」と訳している日本。ここでも国とは何だというラジカルな問いかけが生まれる。
この国の首相が中東でISISと戦う諸国に2億ドルを支援するとわざわざ出かけて行って表明したが、その2億ドルって首相の懐から出るものではなくて、もちろん私達国民の血税から生み出されている。
政権トップだからといってこの原理原則を忘れてもらってはならない。
先ずはその土地に住まう人間の存在を最優先で考えるべきこと。
「神変」は小説としては題材が古代で、詳しい史料が少なく想像力を自由に羽ばたける奔放さはあり、小角の人間離れした「超能力」=神懸りの行為は楽しめるけれど、イマイチの説得力に欠ける。
ラストも締りがなかった。