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読んでいてその時間、本から離れていてもその余韻で何だかこころ豊かに楽しくなる・・・えらいべた褒めだが、山本一力の小説に当たった。
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『峠越え』PHP文庫500ページに喃喃とする力作。
5人の男と1人の女が江戸から東海道中を通って久能山の権現参りに出掛けるーそれだけのストーリーだがその旅の途中で次々に起きる事件が心を躍らせる
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この主人公は女衒の新三郎。その惚れた女が博打ツボ振り女のおりゅう。江戸でのるかそるかの大賭け事=出開帳を仕組み大成功を収め、莫大な収入を得てやっと借金を返し、女を騙し、女の涙で商いをする女衒の商いから足を洗うことができた新三郎。
かれに惚れたおりゅうと所帯を持って幸せなスタートを切れる筈だった二人にとんでもない不幸=チャンスが舞い込んでくる
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江戸の祭りに欠かせない出店を仕切る香具師江戸の四天王と呼ばれている男達、そしてこれまで世話になった女衒の元締めの5人が出開帳を成功裏に終わらせた新三郎を見初め、自分達を久能山までお宮参りに連れて行ってくれと依頼する。旅のツアーのプロデューサーで世話役だ。
足下に何十人と子分を持ち一年に何万両という実入りの商売を仕切る男達。目の前に出るだけで震えが繰るような面々。
この7人旅。途中で次々と厄介な事件が起き、のっぴきならない処断を迫られる。
これを新三郎とおりゅうが知恵をあわせ解決していくストーリーに心躍る。
何だかあまり見たことはないのだが子供を主人公にしたディズニー映画みたいなワクワクドキドキの本だ。
現在他にも明治初期の歴史小説、「血の日本史」という古代からの事件簿総覧みたいなものを読んでいるが、ついつい山本の本に集中してしまう
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こういう痛快なストーリーが書ける山本一力の想像力は凄い。時々テレビに出てきているが・・・