まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

インドネシアでの合弁会社設立

2014-09-06 00:32:46 | 企業投資

〇 インドネシアについて、会社法の監査役会(=Board of CommissionersKomisaris会)について、以前書きましたが、今回は、インドネシアへの投資・会社の設立について書きましょう。

 

〇 インドネシアへの外資の投資については、多くの新興国同様ネガティブリストがあり、外資の参入を禁止している業種や制限している業種がありますね。JetroWebでは、その邦訳を掲載していますので、まず事前チェックが必要ですね。制限業種でも、現地企業との合弁による進出はできますので、そういったことも検討する必要があるかもしれません。

〇 日本企業の典型的な進出方法として、現地企業と合弁会社を作っての進出の場合を検討してみましょう。即ち、現地企業と合弁で株式会社(Perseroan terbatas=PT)を設立する場合ですね。外国資本が入る企業をPMA企業(PMA=Penanaman Modal Asing = Foreign Investment Company)と言います。PMA企業は、まず投資計画等を作成し投資調整庁(BKPM)に投資登録申請書(Model1)を提出、投資承認通知書(SP/PMA)PMA設立登録証(有効期間6か月)を取得するのが出発点となります。投資計画には、まず、合弁契約書、その他現地パートナー企業の定款、納税登録番号、合弁会社が行う事業分野、プロジェクト場所、年間生産予定高、投資額(Rp/US$)、製造工程のフローチャート、使用原材料の種類その他の書類・資料を添付する必要があります。

〇 会社設立手続―概略の流れは以下ですね。

 社名申請→定款作成→設立公正証書の取得→居住者証明取得()→納税者番号(NPWP)登録(②)→PMA銀行口座開設(:資本金払込)→法務人権省に会社設立証書の承認申請()→商業省へTDP(Tanda Daftar Perusahaan=会社登録証)申請とその取得

 

 ① 必要書類=BKPM発行の投資承認通知書、事務所の賃貸借契約書、現地法人代表者の身分 証明書(外国人はPassport)等

 

 ② 納税者番号(NPWP)及び課税事業主認識番号(PKP)の取得:NPWP申請書類は、申請書、設立 証書コピー、居住者証明書、現地法人代表者の身分証明書、委任状、その後PKPの取得するときは、NPWP、事務所の賃貸借契約書が必要で、税務署による事務所査察も行われます。

 

 ③ 必要書類=BKPMからの投資承認通知書、設立証書コピー、NPWP

 

 ④ 申請代理は公証人が行います。承認申請受理通知後30日以内に、申請書類を提出します。申請書類は、設立公正証書の写し、NPWP、官報公告掲載手数料支払の領収書、非税国家収入領収書、資本金払込の銀行証明書ですね。 

 

⇒申請書類に不備が無ければ、法務人権大臣は電子署名のなされた承認書を発行し、登記簿に会社登記手続を行い、登記手続終了後に法務人権大臣より設立認可が下りた段階で、新会社は法人格を取得する。設立認可がおりてから14日以内に、法務人権大臣は設立認可に関する事項を官報に掲載します。

〇 各関係省庁への許認可申請:上記で会社はできますが、これだけでは事業を行うことはできません。 BKPMにおける輸入ライセンスの申請・取得(メーカは、API-P取得)、輸入ライセンス取得後、税関の輸出入業者として登録が必要です。また日本から駐在員が赴任しますが、外国人労働者のVisa取得が必要です。尚、原材料購入、部品輸入などの輸入ライセンス取得には、2-3か月ぐらいの時間がかかっているようです。また、その後に、BKPMより事業ライセンスの取得をして初めて事業が開始できるのですが、このライセンスはメーカの場合は工場稼働後なので、工場稼働がに1年かかるのなら1年後ということになりますね(但し、一時ライセンス制度もありますが)

○ 土地利用に関する許可の取得:メーカが合弁で、現地で土地を取得し工場を建設する場合は、以下の手続きが必要ですね。この部分は、Jetrowebを参考にしています。

 

インドネシア全国土の最高管理権は国家に帰属し、個人・企業は土地の権利を国の許可を取得した上で保有する形態をとっている。土地に関して取得できる権利は、 [1] 所有権(HM)、[2] 事業権(HGU)、[3] 建築権(HGB)、[4] 利用権(HP)、[5] 開墾権(HMT)、[6] 森林産出物採取権(HMHH)、[7] 賃借権(HS)、[8] 小作権(HUBH)、[9] 土地質権(HG)、[10] 滞在権(HM)、[11] 農地賃借権(HSTB)の11種類あり、[1][6] は国の許可が必要だが、[7][11]は当事者間で権利の移転・取得が可能である。

 

上記[1]-[6]で、PMA企業が利用可能な権利は以下の3つ

[2] 事業権(HGU=Hak Guna Usaha:国家に属する農地を貸借して開発する権利。期間は最長35年認められ、更新も可能。

[3] 建築権(HGB=Hak Guna Bangunan:土地の上に建物を建設・保有する権利。期間は通常2530年、必要な場合は地方政府に申請して更新できる。

[4] 利用権(Hak Pakai:国家ないし個人に属する土地を一定の期間、開発、利用する権利。期間は最長25年、さらに更新が認められる。

 

地域の指定、土地の指定、土地使用権の承認、建設許可の発給、公害関係法規に基づく許可は、各州投資調整局(BKPMD)でも行われる。 土地の権利は、国家土地局(Badan PertanahanNasional=BPN)の地方事務所により、土地台帳に登録された時点から有効。土地の権利移転は、その土地所在地の土地公証人(Pejabat Pembuat Akte Tanah=PPAT)が発行する証書に基づき行う。

 

新興国で事業を立ち上げるのは、結構手間がかかりますね。でも工場稼働後からが本格的勝負ですね。毎年、組合も強く、毎年23割も最低賃金が上昇していますので、人員計画・そのコスト上昇率などもしっかり検討しないといけませんね。

 

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地域統括会社に関する6つの課税問題その2

2014-01-11 15:58:28 | 企業投資

 前回の続き(2)①からです。

 

 (2) ①:香港の法人税率は16.5%ですね。またシンガポールは17%ですね。即ち20%以下です。ですから特定外国子会社等(法人所得税が無い又はあっても税率が20%以下の国に所在する外国子会社)に該当し、タックス・ヘイブン税制が適用され、その子会社の留保所得を株主である日本の親会社等の所得と合算して課税される恐れがあります。しかし、一定の要件を満たす統括会社なら、タックス・ヘイブン税制は適用されません。それは、日本の会社が株式・持分の100%を直接・間接に保有する子会社(統括会社)であり、孫会社(被統括会社)が2社以上で、「統括業務」を行っていることが条件です。

 

 

では、統括業務の定義は何でしょうか?租税特別措置法66条の6③では、「統括業務とは」、「株式等の保有を主たる事業とする特定外国子会社等のうち、当該特定外国子会社等が他の外国法人の事業活動の総合的な管理及び調整を通じてその収益性の向上に資する業務として政令で定めるもの」(税法の規定ですが、租税が安くなれば収益性が向上することもいえますね)であり「統括業務を行うに必要と認められる事務所、店舗、工場その他の固定施設を有し、かつ、その事業の管理、支配及び運営を自ら行つているものである場合で政令で定めるものとしています。これを受けて、施行例39条の17①では、「統括会社と被統括会社との間における契約に基づき行う業務のうち当該被統括会社の事業の方針の決定又は調整に係るものであつて、当該特定外国子会社等が2以上の被統括会社に係る当該業務を一括して行うことによりこれらの被統括会社の収益性の向上に資することとなると認められるもの」であり、「その本店所在地国に統括業務に係る事務所、店舗、工場その他の固定施設及び当該統括業務を行うに必要と認められる当該統括業務に従事する者専ら当該統括業務に従事する者に限り、当該特定外国子会社等の役員を除く。)を有していること」としています。<o:p></o:p>

 

⇒税法の規定は複雑?と言いますか、曖昧いい加減といいましょうか?法律と政令(施行令)が同種用語の言葉言換え・重複したり、循環参照的の言い方をしております。会社法など他の法律でもこういう言い方は良く見かけます。政令でより具体的に記載しようとしても、うまく書けないので、結局法律と同じような言葉を並べて、思い浮かんだ少し別の言葉を追加して誤魔化しているのではないでしょうか。これは、将来法律制定当時想定外のことが出てきたら政令で網をかけようとするずるい立案担当者の考えかもしれません。また、事業をやったことの無い人が政令を書いていますから、法律よりも具体的に何を書けばよいのか想定できないのでしょう。上の例で言えば、法律と政令の違いは、結局統括業務を行っている従事者がいる事ぐらいですかね。また、契約に基づきというのもおかしいですね。統括会社は持株会社ですので、株主権の行使が基本ですね。定款に株主の承認事項とすれば、これもここに言う「契約」に入るのでしょうか?また、適格現物出資は25%以上ですから、49%保有でもOKです。残り51%は合弁パートナーが保有して、結局事業の方針や決定は、相手方パードナーに握られている場合はどうなるのでしょうか。日本企業の合弁は、49%までお金は出さされて、相手にうまくやられている場合もありますからね。<o:p></o:p>

 

 

 (2)②:シンガポールでは地域統括会社を保有して事業展開すれば、税率を15%にするという優遇措置があります。勿論、それには要件があり、これを満たす必要があります。その実質的な要件は以下ですが、詳細はEDB(Singapore Economic Development Board)webに掲載されていますので、それを参照してください。但し、シンガポールでの税率優遇期間は3年(+2年延長可能)なので短いですね。やはり、シンガポールはけちですね。タイの法人税率は通常23%です(タックス・ヘイブン税制は考えなくてもよい税率)。しかし、タイに地域統括会社を設置すれば、タイ国外の関連会社からのサービス収入には、最大15年間免税であり、タイ国内の関連会社からの統括会社サービス収入には最大15年間税率10%が適用されますので、裾野の広い自動車関連産業の会社ではタイに地域統括会社をおいているところもあるようです。<o:p></o:p>

 The applicant should have a substantial level of headquarters activities in Singapore that may include: <o:p></o:p>

     ? Strategic Business Planning and Development <o:p></o:p>

     ? General Management and Administration <o:p></o:p>

     ? Marketing Control, Planning and Brand Management <o:p></o:p>

     ? Intellectual Property Management <o:p></o:p>

     ? Corporate Training and Personnel Management <o:p></o:p>

     ? Research, Development and Test Bedding of New Concepts <o:p></o:p>

     ? Shared Services <o:p></o:p>

     ? Economic or Investment Research and Analysis <o:p></o:p>

     ? Technical Support Services <o:p></o:p>

     ? Sourcing, Procurement and Distribution <o:p></o:p>

     ? Corporate Finance Advisory Services <o:p></o:p>

 

⇒日本の政令を作ったおっさんよりも、きちんと記載しています。具体的ですね。日本もこれぐらい記載して、例えば、これらの項目のうち3つ以上を満たせば、「統括業務」を行っているとしても良いかもしれません。<o:p></o:p>

 

<o:p></o:p>

 (2)③:統括会社所在国と孫会社所在国間に租税条約が締結されているかも注意が必要ですね。特にシンガポールの統括会社に、その保有する複数の子会社(日本から見ると孫会社)の資金繰りを調整する機能を持たす場合等は検討に値します。例えば日本円⇔US$は、円高=ドル安、ドル高=円安となります、同じ方向には動きませんので、孫会社に、例えばUS$と日本円というdual currency の親子ローンを提供すれば、その為替リスクを相殺することも可能ですし、またシンガポールなら資金のやり取りも、ネッテイングで行えるはずです。即ち、銀行にへの計な手数料支払いが減ると思います。だいぶ話がそれましたが、シンガポールと租税条約を締結している国に被統括会社があれば、ローン金利の源泉徴収税を安く出来ます。シンガポールは、日本よりも多く租税条約を76カ国と締結しているそうです。ここでの注意点は、シンガポールはキャピタルゲインと一定の受取配当は非課税ですが、利子は課税されます。一方、香港は、キャピタルゲイン、受取配当、受取利子も非課税です。

 

 

自社の事業の特性、孫会社の分布状況等も考えて税務戦略を練らないといけません。インド等は、タックス・ヘブンのモーリシャス共和国に中間持株会社を作っている投資している欧米企業が結構あります。昔は、租税条約で利子・配当課税が無かったからですね。しかし、税法はころころ変わります。特に新興国の場合はひどいですね。それと税務の執行の段階でも大きく違います。お互いの知恵(悪知恵?)比べでしょうか?

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地域統括会社に関する6つの課税問題その1

2014-01-03 09:01:00 | 企業投資

 

 今まで、ばらばらに東南アジア各国に子会社や合弁会社を持っていた、即ち日本本社が株式を保有していたが、本社の一部権限・機能をシンガポール等の100%子会社に委譲し、併せて地域内子会社・合弁会社を地域統括会社の傘下において、効率的に事業の運営・支援のみならず、ファイナンス機能を行うために、日本本社保有の株式を、シンガポール等の100%子会社である地域統括会社に現物出資して、グループ企業の経営を強化していこうという企業が多く出ています。ということで、今回は、香港やタイはややこしくなるので除外して、シンガポールの地域統括会社を中心に税務の話を書いて見ましょう。地域統括会社に、(1) 日本本社保有の既存子会社・合弁会社の株式・持分を譲渡する場合に、 日本での譲渡益課税が発生するかどうか、②譲渡される株式の対象である被出資会社の所在国で課税の問題が生じないか、③地域統括会社所在国での課税問題が生じないか、及び(2) 統括会社の事業により稼得される所得に関し①日本のタックス・ヘイブン(Tax Haven)税制上の問題が無いかどうか、②地域統括会社所在国での優遇税制が適用されるかどうか、③孫となった会社から統括会社が受取るロイヤルティや利子収入等について統括会社所在国と孫会社所在国間に租税条約を締結して税率の軽減がはかられているかどうかという6つの視点から見て見ましょう。尚、その他に移転価格の問題もありますが、今回は除外します。<o:p></o:p>

 

<o:p></o:p>

  

 上記6つの論点・結論は、(1)①は適格現物出資をすれば課税されない(正確には課税の繰り延べ)、②は対象会社の所在国の税制による、③キャピタルゲイン課税の無い国では、キャピタルゲイン・ロスは認識しないので、キャピタルゲインによる受贈益の問題は生じない、(2)①については特定外国子会社等に該当しないような実体を備えた企業ならタックス・ヘイブン税制は適用されない、②所在国での要件を満たせば優遇税率が適用される。③は、統括会社所在国と孫会社所在国間で租税条約が締結されているかによるということです。では、上記(1)③を除いて簡単に見て行きましょう。(長くなりますので、(1)②までで、(2)①からは次回にします。)<o:p></o:p>

 

<o:p></o:p>

  

 (1)①:既存子会社・合弁会社の株式を、統括会社に移転するときに、時価譲渡をすると譲渡益が発生して課税されますが、株式そのものを出資財産として適格現物出資をすれば、簿価⇒簿価にて譲渡され、課税の繰り延べが可能となりますね。要件は、日本企業が25%以上保有している会社の株式を、100%子会社である地域統括会社に譲渡し、現物出資なのでその簿価相当の統括会社株式を統括会社から日本本社へ割当増資をすればよいわけですね。<o:p></o:p>

 

 

 (1)②:対象会社(孫会社)の所在地国で課税されるか要注意ですね。外⇒外で株式譲渡を行っているのに対象会社の所在地国の課税は一見関係なさそうに見えるのですが、あくまでも自国内の企業の株式譲渡によって株主が譲渡益を得たのだから課税権があるのだとするわけですね。株式譲渡の内容を規制当局に対象会社から申告させ、納税義務者たる株式の譲渡者が納税しないときは対象会社に納税義務が課されます。こういった国としては、中国・インド・タイ等があります。また税務申告の際には、中国のように国が認めた評価会社の評価書を要求する場合もあります。一方、譲渡益が発生しないときなら関係なし申告も必要なしと思いがちですが、そこはきちんとチェックの必要があります。上海では申告義務はあるようですが、大連では無いようです。中国は、地域によって運用が違いますからね。では、対象会社の株式の譲渡では譲渡益課税が発生するので、対象会社の株式を持っている(中間)持株会社の株式を譲渡する場合はどうでしょうか。インドでは、Vodafone事件で最高裁はその場合は譲渡益の対象とはならないと判断(高裁レベルでは対象と判断)されましたが、その後2012 Finance Billで、過去50年に遡って間接持分譲渡の場合でも課税されるという、不遡及の原則等どうでもよいという法律を制定している国もありますね。

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海外投資の資本等のチェックポイント

2013-01-13 11:41:06 | 企業投資

 

 海外で事業を行うとき、製造拠点なのか、販売拠点なのか、相互補完・相乗効果のあるパートナーがいるかどうか、経営主体は誰か等、山ほどの検討事項があります。

ステップとしては、調査を重ね「着想⇒予備計画⇒実行計画⇒現地政府許認可取得⇒会社設立・建設・操業準備⇒操業」という順序になりますね。

これらの検討の中で、お金=「投融資と配当・利子・税務という切り口」での検討も必要ですね。ということで、今回は、これらのチェックポイントについて思いつくところを列挙しました。足りないところ、漏れているところがあればご指摘お願いします。<o:p></o:p>

 

 会社を設立する場合:

(1)  投資形態:

a. 日本の本社から投資するか、海外の新設又は既設子会社から投資するか?

―租税回避国経由というのもありますが、これには既にタックスヘイブン税制もありますね。しかし、必ずしも税務のみでは無く、Singapore等にRegional Headquarterを作り分権経営を進めるというのもあります。あるいは中国に外商合資企業を作る場合、香港やケイマンに会社を作ってこれを合弁にして、中国子会社はその合弁会社の100%子会社とする形態もあります。一種の中間持株会社を作ってそこ経由100%子会社とするわけですね。こうすると既存株主間の持株変動や新規株主は中間持株会社の調整ができて簡単です。中国は許認可主義ですから、中国内の会社の持分譲渡等は、最短で23ヶ月かかりますからね。

b. 現地での優遇税制等が受けられる形態になっているか?<o:p></o:p>

 

(2) 現地税制:

a. 出資と融資の比率(過少資本問題)やその得失を検討したか?

b. 創業当初の損失想定額と期間及び繰越欠損金の期限を検討したか?

c. 適用可能な現地優遇税制は何か(中国等の様に、省・市レベルも検討必要)?

d. 親子間の取引があるときの移転価格の問題が生じる可能性の検討をしたか?<o:p></o:p>

 

 配当を受け取る場合:

a. 現地法人の日本親会社への配当をどのように考えるのか?

- 合弁の場合にはDividend PolicyLegal Reserve後のDividend Payout Ratio等取りきめ)についても合弁契約に記載する例も多い。将来の設備投資の為に留保するというのも一つの考え。

b. 平成21 年度税制改正にて、外国子会社の利益の日本国内への資金還流を促進する観点より、従来の間接外国税額控除による二重課税排除の方式に代えて、外国子会社配当益金不算入制度が導入されました。日本親会社が外国子会社から受ける配当は、その配当(源泉税控除前)の95%が益金不算入とされますが、この益金不算入制度の適用対象となる配当に係る現地の源泉税については、日本の直接外国税額控除の対象外となり、損金にも算入されないので、親子の合算で税額・税率を減らすことを検討する。<o:p></o:p>

 

 企業買収を行う場合:

a. 日本の親会社が株式・持分を取得するか、中間持株会社を第三国に作って(又は既存の第三国子会社経由)買収するか?

b.  現地に会社を設立して、その会社に資産買収を行わせるか、あるいは株式・持分を取得させるか(逆三角合併とか将来の三角合併とか)?

c.  税務上償却できない資産があるか?ある場合は、どんな圧縮方法があるか?

d. 被買収会社に繰越欠損金があるか、ある場合は、それを節税に利用出来るか?<o:p></o:p>

 

 融資・保証を行う場合:

a. 融資・資本の得失を十分検討したか?

b. 現地で過少資本の問題は生じないか?

c.  現地銀行からの借り入れに際し、親会社が保証を行い差入保証料を徴収する場合、この保証料は現地法人側で損金算入できるか?

d. 金利率・保証料(率)は、税法上の問題を起こさないレベルか?<o:p></o:p>

 

 事業から撤退(清算・売却)の場合:

a. 清算・売却に伴い、相手国で課税されないか?

b. 残余財産分配を株主にできるか?(中国では、残余財産分配金を株主へ海外送金する送金許可を下ろしませんね)

これぐらいでしょうか?<o:p></o:p>

 

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会社法の社債の定義とユーロ円建社債等

2012-12-23 12:57:44 | 企業投資

 

 社債とは、「通常は、公衆に対する起債によって生じた会社に対する多数に分割された債権であって、それについて通常有価証券(社債券)が発行されるもの」と講学上言われています。通常ですから、これで良いんじゃ無いでしょうか。ところが法学者というのは、すぐに定義に拘りたがります。そして、定義に該当すれば会社法第四編の社債の規定を適用して、社債管理者の設置義務とか社債権者集会がどうだこうだと議論・解釈します。ということで、商法では定義がなかったのですが、会社法の立法担当者は、223号で、「この法律の規定により会社が行う割当てにより発生する当該会社を債務者とする金銭債権であって、676条各号に掲げる事項についての定めに従い償還されるものをいう」という、苦し紛れの意味不明の定義をしました。つまり、社債とは「676条各号に掲げる事項」=社債の内容として決めた事項が社債であると言ったわけですね。ということで、またまた学者が、これはおかしいと言っています。<o:p></o:p>

 

 金融というのは、変幻自在ですね。定義を決めてもそれに当てはまらないものを作り出します。CPは、もともと米国では、Certificate of Depositが流通証券となり、資金調達に利用されたが、日本では手形形式で導入されたと理解しています。それが進化して電子CPとなった。また、貸出債権も、債権譲渡特例法等を使えば振替社債と似たようなものになった。いずれも多額かつ同一内容の分割された金銭債務を多数の者に負担するという点では社債に似ていますね。金融というのは、自由な動きが好きですから、規制のない市場、税金を払わない工夫が出来るように動きます。ですから東京の金融市場はこの20年ずっと地盤沈下です。<o:p></o:p>

 

 大企業などは、金融技術と世界的ネットワークのある証券会社と組んで、ユーロ円建転換社債型新株予約権付社債(=ユーロ円建CB)等を発行します。準拠法は英国法です。立法担当者は、「外国法に準拠して発行される債券」は、223号に該当しないと解説しています。この解説に対しても学者は、従来の学説と全く異なるとか言っていろいろ言ってますね。まあこの分野は実務が先行する分野だと思います。ただ英国法と言っても、日本企業の発行ですから、社債の内容=募集社債に関する事項(Terms and Conditions of theBonds)は、会社法の規定にそうように記載した方が分かりやすいですね。社債権者は、例外を除き、所詮事前に段取りをつけた日本の金融機関等の機関投資家ですからね。<o:p></o:p>

 

 

 昭和電工が2009(H21).9.29の取締役会で決めてプレスリリースした社債は、ハイブリッドファイナンスと称して、2014年満期ユーロ円建転換社債型新株予約権付社債(劣後特約付)=ユーロ円CBの発行及び当社海外特別目的子会社によるユーロ円建交換権付永久優先出資証券の発行」を行っています。昭和電工が普通株式22,000円で100%子会社をCaymanに設立して、ユーロ円建CB240億円をそのCayman会社に割当発行すると同時に、Cayman会社が、みずほコーポレート銀行等に240億円の優先出資証券を割当発行して引き受けてもらうというスキームです。特別目的子会社で100%子会社ですね。法135条では子会社は、親会社株式を取得してはならないと定めていますが、CBなら良いのでしょうか??よく分かりません。実質全てコントロールしている100%子会社が、優先出資証券を発行します。もうここまでやられると日本の会社法は出る幕がありませんね。<o:p></o:p>

 

 

 昭和電工のCayman法人は100%子会社ですから、外国子会社合算税制(タックス・対策税制)に該当しますね。合算課税が課される外国関係会社は、日本企業(居住者および内国法人)によって発行済株式等の50%超を直接・間接に保有されており、その特定外国子会社等の発行済株式等の10%以上の株式等を直接・間接に保有する内国法人(&同族株主グループ)ですから、このCayman法人に該当します。まあ、昭和電工の場合Cayman法人は、コストセンターのVehicleとして設立したので、タックス・ヘイブン税制は考慮に入れなくて良かったのかもしれません。この税制回避の為に、第三国の第三者に契約で完全に経営支配できるダミー会社を作ってもらって、そこにEB (Exchangable Bond。以下にてその会社が取得する株式と交換する他社株転換社債)を発行させ、日本の会社が保有する株式をダミー会社に割当発行あるいは既存株主から取得させて、そのダミー会社がEBを日本の投資家に割当発行(追って、一定の算式で計算した転換率等で、条件が整ったときに転換)する方法もあります。実務は、日本の学者先生がキャッチアップ出来ない程のスピードで進んでいると言うことでしょうか。

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未上場企業の買収価格・株式の公正価格

2012-01-21 23:58:15 | 企業投資

 

○  M&A等では、企業の買収価格算出のため、企業価値を算出します。そこでは企業価値=負債資本+株主資本と考え、企業価値から有利子負債を控除したものが株式価値として、株式100%買収のときは、この算出された株式価値を基に買収の対価の交渉をしますね。

 企業価値あるいは株式価値算出には種々の方法があります。大きく分ければ、①資産価値に重きを置くStock重視の方法(時価ベース純資産等)、②フローの利益を重視する方法(EBITDAMultiple等や数字遊びのDCF法)、③上場企業の株式と比準する方法(類似業種・会社比準方式・企業比較法)、④その他の方法―①~③を組み合わせる方法(純資産+のれん方式、PER等を使用する方法等)や、配当還元などの方法ですね。<o:p></o:p>

 

○  私は、以下の点について、少し一般的な考え方と違う考えをしております。

A:企業価値と買収価格、あるいは株式の公正株価とは、混同せずに明確に分けるべきである。

B:未上場企業の株式に果たして公正価格はあるのか?<o:p></o:p>

 

 A: 私のブログでは、以前から「企業価値=付加価値額=社会への貢献度」と主張しています。付加価値額の計算式には、いろいろな方式(日銀方式、財務省方式、経産省方式等)がありますが、「人件費」や「役員報酬+従業員給与手当」が入っています。即ち、企業の価値は、株主では無く、役職員の汗と努力と情熱から生まれるからと考えるからです。付加価値額が企業価値です。

 

もし、付加価値額から買収価格を算出するなら、付加価値額のMultipleとか、今年を含む+/-2年(今年を含む3年ぐらいの角度の高い確かな事業計画での付加価値額。)の即ち5年間(過年度2年を含む)の付加価値額の合計とすれば良いと思います。<o:p></o:p>

 

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 B:上場企業の株式には、相場があります。企業業績のみならず、世界経済・社会環境・将来性・金融状況等あらゆる要素が株価に凝縮されます。それはそれとして一つの目安ですし、株式を購入使用とすると、その株価になります。TOBの場合は、背景事情(売却を持ちかけたとか、どうしても欲しいとか)が影響しますが、通常はプレミアムが付きますが、一定期間等の株価を基準にします。

しかし、未上場企業の株価はどのように決まるのでしょうか?公正な株価はあるのでしょうか?私は、無いと考えています。勿論評価の方式はいろいろありますし、相続等が発生したときは一定の株価を算出しないわけには行きません。<o:p></o:p>

 

株式評価の専門家という人に算出してもらうこともありますね。まあ、買主側から頼まれれば安い株価を算出します。如何にも公正に株価の算出をしたようなレポートを作って行います。売主側の立場に立てば逆ですね。まあ仮に10億円ぐらいとすると、買主側は5億円、売主側は15億円ぐらいと算出されても高い方の20億円を提示ということもM&Aの世界ではあります。でも100億円ということはありません。オリンパスのケースは別としてですね。まあ、買収・売却価格が数倍の差があるときは、話しがまとまりませんね。

買収価格は力関係と背後事情で決まります。結構大きな影響を持つのが、一番最初にどちらから持ちかけたかということです。経験から言うと、買主側が7.5億円、売主側が15億円というような、2倍の差のときでも、事情にもよりますが、交渉の末まとまる事もあります。結局、「公正な価格とは、当事者がぎりぎりの交渉を行って妥結した価格」ということですね。「公正な価格」を算出しましたという人もいますが、まあ嘘ですね。<o:p></o:p>

 

 

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DCF法の企業価値算出は誤り

2011-11-07 01:13:27 | 企業投資

 

 DCF法による企業価値算出は、企業が生み出す毎年の将来収益のうちのフリーキャッシュフロー(FCF)部分を割引率で現在価値にして、その総和で計算しますね。但し、この計算をずっと続ける訳にもいきませんので、6年目以降とか、8年目以降は、一定のFCFが永久に続くという前提(perpetual base)をおいてTV=Terminal Valueを計算して、それを現在価値にします。TVは、等比級数の公式で簡単に計算できますね。

 

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 米国で発達してビジネススクールのCorporate Financeで教えていますので、日本人でもMBAの取得者等は、この計算遊びの手法が、企業価値算出の方法としては正しいと信じ込んで、いろいろな機会で紹介したり、本まで出しています。高等数学を使った金融工学が米国で発達しました、そのなれの果てが100年に一度のリーマンショックですね。相変わらず米国かぶれの人が、政府の審議会での委員等になっています。別に委員になっても良いのですが、「異見」を持つ人、欧州の社会的市場経済の知識・経験を持った人など取り混ぜないと偏った意見になってしまいますね。

 

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 DCFでは、WACCで割引率を算出します。これが誤った考え方であることは、200812日のブログで述べています。ということで、今回は、それ以外について「けち」をつけてみましょう。

 

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 「企業価値(事業価値)=有利子負債+株式価値」とされています。

・非事業用資産があれば、それを企業価値に加えたものが会社総価値。

・また、有利子負債はネット、即ち現預金を引きますね。

企業買収の際に、買収側は、上記の株式価値に基づき株式を取得すると考えるわけですね。株式価値を株主の価値とする訳です。また、負債の肩代わり即ち金融機関の貸付債権を、買収側が債権譲受して親子ローンにする場合等もあります。

 

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○ TV計算の誤り

 例えば5年間の事業計画を策定して、そのFCFを現在価値にしますね。6年以降はTV=Terminal Valueとして、永久成長率を0%とか、自分の気に入る数字が出てこない場合には、この数字を1%成長とかにして数字遊びをします。この場合は、5年間の事業計画をまじめに作っても意味ないですね。この5年間のFCFの額にもよりますが、この部分が企業価値に占める割合は3割あるいは多くて4割、即ちTVの占める割合は6~7割です。このTVの前提は何でしょうか?企業が永久にFCFを生む。即ち、企業は永久に続くという前提です。勿論 割引率により企業価値の中で20年後30年後に占める割合は少ないですけれどもあなたの企業は永久に継続しますか?こんなありもしないことを前提におくこと自体が根本的に誤っているのです。<o:p></o:p>

 

○ 株式価値の誤り

 企業価値には、取引先や従業員といったステークホルダーの価値も含まれているという主張があります。私もそう思います。しかし、これらのステークホルダーには、PLを見れば、原価計算や販売管理費を支払った後のEBITDA等をベースにFCFを計算しているので、こういった主張はナンセンスであるという人がいます。株式価値は株主だけの価値だという主張です。しかし収益は、負債と株主資本を利用して生みます。企業価値の生みの親は負債+純資産ですね。というと「企業価値-有利子負債=株式価値=買収価格」という考え方はおかしくありませんか?。BSの負債を見ると、有利子負債の他に、「支払手形・買掛金・前受金。債務性引当金、退職給付債務、長期未払金等」があります。まあ株主資本は株主の資本と言っても良いかもしれません(私は、BSの「株主資本」という言葉も間違っていると考えていますが、それはまた別途)。しかし、買掛金や退職給付債務が株主の株式価値の一部を構成している合理的な説明を私は聞いたことがありません。私でも分かるように説明してほしいですね。<o:p></o:p>

 

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○ DCF法による企業価値というのは、「これからこれだけ儲けます」。「今後これだけのFCFを生み出す力があります」と、「数字を使ってあたかもそうなるような振りをしてごまかす方法です」。事業が計画・予想通りになる等と考えること自体、空理空論です。こんな馬鹿な考え方がありますか?<o:p></o:p>

 

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企業価値の計算方法には、種々の計算方法がありますが、収益・利益を基本とする方法では、今年度や過去2-3年の実績、今後23年の確実な収益予想に基づくものでなければいけません。企業の価値は現在(今年度+/-2-3年)の社会への貢献度、即ち付加価値額ですね。一年だけの付加価値額では、買収額は当然算出来ません。買収額算出の場合は、この付加価値額のMultipleで行うのが良いと私は考えています。<o:p></o:p>

 

 

 

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のれん=非償却資産の理由は不明

2010-06-06 18:28:06 | 企業投資

○ 国際会計基準や米国会計基準では、のれんは償却資産ではありませんね、ところが、日本の会計基準では、現在のところ最大20年の償却資産ですね。

       米国では、2001年に財務会計基準書(SFAS)第142号「のれんその他の無形資産」で、減損テストは行ないますが、のれんの規則的な償却を認めない旨を公表しました。それまでは40年以内に規則的に償却しなければならないと定めていました。これを受けてのれんの規則的償却を定めていた国際会計基準(IAS)第22号「企業結合会計」に代えて,国際財務報告基準書(IFRS)第3号「企業結合」を2003年に公表して,のれんの規則的償却を認めなくなりました。国際会計基準も米国会計基準でも償却資産だったのですね。

○ なぜ非償却資産としたのでしょうか?その理由がはっきりしません。理由としては、①償却期間に合理性が無く、恣意的に設定できる。②のれんの価値は減らないから。③価値が下がれば減損処理すればよいからということが書いていました。①については、合理的に考えて一定期間、例えば10年とすると社内の連結会計規則で決めて開示すれば良い事ですが、どうもその辺の開示はきちんと行われていないようですね。社内で10年と決めておきながら、大型の買収をしたある会社が、この件だけは20年とか恣意的なことをするからいけないのです。②については、自家創設のれんはのれんとして計上しませんから、例えば他社から買収等したのれんは、ほっとおけば当然価値は減ります。また、上記の考え方は②と③が矛盾します。価値は減らない、でも価値が減ったら減損すれば良いという考え方というのはおかしな考え方ですね。納得性の無い・合理的な根拠のない考え方ですね。

○ 米国では、2000年前後ITバブルでM&Aが盛んでしたから、買収企業は莫大なのれん代を計上しましたね。見かけの利益を増やすには、償却資産が少ないほうがいい訳ですから、業績をよく見せかけよう、株価をアップさせようなどという不純動機が、裏であったのではと勘ぐりたくなりますね。

       どうして、価値が減らないのですか?コカコーラとかマクドナルドというブランドは一流ののれんですね。しかし、その価値の維持のために多額の広告宣伝費・販売促進費を使います。これらの費用によりブランドが維持されているのです。ほっとけばブランドは、急激に廃れて価値が落ちます。コカコーラが、10年も広告宣伝をしなければ、街の自動販売機を見て「まだあるんだ」とか「もう消えたと思ってた!」となりませんか。

○ 即ち、多額の費用を使って価値を維持・増進する。でもその部分は自家創設のれんの部分ですね。取得した部分は、右下がりで価値が減価していきます。もし価値が一定なら、取得部分は減価していき、自家創設部分がその分増えるから、結果として価値が維持されている。しかし、自家創設のれん部分は計上しませんから、取得したのれんは価値が減少します。なのにどうして非償却資産とするのででしょう?⇒私は、非償却資産とする合理的説明をしている資料や論文を見たことがありません。(根拠を詳説した論文などをご存じの人はご教示お願いします)

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のれん=超過収益力は間違い

2010-06-05 21:52:59 | 企業投資

  今回は「のれん」の話です。そもそも「のれん」とは何かですが、いろいろな角度から、まとまりの無い見解があるようですね。企業結合会計の形式的な基準としては時価ベース純資産との差額ですね。②のれんとは「超過収益力」であるという人がいます。「のれん」は将来キャッシュフローへの期待に対して支払った金額で、特定のものを資産計上したものではないという考え方もあります。更にのれんとは買収時に承継した特定の「なにか」を資産計上したものであるという考えもあります。「なにか?」とは「なんやねん」と言いたいですね。上記の中で、もっとも一般的な考えは、「のれんとは超過収益力である」ですね。そう考えている人が多いですね。財務会計の教科書にもそういった事が書いていると思います。結論を先に言いますと、この考え方は誤りです。

○ 上記①の会計上の考え方では、例えば買収価額のうち、対象会社の時価ベース純資産との差額ですから、PBRPrice Book-Value Ratio:株価純資産倍率=厳密には1株当たりの株主資本ですが、ここでは時価ベース純資産の何倍で株式を取得したかという意味)が1を超える価格で企業買収すれば、正ののれん、1未満なら負ののれんとなります。超過収益力とか平均利益金額とは関係がありません。

○ ②のれんとは超過収益力であると一般的には考えられています。税務の考え方もこれですね。相続税財産評価基本通達の165営業権の評価で、超過利益金額とか平均利益金額とか言っていますね。また、最高裁判所の判例でも、「営業権とは、当該企業の長年にわたる伝統と社会的信用、立地条件、特殊な製造技術及び特殊の取引関係の存在並びにそれらの独占性等を総合した、他の企業を上回る企業収益を獲得することができる無形の財産的価値を有する事実関係」としています。

       ③の考え方は良くわかりません。将来キャッシュフローの現在価値がのれんということでしょうけどね。のれんに基づく将来のキャッシュフローを維持するには、常に広告宣伝費等を投じて、ブランド維持をしないといけませんが、これは自家創設のれんですね。今の会計では自家創設のれんは認識しませんね。この点は次回にでも触れましょう。

       買収・合併等のM&Aが行われるとのれんが計上されますね。M&Aの対象企業っていうのは、平均利益を上回る超過利益を出している優良企業が対象になるのでしょうか?そんなことは無いですよね。他の企業と比べて業績がいまいちだけど、買収企業の資源と組み合わせて相互補完・相乗効果を発揮すれば、業績も向上すると考えてM&Aを行う訳ですね。即ちM&Aの対象企業は、超過収益力等無い企業が多いのです。しかしのれんが計上されますね。こういったM&A対象企業を調べて、実証してのれんとは超過収益力であると言っている方がいますか。そうでは無いですね。それなのにどうして「のれん」とは超過収益力ですと言うのでしょうか?

       では「のれん」とは何でしょうか。これは私の定義です。「人により、物(技術込み)・金・情報(知恵)等を有機的一体として継続的に機能させ、一定の取引分野で継続的顧客等を有する収益基盤である」とまあ、分かったような、分からないような定義をしておきましょう。のれんを維持するのは人です。人が良質な商品・サービスを提供し、約束(取引条件)を守り、継続的な信用・信頼関係を維持し増進します。人の地道な努力によりのれんが蓄積します。企業を買収しても重要な人が急減・去っていったら、のれんも減損しますね。のれんとは人が、従来の基盤をもとに、物・金・情報等を利用して維持・発展させるものです。

       BSを見て下さい。資産マイナス負債は純資産ですが、純資産の構成要素は物・金・知恵=知的財産等ですね。仮にPBR2(純資産の2倍の価格)が買収価額としましょう。この場合のれんの金額も純資産と同じですね。この「のれん」とは何でしょうか。それは、人の活動から生まれた収益基盤を評価した価値です。こういう基盤あるいは人の価値を見ることが重要な事であり、これが「のれん」なのです。

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国境を超える株式交換・移転

2010-02-21 22:56:59 | 企業投資

  株式交換とは既存の会社が完全親会社になる手続きであり、株式移転は完全親会社になる会社を新たに設立する手続きですね。Share Exchangeですね。海外ではこういった手法は、国境を越えて頻繁に利用されていますので、今回はその話ですね。既存の会社との株式交換は、既存の会社が事業会社のケースが多いかもしれませんが、株式移転のケースは持株会社を設立するケースが多いでしょうね。即ち、持株会社を海外に作るということですね。

  具体的には、例えば、中国国内に100%子会社を有し、その会社で事業を行っているが、この会社に出資・株式取得を検討する第三者に持分や株式を譲渡する場合、中国の会社の場合は、管理監督機関に種々の書類(株式譲渡契約・申請書・各種議事録等等)を提出して許認可を取得しないといけませんし、結構手間ですね。ですから、これを避けるため、中国の100%子会社を直接保有するのではなく、香港、ケイマン、バミューダ、BVI(British Virgin Island)等に持株会社を設立しておいて、その会社に中国国内の子会社を保有させておいて、これらの持株会社の株式を新株主等に譲渡することが考えられますね。(これらの国は、いずれも租税回避地ですので日本のタックスヘイブン税制上は要注意ですね)。

  他にも例えば、香港証券取引所に上場できる企業は、中国、香港、バミューダ、ケイマンの会社ですね。ですから、本社香港で、実際の事業は中国で種々会社を持って行っている会社が、香港・あるいは米国NASDAQ等への上場を考える場合に株式移転して持株会社を設立し、その持株会社を上場させますね。バミューダの会社を持株会社にする場合は、税法上の理由で、もうひとつ中間持株会をBVIに作る例が多いですね。

即ち、持株会社(Investment Holding Company)の階層ができる訳です。

Bermuda法人(これを上場させる)→BVI→傘下香港・中国企業

となるわけですね。上場が射程距離になってきたら、BVIに親会社を作っておいて、その傘下に香港・中国企業群を置くわけですね。そしてIPO直前に株式移転でBermuda法人を作り、IPOBermuda法人で行わせ、Bermuda法人を上場会社にするわけですね。

  この辺のアレンジは、香港にはインフラが全部整っています。証券会社も慣れたものですし、法律事務所も大手なら手慣れたものです。銀行も、HSBC等がアレンジの手伝いをしてくれますからね。Bank of Bermudaとかも香港には支店がありますね。

  中国に事業拠点をお持ちの会社も、単純に日本の親会社の子会社にするのでは無く、一工夫されてはいかがでしょうか。(でも、この場合国際税務戦略がなかなかたいへんですけどね)

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中外合弁企業法の董事会は実質出資者総会?

2009-12-23 21:24:17 | 企業投資

       中国政府の4兆元(52兆円)の景気浮揚策で今年も8%成長が見込まれている中国ですね。日本が元気だった30-40年前を思い出させる雰囲気がありますね。益々中国が注目されています。従来は、中国リスク低減のため100%外資で中国に進出し、輸出を主としていた日本(外国)企業も、今後は中国マーケットを対象として、中国の内資企業と合弁会社を設立して進出する方式が増えそうですね。と言うわけで、今回は、中外合弁企業法という、少し変わった特色のある法律について考えてみましょう。

       中国内資企業との合弁企業設立の際には、中外合弁経営企業法が適用されますね。外国側投資企業(個人でも可能。中国側は個人は出資者になれない)は持分の25%以上出資しないといけません。登録資本の持分割合に基づいて、リスクとリターンを負担・享受します。合弁契約書と定款を作成して、関係機関の許可を取得しないと設立できませんし、また出資も出来ないですね。会社が出来ても営業許可取得までに時間がかかる場合もあります。日本でも同じですが、外貨・人民元の銀行口座開設、税務当局への届出、労働局への雇用手続等に加えて、当然、電気・水道・ガス・通信等の手続が要ります。最近は、コンサルティング会社も多いですから、慣れないことは任せた方が良いですね。

       中外合弁企業の最大の特徴は董事会が、会社の意思を決定する最高機関という事ですね。普通は董事会を取締役会と訳しますので、この訳は誤解を招きますね。株主総会とか出資者総会があって、そこが最終の意思決定機関と思いがちですが、違いますね。

董事は3人以上で、任期は4年各出資者が持分比率に応じて指名しますが、別に持分比率に応じて決める義務はありませんね。董事長が、会社を代表します。董事会は少なくとも年1会開催ですから、言って見れば株主(出資者)総会みたいなモノですね。でも資本多数決ではありません。董事会の定足数は2/3以上ですから、3人の場合は2人以上の董事の出席が必要(委任状も可)ですね。開催場所は、本店所在地で行う事になっています。

       董事会の権限は、経営計画、予算案、生産計画、人員計画の作成、決算・配当の承認、並びに実務執行者である、総経理、副総経理、総会計士(CFO)、監査役(審計師)等の任免ですね。①定款変更、②営業廃止・解散、③登録資本の減増資、④合併については、董事全員の承認が必要ですね。

       上で、別に持分比率に沿って董事を指名しなくても良いと言いましたし、出資者総会もありません。これとの関連で面白い問題があります。簡単な例でいうと、持分比率61%の会社が1名董事を指名して、39%の会社が董事を2名、董事会のメンバ合計3名のときに、どちらの会社の連結対象になるのでしょうか?この答えがわかった人は教えて下さい。尚、参考までに、連結子会社の定義は以下ですね。

○ 金融商品取引法の財務諸表規則の子会社の定義(842)

 他の会社等の議決権の40/100以上、50/100以下を自己の計算において所有している会社等であつて、かつ、次に掲げるいずれかの要件に該当する会社等

ロ 役員若しくは使用人である者、又はこれらであつた者で自己が他の会社等の財務及び営業又は事業の方針の決定に関して影響を与えることができる者が、当該他の会社等の取締役会その他これに準ずる機関の構成員の過半数を占めていること。

まあ、あんまり関係ないかも知れませんが、連結財務諸表原則第三一般基準の記載は以下ですね。

(2) 他の会社に対する議決権の所有割合が百分の五十以下であっても、高い比率の議決権を有しており、かつ、当該会社の意思決定機関を支配している一定の事実が認められる場合」(注解5)(3)役員若しくは従業員である者又はこれらであった者が、取締役会の構成員の過半数を継続して占めている場合

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有価証券減損処理の恣意性

2009-03-29 00:56:55 | 企業投資

     3月決算期が近づいています。有価証券を保有している会社は、決算時の会計処理として保有目的毎の有価証券について、①評価基準に基づく評価差額の処理と②減損処理(売買目的有価証券は①だけ)の2つをどうするか悩むところですね。今回は、有価証券とりわけ株式の減損処理について、自分の勉強のために整理し、併せてその恣意性についても述べて見たいと思います。以下の赤字の部分が、判断といいますか恣意性が入る部分ですね。

時価のある有価証券(日本基準)

売買目的有価証券以外の時価のある有価証券については、①時価が著しく下落し、②回復する見込があると認められる場合を除き、時価をもって評価し評価差額を当期の損失として損益計算書に計上することになっていますね。

     時価の著しい下落50%以上の下落の場合が著しい下落とされていますが、30-50%の下落の場合(=税務上の損金にはならない)でも、会社で基準を作り、これに該当する場合は「著しい下落」ですね。

     回復する見込:(株式の場合)下落が一時的であり、約一年以内に時価が簿価に近い水準まで回復する見込があることを合理的な根拠をもって予測できること。

     まず時価とは、公正な評価額であり、市場(独立当事者間)の取引価格、気配値その他の相場(=市場価格)に基づく価額ですね。市場価格がない場合には、経営者の合理的な見積りに基づく合理的に算定された価額を公正な評価額としますね。

尚、合理的な算定とは、公表されている類似金融資産の市場価格に、利子率・満期日・信用リスク・その他の変動要因を調整する方法、将来キャッシュ・フローの割引現在価値(DCF)を算定する方法、一般に認知されている理論値モデル等を使用する方法であり、合理的見積が困難な場合には、対象金融資産について上の方法に基づき算定された第三者評価の価額を合理的に算定された価額とすることができるとしています。

時価のない有価証券(日本基準)

株式について、当該株式の発行会社の財政状態の悪化により実質価額(一株当たりの純資産額)が著しく低下したときは、相当の減額をなし、当期の損失としなければならないこととなっています。また、市場価格のない株式の実質価額が「著しく低下」とは、株式の実質価額が取得価額に比べて50%程度以上低下した場合をいいますね。尚、子会社・関連会社の場合で、中長期の事業計画を入手し、それにより回復可能性がきちんとした証拠により裏付けられるのであれば、減損処理を行わないことも認められています。時価のない有価証券の場合は、上記②の「回復する見込みのある場合を除き」という条件がありません。

減損処理(米国基準)

米国会計基準ではどのように規定しているのでしょうか。日本でも金融庁の承認を得て、財務諸表を米国会計基準で作成・開示している会社がありますね。

Statement on Auditing Standards (監査基準書)SAS No.92 Applicability 47 Impairment Lossesには以下の様に規定しています。

Regardless of the valuation method used, generally accepted accounting principals might require recognizing in earnings an impairment loss for a decline that is other than temporary.

米国では、日本のように50%等と言う定量基準がありません。日本で米国基準を採用している会社は大企業ですから、日本基準を参照して社内基準を定めているのが一般的ですね。しかし、評価額を米国で一般的なDCF方式で算出している例があります。

日本の税法基準

日本の税務上減損が損金処理できるかどうか、どうなっているのでしょう?法人税基本通達第9章その他の損金第3款に有価証券の評価損の規定があります。

9-1-7 (上場有価証券) 「有価証券の価額が著しく低下したこと」とは、当該有価証券の当該事業年度終了の時における価額がその時の帳簿価額のおおむね50%相当額を下回ることとなり、かつ、近い将来その価額の回復が見込まれないことをいうものとする。

9-1-9(上場有価証券等以外)民事再生手続開始決定等の事実が発生したことの他に、当該事業年度終了の日における当該有価証券の発行法人の1株又は1口当たりの純資産価額が当該有価証券を取得した時の当該発行法人の1株又は1口当たりの純資産価額に比しておおむね50%以上下回ることとなったこと。

減損処理の恣意性

減損処理は、どのように恣意的に行われるのでしょうか?

     投資先が少数で、グループ経営部等が一括管理し、統一した基準を継続的に適用する場合は、それ程の恣意は入らないと思います。しかし、多くの投資先をもっている会社は、主管部を定めて投資先を管理します。減損処理が妥当だと思っても、その部の今期業績が低迷しておれば、まだ減損処理は必要ない等と勝手に理由をつけて先送りされます。当該出資の価額が低下しただけで判断される訳ではありません。別の意図が働きます。

・ 「回復する見込があることを合理的な根拠をもって予測」等という事は、実際無理でしょうね。「回復する見込み」というのは判断です。判断の背後に事情があります。その事情は隠されて、表面上はいろいろ理屈をつけて回復するとか言います。昨年なら、景気も上向き、今後も業績好調と見られていました。でも今は一寸先は闇とも言えますし、昨今の状況は一寸先は奈落の底ということも出来ます。

     将来キャッシュ・フローの割引現在価値」=DCF法ですね。DCF等という計算は、前提の置き方で、いろんな金額を算出出来ます。もっとも意図的・恣意的に、減損額を操作出来る方法ですね。最初に、結論の減損額を思い描き、それに合うように数字を作るわけですね。

・ 「中長期の事業計画」ですから、例外を除いて右肩上がりの数字を作ります。事業計画を作った人なら分かると思いますが、そのように事業がうまくいくわけではありませんね。

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政府系ファンド-Singapore & 台湾

2008-07-03 01:14:13 | 企業投資

     政府系ファンドの設立を、日本でも自民党が検討している様ですね。ということで時々世界の政府系ファンド・投資会社が新聞にも名前が載るようになっています。私は、中東や北欧のファンドについては知りませんので、少し知っているSingapore政府の投資会社=Temasek Holdings (Private) Limited Government of Singapore Investment Corp.(GIC), 及び台湾の国民党の党営事業としての投資会社のことについて、雑談をしてみましょう。

○ Singaporeには、政府系投資会社が2社あります。TemasekGICですね。Temasekは、Singapore国民の年金運用機関ですし、GIC`は稼いだ外貨の運用機関ですね。

-          “Temasek”というのは、現地語で「海に囲まれたところ」という意味で、Singaporeのことです。つまり日本のことを大和(or倭)と言いましたが、そんな感じの言葉ですね。即ち、Temasek Holdings = Singapore Holdingsということです。持株会社としてのシンガポール株式会社ということになります。基本は、国民の年金資産の確実な運用とシンガポールの産業育成、富国の為の投資・運用機関で、今でもシンガポールの政府系企業(Singapore Airline等)の持株会社として株式を大量保有しています。しかし、押し寄せるお金を使って、海外でもいろいろ投資・運用しています。

-          Singaporeは、Malaysiaの1州でしたが、Malaysia政府が、言うことを聞かない、また民族が違う(ラフに言えば、Malaysiaでは、Malay:華人=7:3ぐらい、Singaporeは、華人:Malay:インド系=7:2:1)ので、1965年に見捨てたというか、追い出したという感じで国が出来た訳ですね。確か、独立記念日は89日だったと思います。Lee Kuan Yew氏の強力な指導の下、人民行動党 (PAP = People’s Action Party = Singaporeの庶民は、Pay And Payと呼んでいますけど)の強力な独裁政党の指導のもと、国を発展させるVehicleとして機能しています。彼らのAsset Allocationの一部にPrivate Equity投資もあり、欧米・アジア各国のPartnerと組んで投資をしています。(実は私はそこで働いていたのです)

 

-          GICは、外貨の運用機関ですね。押し寄せるお金で、投資先を探さないといけないので大変です。覚えていることは、19976月頃、どーんとタイの不動産にUS$50m投資しました、その翌月、タイからアジア通貨危機が発生しました。Thai Bahtsは、TB25-26 = 1US$から、981月にはTB54=1US$になりました。半値以下ですね。大失敗投資ですね。

-          TemasekGICか忘れましたが、タイで以前タクシン政権(=タクシン・シナワトラ財閥の総帥)が、外資規制がかかっていた携帯通信会社の株式を、国会で外資規制をはずし、その法律の効力発生直後に、Temasek/GIC`に売却して、タクシン氏ががっぽりもうけた事がありました。当然Singapore政府は、百も承知していたのではないでしょうか。こういうのは、政府系ファンドが行うとは、ちょっと如何なものでしょうかね。

-          まあ、投資会社の人ですから、多少の投資理論、財務の知識がありますが、事業をやったことが無いので、Finance structure等は考えられますが、基本的には、とらぬタヌキ計算の世界です。額に汗して、こつこつの特にメーカの苦労等わからない、金・金の世界の人ですね。政府系だから、若造のくせに尊大な人もいましたね。自分たちは、schemeを工夫して、Middle Risk High Returnを狙うのだとか。まあ、そんな都合の良い投資は無いですね。ある投資候補先の中国企業の人は、Temasekの投資だけは受けたくないと言っていましたね。

     少し台湾にも触れましょう。国民党の党営事業として、台湾の産業発展の為に、国民党は多くの投資会社を持っていました。発足当初は、各産業毎に投資会社を持っていました。中央投資、光華投資、中華開発等十社以上あったと思います。しかし、投資先の台湾企業が、事業を多角化させ、コントロールが利かなくなったので、投資分野の規制は止めて、統合が進みました。中小企業から出発した企業社会ですが、国の重点分野をはっきりさせ、強力に支援して、多くの優良企業ができました。また、必ずしも政府の支援も受けずに、大きな企業グループを形成しているところもありますね(Evergreenとか、Acerとか一杯あります)。

○ 日本政府のファンドは出来るんですかね。まあ、Asset Allocationと投資哲学・運用方針で、運用成績がかなり決まるのではないでしょうか。Private Equity`で言えば、長期の経済動向をつかむ事も非常に大事ですね。具体的には、不況のときに積極投資をして、好況時には、High Risk High Returnは避けることですね。

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エクイティ・デット・スワップの利用

2008-06-20 17:12:53 | 企業投資

     デット・エクイティ・スワップ(Debt Equity Swap=DES」)ではありません。エクイティ・デット・スワップ(Equity Debt Swap=”EDS”とする)ですね。即ち、債務の株式化ではなく、株式の債務化ですね。今度の会社法で出来るようになりました。では、どのような場合に利用できるのか考えて見ましょう。

○ EDSの前に、まずDESを見てみましょう。日本でも負債過多で業績が悪く金利返済に苦しんでいた企業の財務リストラで何件か実行されましたね。現物出資の規制に関する207で、検査役調査が不要の場合を規定した9項の第5に、以下のように規定しています。「現物出資財産が株式会社に対する金銭債権(弁済期が到来しているものに限る。)であって、当該金銭債権について定められた第199条1項3号の価額が当該金銭債権に係る負債の帳簿価額を超えない場合:当該金銭債権についての現物出資財産の価額」。つまり金銭債権を券面額以下で出資する場合には調査不要としているが、弁済期が到来しているものに限るという制約を課しています。券面額を越える場合は、検査役の調査がいるわけですね。

-         券面額を調査不要の場合の最大額にするというのは金銭債権評価の客観性という点ではわかりやすいですね。(立案担当者は、評価の適正性について問題が生じないからと言う言い方をされているようですが。適正性というのがいまいちよく分かりませんが)

-         また、弁済期の到来について、会社側で期限の利益を任意で放棄する事で、この要件を満たすことは可能であると、立案担当者は言っているようです(商事法務1741号26頁。相澤哲・豊田祐子「株式」に記載されているらしいです)。但し、期限の利益放棄について善管注意義務違反にならないか検討が必要との事です。これについて、学者の一部では規定が無意味になるとか(更に有利発行規制の存在・検査役調査の存在意義という根本問題にまで言及される人もいますが:東大藤田教授)という理由で、反対論もあるようですけれども、期限の利益の放棄は、一方で金利の節約、企業の差し迫った状況、タイミングの重要性等もあり、経営判断事項であり当事者がOKすれば、既存株主も助かりますから、別に認めても良いのではと思います(学者は会社がおかしくなっても責任取ってくれませんね)。

     では、次にEDSについてですね。会社法1071項では、発行済株式全部の内容として、①譲渡制限、②取得請求権付株式、③取得条項付株式として定めることが出来るとしています。そして2項では、その株式の内容を定款で定めなければならないとしています。

-          2項二号(取得請求権付株式)ロでは定款に規定する内容として、以下の規定があります。「イの株式一株を取得するのと引換えに当該株主に対して当該株式会社の社債(新株予約権付社債についてのものを除く。)を交付するときは、当該社債の種類(第六百八十一条第一号に規定する種類をいう。以下この編において同じ。)及び種類ごとの各社債の金額の合計額又はその算定方法」

-          ハでは新株予約権、ニではイとロの足し算である新株予約権付社債、ホでは、これら以外の財産、即ち他社株式・他社の社債・現金その他の財産(=財産ですから、金の延べ棒、ダイヤモンド、商品券、最近高騰しているガソリン券?でもいいかもね)、の場合に、その内容を定款で定めましょうと規定しています。

-          2項三号では、取得条項付株式について、上記と同じ定めをしています。

     それでは、どういった場合にこのEquity Debt Swap(EDS)が必要となるのでしょうか? DESが、負債過多の会社ですから、その逆ですね。即ち資本過多の会社ですね。

-利用の一例を挙げましょう。 銀行からの融資は担保などいろいろ条件が付きますし、また金利も高いです。ベンチャー企業等開業後2-3年は、銀行はお金を貸してくれません。キチンとしたファンドからしっかりEquityで資金を集めて、事業が軌道に乗るまで、Equityベースの財務構造を持ちましょう。事業が成長軌道に乗れば、運転資金等の短期借入は銀行からも借りられるようになります。そのときまだ過大資本の場合なら、資本の一部を社債の長期借入金にしましょう。IPOが射程距離になってきたら、ファンドは、この社債とEquityを組み合わせて、パッケージでVCに一部売却して出資金の回収をしましょう。持株比率を下げましょう。そうしないと上場しても株式は簡単に売れません。VCには、社債と株式を購入してもらうわけですね。社債がついてますからダウンサイドリスクを押さえて、株式で上値をねらえます。株価を少し高めに設定する事も可能かもしれません。こういった場合に、Equity Debt Swapが使えますね。

社債だけではなく、新株予約権とか新株予約権付社債等の利用も考えられますね。

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大量保有報告では開示情報の充実を

2008-01-29 23:47:10 | 企業投資

     株式の大量保有報告について、川崎市のテラメント(株)(H19.11.2設立)なる会社の虚偽報告が話題となっています。例えば、同社のソニー株取得の報告書を見てみましょう。

発行済株式 10億株の51% 511百万株を取得 単価 5210円 取得資金は、26648億円であり、その内訳として、自己資金 0円 全額借入金としています。

まあ、嘘八百とすぐにわかります。

     この大量保有報告書の様式を見て気になることがあります。それは提出者(大量保有者)の概要の情報が少なすぎることですね。個人の場合なら、住所、氏名、連絡先ぐらいで良いでしょう。それで誰か特定できますからね。しかし、法人の場合の情報があまりに不足しています。特にファンドの場合、誰が主な出資者なのか実質投資家なのか、重要な情報がありません。

開示情報は以下:法人の名称、住所、設立年月日、代表者氏名、代表者役職、事業内容、連絡先(担当者&電話番号)

     これだけども、一応それなりに名前の知れた日本の会社なら、どんな会社かわかります。WEBも普通は持っているでしょうから、まあWEB情報が真実正確かどうかはともかく、WEBをチェックすれば提出者(=大量保有者)の概要は分かります。特に問題は、外資系ファンドです。どこの誰かわかりません。

○ 例えば、ブルドック等でお騒がせのスティールパートナーズの保有報告を見てみましょう。2007/11/27提出 保有報告)

・表紙:氏名 弁護士 森 博樹 (渥美総合法律事務所)&その住所

・提出者:法人(その他リミテッド・パートナーシップ)

・名称:Liberty Square Asset Management, L.P. (&住所:Delaware)

・設立:H10.5.13

・代表者氏名;M.T.J.C.,Inc. (海外では個人ではなく会社も代表者になれる場合が多い)

・代表者役職:ジェネラル・パートナー(GP)

・事業内容:投資顧問業

     これだけの情報では、どこの馬の骨かわかりません。どうもスティールは、私募の特定少数の投資家の資金を運用しているようですが、誰がファンドのマネッジ・投資の意思決定をしているGPなのか、どれだけの資金規模のファンドか、ファンドの資金提供者は誰なのか不明です。

     スティールのリーダーというリヒテンシュタイン氏が、日本にきて「私は日本の経営者を教育する」等、横柄・傲慢・不遜な態度の会見をしたのが思い出されます。東京高裁が「企業価値、株主共同の利益を毀損する濫用的買収者」と認定しました。当然です。

     ファンドでも、カルパース(米国カリフォルニア州公務員年金基金)等ならまだ労働者の年金を長期的な視点で運用して、運用方針もしっかりしていますので、まあ外国の投資ファンドですが、外国の投資ファンドのお金も日本の資本市場に入ってこないと、株式市場も低迷(私の株式投資も長期低迷)しますので、仕方がない感じです。

     ともかく、ファンドの場合は、そのファンドの氏素性、誰が資金を出しているのか、実質投資家が誰なのか、そのファンドの概要をわかるように記載させるとか、ファンドの概要を説明しているWEBURLを記入させるとか、もう少し情報の充実が必要なのではないでしょうか。

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