まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

官民ファンドは税金の無駄遣い

2009-07-20 15:58:09 | 社会・経済

       720日の日経新聞には、27日に発足する官民ファンド「産業革新機構」の記事が掲載されています。パナソニックや東京電力など20社あまりの大手企業が総額100億円程度出資する見通しとなったと報じています。成長力の高い企業支援や先端技術開発を後押しする狙いで、純投資として将来のリターンも見込むとの事。

政府の出資規模は820億円であり、発足当初の資本金は1000億円規模。政府は、海外機関投資家の出資も呼びかけ資本金を2000億円規模に積み上げる方針。投資先の企業価値向上で剰余金が増えれば出資比率に応じて利益が配分される。投資先には業種制限はないが、半導体・環境・生命科学など比較的リスクの大きい事業分野を想定しているとの事。

       投資の意思決定は、他の投資ファンドの協力姿勢や経営統治といったガイドラインを踏まえ、中立機関である産業革新委員会(委員長:吉川弘之前産業技術総合研究所理事長)が是非を決める。同委員会には、三村新日鐵会長や、企業再生に詳しい学者・弁護士を起用することが固まった。融資については8000億円に上る政府保証がつく(レバレッジ1:4で従来のファンドの考え方)との事。新規事業への投資など、委員会等作って集団無責任の意思決定をするものでも無いですし、重要な事はお金以外にも汗をかく、実際の投資先の事業の育成をするということだと思いますがね。

       政府が関与した国家プロジェクト等で、まともに成功したのは、1976年に当事の通産省主導で始まった「超LSI技術研究組合」(リーダー:東京農工大学名誉教授 垂井康夫氏)だけだったというのが私の理解です。この成果で80年代日本の半導体業界は大躍進をとげました。だが残念ながら、その後90年代に韓国・台湾に追い越されました。

       政府が民間に補助金などを出して支援している事業は山ほどあります。しかし、研究所の自己満足の成果は少し出ていると思いますが、世の中の人に役立つ、即ち世の中の人がお金を出して購入して満足する技術がどれだけ出ているのか全く疑問です。

そういった、支援機関の大本が、産業技術総合研究所(産総研)、科学技術振興機構(JST)、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、情報処理推進機構(IPA)ですね。これら独立行政法人には、民間企業に出向者を要請し受け入れています。即ち既に多くの官民プロジェクトが実行されてきているのですが、成果はあまり聞きません。

       例えば、IPAを取り上げてみましょう。前身は「特別認可法人 情報処理振興事業協会」であり、出資金の大半は経済産業省が出していました。これが、H16.1.5に組織変更され現在のIPA=独立行政法人情報処理推進機構になっています。現在の理事長は、元NEC社長の西垣浩司氏ですね、その前は、通産省出身(民間企業の経験もありますが)の藤原 武平太氏でした。

IPAH20.3の連結BSの純資産は、資本金359億円、資本剰余金△2億円、連結剰余金△9億円、少数株主持分3億円、評価差額4億円で、純資産356億円となっています。これだけ見るとそれ程悪い数字ではありませんね。

 http://www.ipa.go.jp/about/ipajoho/pdf/2007_cost.pdf

しかし、こんなのは大きな嘘です。情報処理振興事業協会をIPAに組織変更するときに、2416億円の赤字を消しています。そのときの政府出資は3226億円、IPA発足時の政府出資は810億円です。この810億円もIPAを作るために増やした筈です。確かその前は、政府出資約2500億円で赤字が2400億円ぐらいだった筈です。IPAH15事業年度の財務諸表がWEBに掲載されていますので、ご覧下さい。

http://www.ipa.go.jp/about/ipajoho/pdf/H15-financial_statements.pdf

これによれば、H16.1.4現在の資本金は3328億円、欠損金は2845億円(純資産479億円)となっています。

       独立行政法人の補助金は、個人に近い企業(なかには個人にも)、ベンチャー企業も利用しますが、大企業又はそのグループ企業も利用しています。申請書には、革新性・先端技術である旨唄っています。それの成果がこれです。

       学者や一部の(研究所で閉じこもって研究している現場に居ない)技術者は、実際に世の中に役立つ技術は何かなどわかりません。技術評論で生活している人です。また、事業再生に詳しい弁護士は、再生屋であって事業家ではありません。

       政府は、またIPAみたいな補助金交付機関を作る気ですか?形態は出資というだけで何も変わりません。過去の政府主導プロジェクトの反省・問題点・あるべき姿、お金の使い方を再検討しましたか?何かの不祥事があれば、政府等は再発防止策の提示を求めます。こんな組織を立ち上げる前に、政府は、プロジェクト失敗防止策を公表すべきではないでしょうか!!

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

新設分割は役立たない制度?

2009-07-19 21:45:05 | 商事法務

     会社分割には、新設分割と吸収分割がありますね。今回は、この分割について、新設分割は、事業の中断・支障の無い継続という点では問題の多い、従い、多分あまり利用されていない・されないということを述べてみたいと思います。新設合併と同じですね。新設合併等という制度は米国(例えば模範事業会社法)にはありませんね。新設分割というのもないでしょうね(模範事業会社法を調べた訳ではないので、ご存じの人が居たら教えて下さい)

○ 分割については、法229号・30号に定義されています。

29号 吸収分割=「株式会社又は合同会社がその事業に関して有する権利義務の全部又は一部を分割後他の会社に承継させることをいう。」

30号 新設分割=「一又は二以上の株式会社又は合同会社がその事業に関して有する権利義務の全部又は一部を分割により設立する会社に承継させることをいう。」

なぜ、吸収分割の定義では「一又は二以上の」と書かないのでしょうね。別に、「一又は二以上の」株式会社が、契約を締結して共同で同じ事業分野を他の会社に承継させることもよく行われていますけどね。

     分割の効力発生ですが、新設分割の場合は、764条により、「新設分割設立株式会社は、その成立の日に、新設分割計画の定めに従い、新設分割会社の権利義務を承継する。」と記載されています。一方、吸収分割の場合は、承継会社は、効力発生日に吸収分割契約の定めに従い、分割会社の権利義務を承継しますね(759 I)

成立の日とは「登記の日」ですね。924条では、会社が新設分割をする場合において、新設分割により設立する会社が株式会社であるときは、本店所在地において新設分割をする会社については変更の登記をし、新設分割により設立する会社については設立の登記をしなければならない」ということで、具体的には法務局に、変更登記申請書&設立登記申請書を提出した日となりますね。

● 登記申請して完了するまでどれくらいでしょうか。1-2週間ですね。その後登記簿謄本(記載事項証明書)をいっぱい取寄せて、税務署(&都道府県税事務所)に法人設立届、労働基準監督署に就業規則届その他の届、社会保険、労働保険の手配、銀行口座開設、分割され承継される権利・義務、資産・負債の受入記帳、不動産・リース契約等の契約上の地位の承継手続き等、いろいろ大変です。

○ 新設分割・吸収分割でも共通ですが、承継した資産については実査・突合が必要ですよね。まあ、帳簿と現物が一致するというのは、実際上あまり無いわけですからね。どの辺で折り合いつけるかですね。お勧めできませんが、帳簿上だけそのままという手抜きの方法もありますけどね。メーカの場合は、棚卸資産等も実地棚卸して確かめないといけない場合もありますよね。まあ、ある工場だけ分割されれば比較的簡単ですけどね。

     上記●の手続き、即ち新設分割特有の手続きには、その前から準備をしても約一ヶ月かかります。登記簿謄本が無ければ銀行口座も開設出来ません。口座が無ければ大変です

分割会社の従来の口座を暫く使わせてもらうとかいろいろ余計な手配をしないといけません。下手したら事業が止まる可能性もあります。承継資産には、「現預金」が無いと、運転資金がありません。しかし、その金を入れる口座も成立の日から2週間ぐらいありません。現実的に、多くの不都合を発生させかねないのが新設分割です。

○ ということで、新しい器で事業をするときは、上記●の手続き事前に行えるように受け皿会社を先に作っておいて行うのが一般的ですね。即ち、受け皿新会社を設立してその会社と吸収分割を行うわけですね。まあ、実務家から見れば新設分割など、全く役に立たない余計な制度ですね。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

会社分割と事業譲渡の選択

2009-07-11 11:43:37 | M&A

       事業譲渡では、事業に属する個々の財産(資産・負債)について、個別に移転の手続が必要ですね。第三者対抗要件の具備も必要です。特に債務については免責的債務引受の場合は債権者の承諾が必要です。一方、会社分割では、包括承継かどうかという議論はさておき、事業に関する権利義務の全部・一部を一括して設立会社(新設分割)又は承継会社(吸収分割)に移転するとしていますので、個別の移転手続は必要ないと考えられています。もっとも対抗要件は権利毎に満たさないといけませんが。

○ ということで、事業譲渡は、手続的負担が大きいと言われています。しかし、案件の内容によっては、会社分割よりも都合がよく、それ程手続も要らない場合もありますので、今回は、会社分割と事業譲渡について、案件特性も踏まえて、どちらがやりやすいか考えてみましょう。

       流動資産・負債(流動・固定)を譲渡する場合、分割では個別手続不要、事業譲渡では必要となりますが、実際上は分割でも必要です。法律上の話では無く、取引をきちんと継続するという視点で言えば、売掛金の相手先に対しては、挨拶もきちんとして、また分割・事業譲渡日を伝えて支払い口座に誤り無く振り込んでもらうため、取引の支障の無い継続のためにですね。(伝えても分割・譲渡日以降の誤りはよくありますけどね)。買掛金の先、即ち債権者に対しては、事業譲渡の場合は保護手続不要ですが、個別に債権者の承諾が必要です。これは少し手間ですね。銀行などの債権者は、分割・事業譲渡のいずれのケースでもいろいろ手間がかかりますし、首を縦に振らないことも多いようですね。これを機会にロールオーバーを止めようと考える銀行の場合は、事業譲渡の代金が入ったら貸しはがしをしようなどと考えるかもしれません。

○ 固定資産を譲渡する場合、事業譲渡であろうが分割であろうが、実際の手間は殆ど変わりません。譲渡する固定資産を特定して、時価といっても実際は簿価が多いですが、それで譲渡・移転すれば良いだけです。リース資産・負債は、いずれにしてもきちんと移転手続が必要です。土地等の不動産の移転のときは、事業譲渡と分割では、登録免許税等が違いますので注意が必要ですね。

       分割であろうが、事業譲渡であろうが、分割日・譲渡日以後、承継会社・譲受会社では、資産・負債について受入記帳をしないといけません。手間は変わりません。まあ、最近は分割会社・譲渡会社の経理データをデータでもらって、合わせれば良いですけれども、それでもかなり手間ですね。また受入記帳した内容と、現物が一致しているかの確認作業もありますね。帳簿と現物はよく不一致を起こしますね。まじめにするとこの作業が大変です。簡単に現物と突合などできないですね。

       人の場合は、事業譲渡の場合は、個別に承諾を取らないといけません。転籍ですからね。退職給付債務がどうなるかも関心事ですね。算定基準を引き継がないといけませんが、これは会社分割でも同じですね。ただ、分割の場合は、移籍従業員の個別承諾は要りませんがね。(労働契約承継法)

まあ、最近の不況を考えれば事業譲渡で転籍と言われても、殆どの従業員はOKしますね。かなりの不利益変更をしない限りですね。うまく承諾を得られないときや、待遇に差があるときは、よく譲渡会社から譲受会社への出向ということにしますね。

分割でも事業譲渡でも、もっとも気を使うことが、人の処遇・問題ですね。誠意をもって丁寧にあたらないといけません。

       許認可は、分割の場合も取り直しの場合が多いですね。分割だから自動的に移転するだろうと考えるのは誤りです。一方公正取引委員会への届出は、要件に該当する規模の場合はいずれの場合も必要ですね。

○ ぐじゃぐじゃ書きましたが、流動資産と負債を承継しない場合で、不動産の無い場合は、債権者保護手続が不要・変更登記も不要な事業譲渡の方が簡便なときが多いということです。取引先・従業員に対しては、法律上の手続だけすれば良いというものではありません。きちんと説明・挨拶をして理解を得なければなりません。分割と事業譲渡での手間が変わるわけではありません。

法律上の手続ではなく、全ての手間を考えれば、分割の方が手間がかからないと一律に考えるのは誤りということですね。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

企業再編の権利義務の承継

2009-07-05 14:22:44 | 商事法務

○ 吸収分割の場合、包括承継かどうかの議論は別として、法759条1項では、「吸収分割承継株式会社は、効力発生日に、吸収分割契約の定めに従い、吸収分割会社の権利義務を承継する。」としています。758条の吸収分割契約の規定では、②号で「吸収分割承継株式会社が吸収分割により吸収分割会社から承継する資産、債務、雇用契約その他の権利義務」という言い方をしています。労働契約承継に関しては、「会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律」(=労働契約承継法)がありますね。

     合併の場合には、750条1項では、「吸収合併存続株式会社は、効力発生日に、吸収合併消滅会社の権利義務を承継する。」としています。また、749条では吸収合併契約で定める事項の規定があります。合併は、包括承継ですから、分割と異なり、承継する資産うんぬんは不要ですね。普通はね。

     合併の場合は、全ての権利・義務が承継されると考えますが、例外があります。新設合併の場合は、設立時取締役の氏名を記載しなければなりません。吸収合併でも消滅会社の役員が合併会社の役員に自動的になるわけでもないですね。取締役と会社の関係は、一種の委任契約であると考えられていますが、消滅会社の役員については、この委任関係が解消されるケースも多いですね。もうじきなくなる税法上の適格合併の場合は、適格性の条件の一つに、被合併法人の従業員の80%以上の移転の要件があります。即ち税法では、100%の従業員が移転する事は予定していない訳ですね。また合併契約で、合併の効力発生までに、約諾事項としてリストラ・事業の分離等もありますからね。

     合併でも、吸収分割でも、消滅会社・分割会社の従業員の雇用契約が維持されるのが普通ですが、同一条件で維持されるとは限りません。当然給与・退職給付規定などが通常は違います。差が大きい場合等、転籍というわけにもいきません。分割・事業譲渡の場合など、2-3年の出向契約にして、労働条件の不利益変更の緩和処置が講じられます。

     吸収分割の規定で、759条では、権利義務を承継すると規定し、758条では、承継する資産、債務、雇用契約その他の権利義務としていますなぜ言葉を変えたのでしょうか?何か違いがあるのでしょうか?「資産」なら「負債」が対の言葉です。資産・負債&権利・義務とすべきではないでしょうか?また、労働契約承継法があるのになぜ「雇用契約」とわざわざ規定したのでしょうか?よくわかりませんね、その理由が。ご存じの方は教えて下さい。まあ、はっきり言いますと、規定の仕方がちょっとおかしいと思いますね。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする