○ 久しぶりに会社法の「けち」ですね。今回は、内部統制と監査役の権限・義務との関連がきちんと整理されていない。この辺をもっと体系的に整合性をもって整理して欲しいということです。そもそも、内部統制の制度というのは、米国のSOX法の猿まねです。ご承知の通り米国には、取締役会の委員会としての監査委員会はありますが、監査役の制度がありません。こういった制度の違いを無視して、十分な検討・議論もなく導入したのが内部統制です。勿論、内部統制の構築義務は取締役の義務ですし、監査役は監査・チェックがその権限であり義務ですから、自ずから役割は異なっていますけれども。<o:p></o:p>
○ 内部統制の目的は、1) 業務の有効性・効率性、2)財務報告の信頼性、3)法令遵守、4)資産の保全ですね。取締役としては法令に記載されるまでも無く、あるいは善管注意義務・誠実義務の範疇で取り組むべきことです。<o:p></o:p>
○ 内部統制については、会社法362条4項6号に規定しています。「取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令(=施行規則100条)で定める体制の整備」。第5項で、大会社である取締役設置会社では、内部統制を決定しなければならないとしています。 私に言わせれば、法令及び定款に適合することを確保するための体制が、監査役制度だと言うことです。監査役は何のために存在するのですか?取締役になれなかった人の名誉的なポストですか? 監査役の権限また同時に義務は「法令・定款違反又は著しい不当性の有無のチェック」です。会計監査人と併せて、上記の内部統制の目的の2)と3)はチェックできます。即ち、取締役が構築し、その監査は監査役・会計監査人が行えば良いのです。また4)の資産の保全も不当なら監査役が指摘すれば良いのです。
○ 上記の1)の業務の有効性・効率性は、当然行わなければ国際競争に勝てませんね。取締役の当然の義務です。この業務は、工場の生産など会社の一切の業務が本来なら入るのですが、施行規則100条③には「取締役の職務の執行が効率的に行われることを確保するための体制」とされていますので、事業報告書をサンプル的に見ると、中身無しあるいは意味不明の記載が多いですね。何が言いたいねん!と言いたくなります。「職務執行の効率化の必要がある場合は、社内規定を随時見直します」(帝人)とか「取締役の業務分担を決議し、取締役の職務の執行が効率的に行われることを確保する」(東急電鉄)等と記載されています。
○ 会社法の監査役の規定も、きちんと整理して欲しいですね。「不正の行為」「不当な事実」「著しく不当な事項」「会社の目的の範囲外の行為」これらの言葉は、それぞれどのように解釈すればいいのでしょうか? 即ち、以下に規定されている内容ですね。
・ 監査役の取締役(会)への報告義務として、法382条は、「取締役が不正の行為をし、若しくは当該行為をするおそれがあると認めるとき、又は法令若しくは定款に違反する事実若しくは著しく不当な事実があると認めるときは、遅滞なく、その旨を報告」としています。
・ 監査役の総会への報告義務として、法384条は、「取締役が総会に提出する議案、書類その他法務省令で定めるものを調査し、法令若しくは定款に違反し、又は著しく不当な事項があると認めるときは、その調査結果を報告」としています。<o:p></o:p>
・ また、監査役による取締役の行為の差止めとして、法385条は、「取締役が会社の目的の範囲外の行為その他法令若しくは定款に違反する行為をし、又はこれらの行為をするおそれがある場合において、当該行為によって会社に著しい損害が生ずるおそれがあるときは、当該取締役に対し当該行為をやめることを請求することができる。」としています。