前々回の続きです。即ち、英米でVCがベンチャー企業への投資をする際の一般的な種類株や条件についてです。<o:p></o:p>
7) Founder shares (創業者等保有株式)―創業者や重要な従業員の保有株をどうするかの規定ですね。 創業はしたけれど経営は経営者に任せたので徐々に売却する場合もあるでしょう。逆に経営上重要なので新株発行のときには継続的に引き受けて保有比率維持もありでしょう。こういった規定を入れる場合があります。例えば最低でも創業者は議決権の20%を保有する事等ですね。株主分布と保有比率は、IPOのときの売り出し等にも関係しますね。また、従業員等の保有している株式等について、これを売却しようとするときに買い戻し等が規定される場合もあります。<o:p></o:p>
8) Pre-emption rights on new share issues (新株引受優先権)―これがないと希薄化してしまいますね。Preemptive Rights と言う方が一般的でしょうか?日本の場合、全株式譲渡制限会社(非公開会社)の場合は、第三者割当は総会特別決議ですから、既存株主はある意味最初から引受優先権があるといえますね。海外では、一般に英国や大陸法系の国の閉鎖会社を除けば、必ずしも総会決議を要求せず取締役会決議で出来るようですので、投資契約等で新株発行の際には持株比率相当分の新株引受権を確保するため、こういった規定を入れることになりますね。
9) Right of first refusal, co-sale and tag along rights (先買権、共同売却権及び売買参加権)―ある株主が自分の持株を売却しようとするときには、他の既存の株主にまずその売却申込を行わなければならないとする規定ですね。株主間協定等に記載されますね。但し、親子会社間とか100%子会社を除く例も多いですね。売却申込を受けた当事者が一定期間内にこれを受けない場合には、第三者に当初の売却条件より有利にならない条件で売却申込ができると規定しますね。共同売却権とは、ある株主(例えば創業者等が)持株を第三者に売却しようとするとき、他の既存株主も同一条件で、持株比率に応じて同じ買主に売却できる権利です。投資家によっては株式の流動性・売却可能性を制限するものとして、この規定に反対する者もいます。<o:p></o:p>
10) Drag along or bring along (共同売却条項)―新規買収者へ、既存株主がその持株を売却しようとするには、既存株主が例えば多数決で承認すれば、既存の全ての株主に、その持株を当該買収者に売却する義務を負わせる条項です。即ち新規買収者は、少数株主への責任を負うこと無く、100%買収が可能になります。 <o:p></o:p>
11) Voting Rights (議決権)―普通株には議決権がありますが、ある種の種類株には通常の議決権に加え、法令の範囲内複数議決権を与えるものもあります(日本では、1株又は1単元1議決権と決まっているので、株式の種類毎に異なる単元株式数を定めることで行う必要があります)。逆に、議決権制限の株式もあります。拒否権を与えるものもありますし取締役の選任権を与える種類株式もありますね。<o:p></o:p>
12)Protective provisions and consent rights (class rights) (保護条項・同意権)―VCによっては、会社が一定の行為を行なうときには過半数なり2/3以上の議決権(普通株・種類株)を保有する株主の同意を求める条項を入れる場合がよくあります。日本の会社法では、総会の特別決議・普通決議事項で定められていますが、例えば事業計画の変更、新規事業投資等のようにカバーされていないものもあります。従い、1億円以上の投資とか、3年以上の長期・継続的契約で事業上重要なもの等を、事前に株主の同意が必要と定める場合ですね。一般的には定款に盛り込みますね。大陸法系の国では、取締役会専権事項もあるようですので、その場合投資家は、その指名した取締役を通じて同意しますが、取締役会の承認条件・決議条件を、例えば全員同意等に過重にしておかないといけませんね。<o:p></o:p>
13) Board of Directors/Board Observer (取締役選任権/取締役会参加権)―英米では適切な企業統治のため、社外(業務執行を行なわない)取締役が過半数の取締役会設置が好まれます。でも小さな会社では実際的ではないですね。投資契約で、取締役の指名権が規定されることもよくあります。しかし、利害関係の衝突(Conflict of Interest)や責任の関係で取締役にはならず、取締役会参加権(Board observation right)に留めるときもあります。<o:p></o:p>
14) Information rights (情報提供請求権)―VCは、会社を継続的にモニターして、自分たちの投資の現状をきちんと調べて、VCへの投資家に投資・ポートフォリオの現状説明・報告をしなければいけません。その為には投資先企業からきちんと定期的に正確な情報を入手しないといけません。その情報入手の権利の確保の条項ですね。但し、大陸法系の会社では、特定の株主のみへの情報提供は株主平等原則違反であり、全株主への情報提供を義務としている国もあるようです。.<o:p></o:p>
15) Exit―IPOや会社売却がExitですね。その為に例えば2015年までにIPOを目指す。それが出来ないときは株式を償還してほしいとかの条項が入る場合もあります。まあ、もくろみ通りIPOできない場合が多いので、途中で投資契約の内容を変えたり、IPO目標時期を延長したりするケースもありますね。<o:p></o:p>
16) Registration rights (証券登録請求権)―米国では、IPOの公募や売り出しに際して予めSEC(証券取引委員会)に登録することが必要です。別名「Piggyback」条項とも呼ばれます。これを辞書で調べると、「肩に乗せて運ぶ事」と書いてありました。即ち、会社がその株式を公開し公募増資をするときに、株主もそれに便乗して売り出すということでこんな名前が出来たのでしょう。この「証券登録請求権」を有している株主は、会社がIPOに向けて登録するに当たり、自分の保有株式を同時に売り出せるよう登録せよと会社に要求することができます。<o:p></o:p>
17) Confidentiality, Intellectual Property Assignment and Management Non-compete Agreements(守秘義務、知的財産譲渡、競業避止協定)―その会社の製品が、第三者保有の特許を利用する場合等は、当然投資契約にその特許取得(又は専用実施権取得)等が盛られます。また、知的財産の発明者等が学者などでその会社の役員にならない場合等は、その者との競業避止協定の締結なども重要になってきますね。 <o:p></o:p>
18) Employee share option plan(=ESOP:従業員ストックオプションプラン) ―VCとの投資契約の中には、従業員へのストックオプション付与とこれの行使による株式発行は、希薄化条項等の適用は無い、投資家である株主の承諾は不要と規定する場合があります。例えば10-20%までの発行の場合ですね。<o:p></o:p>
19) Transaction and monitoring fees(取引・モニタリング費用負担)―VCによっては、投資に要した費用を投資された会社に払わせる条項を入れます。自分たちが投資したお金から負担するみたいなもので、100払って2返ってくるという訳です。ということは98の投資と変わらないじゃないかと思われますが、そうではないですね。この2の部分も投資(株式)になっていますから。また毎年モニタリング費用を求める場合もあります。結構がめついVCも多いですね。<o:p></o:p>
上記の他に、投資契約には、Representation and Warranty(表明・保証)の条項、その他にDue Diligenceの結果判明した事項で投資の前提となる事項の実行(約諾事項=Covenants)、実行を証する書類の提出・確認など、また違反した場合のIndemnification条項などが入りますね。海外では、数十ページに及ぶ投資契約も多いですね。<o:p></o:p>