まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

VCのベンチャーへの種類株投資②

2011-10-23 19:39:43 | 株式関連

 前々回の続きです。即ち、英米でVCがベンチャー企業への投資をする際の一般的な種類株や条件についてです。<o:p></o:p>

 

7) Founder shares (創業者等保有株式)―創業者や重要な従業員の保有株をどうするかの規定ですね。 創業はしたけれど経営は経営者に任せたので徐々に売却する場合もあるでしょう。逆に経営上重要なので新株発行のときには継続的に引き受けて保有比率維持もありでしょう。こういった規定を入れる場合があります。例えば最低でも創業者は議決権の20%を保有する事等ですね。株主分布と保有比率は、IPOのときの売り出し等にも関係しますね。また、従業員等の保有している株式等について、これを売却しようとするときに買い戻し等が規定される場合もあります。<o:p></o:p>

 

8) Pre-emption rights on new share issues (新株引受優先権)―これがないと希薄化してしまいますね。Preemptive Rights と言う方が一般的でしょうか?日本の場合、全株式譲渡制限会社(非公開会社)の場合は、第三者割当は総会特別決議ですから、既存株主はある意味最初から引受優先権があるといえますね。海外では、一般に英国や大陸法系の国の閉鎖会社を除けば、必ずしも総会決議を要求せず取締役会決議で出来るようですので、投資契約等で新株発行の際には持株比率相当分の新株引受権を確保するため、こういった規定を入れることになりますね。

 

9) Right of first refusal, co-sale and tag along rights (先買権、共同売却権及び売買参加権)―ある株主が自分の持株を売却しようとするときには、他の既存の株主にまずその売却申込を行わなければならないとする規定ですね。株主間協定等に記載されますね。但し、親子会社間とか100%子会社を除く例も多いですね。売却申込を受けた当事者が一定期間内にこれを受けない場合には、第三者に当初の売却条件より有利にならない条件で売却申込ができると規定しますね。共同売却権とは、ある株主(例えば創業者等が)持株を第三者に売却しようとするとき、他の既存株主も同一条件で、持株比率に応じて同じ買主に売却できる権利です。投資家によっては株式の流動性・売却可能性を制限するものとして、この規定に反対する者もいます。<o:p></o:p>

 

10) Drag along or bring along (共同売却条項)―新規買収者へ、既存株主がその持株を売却しようとするには、既存株主が例えば多数決で承認すれば、既存の全ての株主に、その持株を当該買収者に売却する義務を負わせる条項です。即ち新規買収者は、少数株主への責任を負うこと無く、100%買収が可能になります。 <o:p></o:p>

 

11) Voting Rights (議決権)普通株には議決権がありますが、ある種の種類株には通常の議決権に加え、法令の範囲内複数議決権を与えるものもあります(日本では、1株又は1単元1議決権と決まっているので、株式の種類毎に異なる単元株式数を定めることで行う必要があります)。逆に、議決権制限の株式もあります。拒否権を与えるものもありますし取締役の選任権を与える種類株式もありますね。<o:p></o:p>

 

12Protective provisions and consent rights (class rights) (保護条項・同意権)―VCによっては、会社が一定の行為を行なうときには過半数なり2/3以上の議決権(普通株・種類株)を保有する株主の同意を求める条項を入れる場合がよくあります。日本の会社法では、総会の特別決議・普通決議事項で定められていますが、例えば事業計画の変更、新規事業投資等のようにカバーされていないものもあります。従い、1億円以上の投資とか、3年以上の長期・継続的契約で事業上重要なもの等を、事前に株主の同意が必要と定める場合ですね。一般的には定款に盛り込みますね。大陸法系の国では、取締役会専権事項もあるようですので、その場合投資家は、その指名した取締役を通じて同意しますが、取締役会の承認条件・決議条件を、例えば全員同意等に過重にしておかないといけませんね。<o:p></o:p>

 

13) Board of Directors/Board Observer (取締役選任権/取締役会参加権)―英米では適切な企業統治のため、社外(業務執行を行なわない)取締役が過半数の取締役会設置が好まれます。でも小さな会社では実際的ではないですね。投資契約で、取締役の指名権が規定されることもよくあります。しかし、利害関係の衝突(Conflict of Interest)や責任の関係で取締役にはならず、取締役会参加権(Board observation right)に留めるときもあります。<o:p></o:p>

 

14) Information rights (情報提供請求権)―VCは、会社を継続的にモニターして、自分たちの投資の現状をきちんと調べて、VCへの投資家に投資・ポートフォリオの現状説明・報告をしなければいけません。その為には投資先企業からきちんと定期的に正確な情報を入手しないといけません。その情報入手の権利の確保の条項ですね。但し、大陸法系の会社では、特定の株主のみへの情報提供は株主平等原則違反であり、全株主への情報提供を義務としている国もあるようです。.<o:p></o:p>

 

15) ExitIPOや会社売却がExitですね。その為に例えば2015年までにIPOを目指す。それが出来ないときは株式を償還してほしいとかの条項が入る場合もあります。まあ、もくろみ通りIPOできない場合が多いので、途中で投資契約の内容を変えたり、IPO目標時期を延長したりするケースもありますね。<o:p></o:p>

 

16) Registration rights (証券登録請求権)米国では、IPOの公募や売り出しに際して予めSEC(証券取引委員会)に登録することが必要です。別名「Piggyback」条項とも呼ばれます。これを辞書で調べると、「肩に乗せて運ぶ事」と書いてありました。即ち、会社がその株式を公開し公募増資をするときに、株主もそれに便乗して売り出すということでこんな名前が出来たのでしょう。この「証券登録請求権」を有している株主は、会社がIPOに向けて登録するに当たり、自分の保有株式を同時に売り出せるよう登録せよと会社に要求することができます。<o:p></o:p>

 

17)  Confidentiality, Intellectual Property Assignment and Management Non-compete Agreements(守秘義務、知的財産譲渡、競業避止協定)その会社の製品が、第三者保有の特許を利用する場合等は、当然投資契約にその特許取得(又は専用実施権取得)等が盛られます。また、知的財産の発明者等が学者などでその会社の役員にならない場合等は、その者との競業避止協定の締結なども重要になってきますね。 <o:p></o:p>

 

18)  Employee share option plan(=ESOP:従業員ストックオプションプラン) VCとの投資契約の中には、従業員へのストックオプション付与とこれの行使による株式発行は、希薄化条項等の適用は無い、投資家である株主の承諾は不要と規定する場合があります。例えば10-20%までの発行の場合ですね。<o:p></o:p>

 

19) Transaction and monitoring fees(取引・モニタリング費用負担)VCによっては、投資に要した費用を投資された会社に払わせる条項を入れます。自分たちが投資したお金から負担するみたいなもので、100払って2返ってくるという訳です。ということは98の投資と変わらないじゃないかと思われますが、そうではないですね。この2の部分も投資(株式)になっていますから。また毎年モニタリング費用を求める場合もあります。結構がめついVCも多いですね。<o:p></o:p>

 

上記の他に、投資契約には、Representation and Warranty(表明・保証)の条項、その他にDue Diligenceの結果判明した事項で投資の前提となる事項の実行(約諾事項=Covenants)、実行を証する書類の提出・確認など、また違反した場合のIndemnification条項などが入りますね。海外では、数十ページに及ぶ投資契約も多いですね。<o:p></o:p>

 

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中国市場は大変異乱躁

2011-10-16 18:05:33 | 社会・経済

○ 今回は前回に続いて「VCのベンチャーへの種類株投資②」を書く予定でしたが、突然気が変わって中国市場の攻略のヒントを書くことにしました。これは中国ビジネスのコンサルタント会社である華鐘コンサルティングが発行している日刊「華鐘通信」の10月13日号に掲載されている記事からの引用です。

○ 中国市場を攻略するには、中国市場の特徴をまず把握することですね。
① 中国市場の基本的な特徴は以下であると言っています。
 (1) 地域が広範で、市場空間が広く、機会が多く、前途は巨大。
 (2) 変:発展が速く、変化が速く、政策の変化が多い。
 (3) 異:地域差、産業毎の差、体制の差、営業販売の水準差などが極めて顕著。
 (4) 乱:法律や制度が充分には整っていない、偽造・模造や権利侵害が時に発生、
     市場の秩序の乱れ、商業上の信用や商業倫理が普遍的に欠乏している。
 (5) 躁:短期的な行為が多く、市場の過熱や過冷、過度な競争を引き起こしてしまう。

○ 中国市場は、ひとつの国に複数の市場、複数レベルの市場があります。地理上で区分しただけでも、顕著な違いのあるエリア、市場がたくさんあります。また、農村から中心部の都市にいたるまで、4段階の異なる市場に分けることができ、それぞれの市場にて異なるマーケティング戦略が必要ですね。
4段階の市場とは、以下ですね。

 ・ 一線市場上海、北京、広州、天津等の大都市
 ・ 二線市場:南京、杭州、合肥、済南等の省都

 ・ 三線市場:蘇州、徐州、常州、温州、寧波、金華、湖州、嘉興等の地級市
 ・ 四線市場:余姚、常熟等の県級市

変化が多く複雑な、転換途上の市場において、西側諸国の市場における営業販売理論や戦略、方法をそのまま持ってきても、なかなか成功には至りません。

○ この特徴を踏まえ、中国市場攻略のキーポイントとしては「正確で効果の高い情報の把握」がまず必要との事。
フィリップ・コトラーは、『営業販売は情報量により変化するものであり、販売力によるものではない』と語っているようです。中国のような複雑で変化の多い転換途上の市場においては、マクロ環境、産業や市場の現状、ライバルの状況、前人の成功と失敗の経験等の情報を正確に効果的に把握して初めて、市場のトレンドを追って営業販売の機会を手にすることができるとのことです。

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VCのベンチャーへの種類株投資①

2011-10-08 21:47:17 | 株式関連

 2011106日の日経新聞には、【ベンチャー投資支援 経産省「種類株」促進、リスク減】と題して記事が掲載されています。それによると日本のベンチャー企業に対する年間の投融資額に占める種類株の比率は約10%。約80%は普通株による投資で、種類株投資が殆どとされる米国とは対照的だと記載されています。ということで、今回は英米でVCがベンチャー投資をする際の一般的な種類株や条件についてです。<o:p></o:p>

 

 日本では、VCがベンチャーに投資をする際、光るベンチャー・魅力的なベンチャーには1社でドカーンと投資をしますが、そんな良い投資は殆どありません。また、魅力的なベンチャー企業としては、事業に役立つ投資家・相乗効果の期待できる戦略的投資家を優先します(リチュームイオン電池のエリーパワー等は、大和ハウスやシャープが投資して、株式を売却する前提のVCはジャフコでも持株比率は5.85%ですね)。従い、VCの投資は大企業がまだ興味を示さないリスクの高い企業への投資が一般的なので、VCは数社が組んで投資をしますね。「赤信号みんなで渡れば怖くない」ですが、やはり赤信号なので失敗投資が多いですね。<o:p></o:p>

 

 まあ、それはともかく種類株で現実にどれだけリスクが軽減できるか別問題として、どんな種類株があるのか、またその投資の主な条件等を整理してみましょう。元ねたは、British Venture Capital AssociationのA Guide to Venture Capital Term Sheetsですので、ご興味のある方はそれをご覧下さい。<o:p></o:p>

 

1) Dividend rights (配当に対する権利。通常は優先配当株式)- 通常は配当優先権がありますね。また、累積的か非累積的かも決めます。普通株配当も加わるかどうかによって、participating(参加型) non-participating(非参加型)もありますね。例えば、a share class that has a preferential, cumulative dividend, usually fixed at a percentage of the purchase price paid for each preferred shareということですね。<o:p></o:p>

 

2) Liquidation preference and deemed liquidation* (残余財産分配優先株式)―残余財産優先でも、VC2xとか3x Liquidation preferenceを求めますね。でも、日本の場合は、残余財産優先株としても、倒産すれば殆どもらえない場合が多いのではないでしょうか。実際あまりリスク軽減にはなりませんね。

* Deemed liquidation=a term usually defined to include a merger, acquisition, change of control or consolidation of the company, or a sale of all or most of its assets, but sometimes also includes an initial public offering (IPO) or a qualified exit<o:p></o:p>

 

3) Redemption (償還株式)―会社法の制限を条件として、例えば株金払込後3年以降、払込株金+アルファ(配当決議したが未分配の配当金を加えた金額等)にて会社に償還を要求できる権利が付された株式ですね。日本の場合は、取得請求権付株式で、会社に金銭での買取が出来る株式ですね。日本では米国等と異なり剰余金の分配規制(財源規制)が厳しいですのでなかなか使えないです。また、分配可能剰余金があっても、特定株主からの自社株(自己株)取得は、総会特別決議事項ですし、他の株主もその株式取得請求に参加できるTag Along条項が会社法に規定されていますので、実際難しいですね。<o:p></o:p>

 

4) Conversion rights (転換権付株式)-日本の株式だと取得請求権付き株式で会社に取得してもらって多の種類の株式に転換ということになりますね。一般的には、転換株を取得してもらって普通株への転換が多いですが、他の種類株(日本の場合、普通株も種類株となりますが、それ以外の種類株)でも勿論可能ですね。<o:p></o:p>

 

5) Automatic conversion of share class/series(一斉転換条項付き株式)-例えば、IPO等の前に、種類株主の議決権の2/3以上の承認で一斉に他の株式(普通株等)に転換する条項つきの株式ですね。<o:p></o:p>

 

6) Anti-dilution (or price protection) 希薄化防止条項―転換株式を発行している場合に、その転換価格以下で追加のエクイティファイナンスする場合とか調整が必要となります。また既存株主以外に新株を発行すると持株比率も希薄化しますが、VCは一般的に持株比率は高くないので、投資契約で権利を確保しておれば、あまり影響を受けない場合もありますね。

  その他まだまだありますが、書くのに疲れましたので、この続きは②に記載します。<o:p></o:p>

 

 

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企業行動基準は役だっているのか

2011-10-02 17:51:37 | 企業一般

 

 多くの企業で企業行動基準や指針が制定されています。各企業の指針等のサマリーは経団連のWEBなどでも掲載されています。しかし、残念ながらりっぱな行動指針とは裏腹に不祥事が相次いでいます。指針は、誰の為に作成されているのでしょう。主としてその会社の役職員に向けて制定されるものですよね。しかし、実際の役割は、対外的なPR効果を念頭においている感じもしないでもないですね。<o:p></o:p>

 

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 大体、行動指針を制定すると、社内通知で社員に知らせます。また新入社員には、新人研修のときに教えます。しかし、それっきりが多いのではないでしょうか。一般従業員への定期的なリマインド・徹底はあまり計られていないですね。ですから大抵の従業員は、行動基準の存在は何となく覚えていますが、何が書いてあったか覚えていませんね。これでは何のために制定したのでしょうか。定期的に社内メールや社内WEBのトップページに掲載してリマインドすることが重要ですね。また重要なことは、業績向上の強烈なプレッシャーにある経営者ですが、経営トップが高度の倫理観を持って行動しているかどうかですね。従業員は経営者の姿勢を見て行動しますからね。<o:p></o:p>

 

 企業行動基準は、別に法令や証券取引所の規則ではないですね。勿論、上場規則には、反社会的勢力との取引禁止等が定めれれていますし(最近は、これに加えて証券市場を混乱させる反市場勢力との関係も禁止していますが)、「適正な職務の執行」などという抽象的な言葉が並んでいる程度です。経団連は、毎年1回は「企業倫理徹底のお願い」を会長メッセージとして出しています。即ち、企業倫理・行動指針を出しても守られていないから毎年一回出しているのですね。<o:p></o:p>

 

○  米国でも似たようなものでしょうか。NYSEのListed Company Manual Section 303Aには、Governanceのことが規定されていますので、NYSE上場企業は、これに従いBusiness Code and Ethics (Code of Ethics) を制定していますが、なかなか徹底されていないのではないでしょうか。<o:p></o:p>

 

○ 経団連は、以下を指摘しています。経営トップの今後の課題として、①企業倫理を重視した経営判断の実施、②現場の状況把握、現場との対話を通じて末端まで伝える努力をすること、③風通しのよい企業風土づくりなどが指摘されている。企業全体の課題としては、意識の共有、内部監査制度のさらなる充実、個々の従業員への浸透度合いを測る手法の確立、ヘルプラインの周知徹底と有効活用などが挙がっています。

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