まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

ベンチャー企業の譲渡制限株の譲渡

2012-07-22 15:55:53 | 株式関連

 

 譲渡制限株でも株式の譲渡を希望する株主に投下資本の回収を保証する制度が会社法では用意されていますね。しかし、いったん譲渡制限株を取得したら、その会社の業績が好調で、配当をキチンとする、その会社をコントロールする、その会社が有力バイヤーであるなどの特別な事情が無い限り、譲渡制限株を譲渡するのは容易ではありません。泣かず飛ばずの会社は、譲渡人の力関係が弱いですから、譲受人の言う価格でないと買ってもらえないかも知れません。今回は、譲渡制限株の譲渡についてです。<o:p></o:p>

 

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 会社を設立するときは、普通株式は譲渡制限をつけますね。知り合いや、これから取引を行う取引先等に頼んで縁故募集で株式を発行します。暫くして少し事業が継続・拡大すると、新規設備投資等のために新株の発行を行います。VC(Financial Investor:金融投資家)又は取引先(Strategic Investor:事業投資家)等が、募集株式の引受人ですね。<o:p></o:p>

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 事業投資家なら、自分の会社の製品を優先的に購入する条件で少し株式を取得することもあるでしょう。取引利益がキチンと確保できるなら、つきあい出資も良いかもしれません。しかし、VCの場合は、取引利益は期待出来ません。Exitは、IPOとか安く他VCが保有する株を取得する下請けVC、あるいは金に余裕ができた創業者への売却ぐらいしかEixtがありません。<o:p></o:p>

 

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 企業業績が低迷しているときVCの場合は、そもそも譲り受ける人を探すのが大変です。やっと見つけてきても譲渡価格を決める主導権もありません。簡単に折り合いません。譲受人は、価格がいやなら買うのを止めればいいわけですね。でもやっと折り合えば会社に譲渡承認申請をして承認を取得しないといけません。会社が、その譲受人が適当で無いと判断すれば、承認を拒み、自社で買うか買取人を指定しないといけません。その会社にとって買取人を探すのは容易ではありません。また自社で買い取るには、分配可能額の財源規制に該当しますし、請求者に議決権を行使させない株主総会の特別決議で承認を得なければなりません。まあ、会社としては分配可能額という計算上の金額ではなく、自社で買ったら当然現金の流出がありますので、会社として資金が回るかという心配もしないといけません。そういう事情がありますので、譲渡を希望していても、①簡単に譲受人が見つからない。②仮に見つかっても譲渡の承認が得られないと、会社に買取請求すれば良いと思っても、現実は財源規制や特別決議が待っているということで、実際上出来ない。ということでいつの間にか譲渡出来ずに半年1年とすぐに経ってしまうわけですね。<o:p></o:p>

 

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 VC等は、共同売却権や売買参加権や会社への買取請求権等を投資契約に入れますが、まあ、一回お金を入れると簡単には抜け出せません。特に日本では上場する企業の数が種々の事情で低迷しています。特に、minority出資のVC等は、Hands-onあるいは事業を育成する能力もありません。社外・非常勤取締役等として企業の経営に参画しても、毎回取締役会に出席して現状把握ぐらいしか出来ません。結局Exit出来ずに持ち続けることが多いですね<o:p></o:p>

 まあ、会社法の本を読むと、譲渡制限株でも株式の譲渡を確保して投下資本の回収を保証する制度などと言ってますが、現実はあまり機能していません。<o:p></o:p>

 


取締役の監視義務

2012-07-14 08:43:38 | 商事法務

 

 大企業の100%子会社・孫会社等では、代表取締役は親会社が指名・選出・選定したものが就任し、取締役設置会社の場合は他の取締役は、形式的にまた適当に従業員を指名して3名以上の要件を揃えることがしばしば見受けられます。こういった会社では、取締役会もろくに開催されることもありません。登記のときだけ、総会・取締役会を開催せずに総会議事録・取締役会議事録を担当者が作成して登記を行っています。即ち、代表取締役が、親会社の指示を受けて、他の取締役に何も知らせずに、また取締役会等開催せずに独断専行の経営を行っている場合が結構あると言うことです。今回は、名目的であろうとなかろうと取締役になっている取締役の代表取締役等に対する監視義務についてです。<o:p></o:p>

 

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 具体的には会社法3622項②号の取締役会は「取締役の職務の執行の監督」という職務を行う義務があり、取締役会といっても実際はその構成員である取締役の義務をどのように捉えるかですね。

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 名目的取締役や非常勤社外取締役は、やはり名目的・非常勤で社外でもあり種々の事情がありますので、代表取締役に対する監視義務違反の責任を認める判例は必ずしも多くないようですが、そうかと言って代表取締役の不正行為を見て見ぬ振りをしていれば、取締役の監視義務違反の責任を問われる事もあります。名目的・非常勤社外で無い取締役の場合は、なおさら監視義務違反の責任を負いますね。<o:p></o:p>

 

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 最判S48.5.22(民集275655頁)を引用してみましょう。「株式会社の取締役会は会社の業務執行につき監査する地位にあるから、取締役会を構成する取締役は、会社に対し、取締役会に上程された事柄についてだけ監視するにとどまらず、代表取締役の業務執行一般ににつき、これを監視し、必要があれば、取締役会を自ら招集し、あるいは招集することを求め、取締役会を通じて業務執行が適正に行われるようにする職務を有するものと解すべきである」と述べています。<o:p></o:p>

 

 代表取締役の不正行為等につき、取引先等の第三者から、任務懈怠のあった代表取締役に加えて、他の取締役についても、代表取締役の業務執行を監視する義務を怠ったことを理由に、損害賠償を追求されることが結構あるようです。判例では、代表取締役だけでなく、他の取締役の担当範囲についても、自分の担当範囲ではないからと言って当然責任が無いとは言えないとされています。<o:p></o:p>

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 では監視義務の具体的内容ですが、調査義務と是正義務からなると言われています。取締役は会社業務の全般を把握して不適正な業務執行については、それを取締役会を通じて(取締役会が機能していない場合には、取締役として独自に可能な範囲で)調査して、不正行為等が明らかになれば、これを是正する義務があります。具体的には、取締役会を開催して代表取締役に不正行為の是正勧告をする。それでも止めない代表取締役なら取締役会で反乱を起こして解職する(3622項③号)等もありますね。また監査役は385条により、会社に著しい損害が生じるおそれがあるときは取締役の行為の差し止めができますので、この条文を背景にして監査役と手を組んで、代表取締役の不正行為等を止めさせることも必要ですね。<o:p></o:p>

 

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 まあ、世の中の社長の中には、結構口では遵法だとか言っている割には、法律を知らない代表取締役もいますし、これを逆手に取って不正行為を止めさせないといけない場合も考えられますね。<o:p></o:p>

 


取締役の第三者に対する責任

2012-07-08 01:37:31 | 商事法務

 

 株式会社は有限責任ですから、会社に支払能力が無いからと言って取締役が第三者に対して責任を負うのは、原則としておかしいですね。しかし、株式会社が経済社会において重要な地位を占めており、また株式会社の活動はその機関である取締役の職務執行に依存しており取締役自身に任務懈怠があったときにも責任を追及できないというのでは損害を被った第三者からみれば、ちょっとおかしいのではないかということで、第三者の損害について悪意・過失が認められなくても、任務懈怠(善管注意義務&忠実義務違反)について悪意・重過失があったときは、取締役に損害賠償責任を負わせる規定を会社法ではおいています。<o:p></o:p>

 

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 会社法4291項「役員等がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは、当該役員等は、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う。

2項「次の各号に掲げる者が、当該各号に定める行為をしたときも、前項と同様とする。ただし、その者が当該行為をすることについて注意を怠らなかったことを証明したときは、この限りでない。」

 号 取締役及び執行役 次に掲げる行為

  イ 株式、新株予約権、社債若しくは新株予約権付社債を引き受ける者の募集をする際に通知しなければならない重要な事項についての虚偽の通知又は当該募集のための当該株式会社の事業その他の事項に関する説明に用いた資料についての虚偽の記載若しくは記録

  ロ 計算書類及び事業報告並びにこれらの附属明細書並びに臨時計算書類に記載し、又は記録すべき重要な事項についての虚偽の記載又は記録<o:p></o:p>

 

 

 4291項についての主な論点は、①責任の性質が特別の法定責任か、不法行為責任か、②民法709条の不法行為責任との競合を認めるか、③責任の範囲は直接損害(第三者に直接的に損害を与えた)に限定するか、間接損害(会社に損害を与えた結果、会社財産が減少するなどして第三者に損害を与えてしまった)に限定するが、あるいは両方の損害をカバーするか、④本条の悪意・重過失は会社に対する取締役の任務懈怠について必要か、第三者への加害について必要かといったものである等です。最高裁の大法廷判決の多数意見(S44.11.26 民集23112150頁)は上記の下線部分ですね。<o:p></o:p>

 

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 上記について、損害賠償を請求する第三者、即ち請求者は、取締役の職務執行について悪意・重過失について立証責任を負います。その意味は、最高裁判例によれば、「取締役がその職務を行うにつき故意または過失により直接第三者に損害を加えた場合に、一般不法行為の規定によって、その損害を賠償する義務を負うことを妨げるものではないが、取締役の任務懈怠により損害を受けた第三者としては、その任務懈怠につき取締役の悪意または重大な過失を主張し立証しさえすれば、自己に対する加害につき故意または過失のあることを主張し立証するまでもなく、商法266条ノ3=会社法4291項の規定により、取締役に対し損害の賠償を求めることができる。」としています。勿論この請求が認められるには、取締役の任務懈怠の行為と第三者の損害との間に相当の因果関係がないといけませんが、請求者の立証責任はかなり緩和されていますね。

 

 4292項について、VC等の投資契約では、代表取締役等の経営支配者(特に創業者等)に対して、投資判断の基礎をなした重要情報・事実について、会社と共に表明・保証をして、重要情報等が虚偽だった場合には、会社・経営支配者は、投資家が取得した株式を買取なければならないとする買取請求権プラス損害賠償が規定されます。勿論VCから是非投資をさせて欲しいとすり寄って行った案件では、力関係が違いますので、代表取締役等への買取請求条項・損害賠償責任を入れない契約(会社への買取請求や契約一般の債務不履行の損害賠償は規定される)もあるのですが、仮に代表取締役等への損害賠償を契約で規定しなくても、この条項で責任追及出来ますね。まあ、この条項まできちんと理解しているVCのファンドマネジャーは、あまりいないと思いますが。<o:p></o:p>

 

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社外・独立取締役等の立場の矛盾等

2012-07-01 18:07:07 | 商事法務

 

 会社法では取締役に一般的な義務として善管注意義務(委任関係=会社法330条民法644条)・忠実義務(会社法355条)を課しています。更に競業取引、利益相反取引にあたっては取締役会の承認という規制を設けています。当然これらの義務は、社外取締役や独立取締役にも及びます。会計の世界では連結が常識的になりましたが、これらの義務について株主等との関係では、まだまだ課題があり、うまく行っていないのではないでしょうか。ということで、いくつか思いついた事を書いてみましょう。<o:p></o:p>

 

 

 株主が指名した社外取締役は、往々にして株主重視・株主利益優先で、その会社の利益は二の次というのが実態ですね。会社法が忠実義務等を課していてもそんなことはお構いなしです。今回は、良く見受けられる株主が派遣する社外取締役の親会社・子会社間あるいは株主・子会社間の競業取引、利益相反取引について、いくつかのパターンに応じて考えて見ましょう。また併せて独立取締役についても少し触れましょう。<o:p></o:p>

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  子会社の社外取締役:親子の利害が一致しているので、親が高値で子会社に製品を売りつけても、連結だと一緒、親の立場で行動しても究極的には子会社の利益になる等という考えは誤りです。子会社には、そこで働いている役職員がいます。その会社としてキチンと利益を出さないといけません。子会社なので給与を安く抑えて親の事業に貢献すればよい等と考えてもらうと困るわけですね。ところが実際は子会社の利益では無く派遣元の親会社の利益を優先します。少数株主がいても関係無いです。少数株主が、重要取引先なら別ですが、少数株主のことなど殆ど考えませんね。これが実態です。子会社の取締役は、露骨なことは除いて結構忠実義務違反・利益相反取引を行うのですね。<o:p></o:p>

 

 

 仲良しグループの社外取締役:例えば三菱商事では、元三菱電機取締役会長(現産業技術総合研究所の理事長)や、三菱重工業の代表取締役会長が取締役になっています。逆に三菱商事取締役会長が三菱重工の取締役になっています。誰でもお分かりの通り、三菱商事と重工は、多額で多数の取引をしています。取引では売主・買主逆の立場です。当然利益は相反します。全部の取引について取締役会の承認を取っているのでしょうかね?<o:p></o:p>

 

 

 投資家派遣非常勤社外取締役:これは簡単ですね。VC等の金融投資家の目的は、出資先を上場させてキャピタルゲインを得ることです。ところが簡単には上場できません。上場でExitする案件は、うまく行っても10件中の投資の中で2件ぐらいですね。この場合の忠実義務は誰に対して果たされるのでしょうか。出資先に対して善管注意義務等があると理屈で分かっていても、当然自分のファンドへの忠実義務を果たそうとしますし、ファンドの利益を優先して考える訳ですね。<o:p></o:p>

 

 

○ 要するに、社外取締役は、自分の母体の利益を重視するという当たり前の事が行われており、そんなことは会社法は想定していないですね。利益相反など日常茶飯事で行われているということですね。<o:p></o:p>

 

 

○ 次に社外取締役とその一種である独立取締役についても少し述べましょう。東証などが主導して大企業では独立取締役を選出するということになってきました。独立取締役も本業を持っていますからね。要するに2重の仕事を持つ人は本業を重視しますよね。だから比較的無難なところと対外的にポーズを取るのに相応しいのは、学者・弁護士・元官僚というような、事業を理解していない有名な人たちとなります。企業にとってもNo harmですし、見栄えも良いから起用されるわけですね。<o:p></o:p>

 

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○ 社外役員の取締役会への出席状況、発言の状況等は施行規則124条により事業報告に記載しないといけませんが、いずれの役員も同じ文言で「高い見識に基づき(豊富な経験に基づき)中立かつ客観的観点から発言を行っています」ぐらいのことしか書いていません。この程度のことしか書いていないことにより、社外役員の実際の活動状況を推測させますね。まあ飾りですかね。取締役会の審議や決議に実際どれだけ役に立っているかを疑わせますね。でも少しずつ変化の兆しもあります。普通の会社では、独立役員等と言っておきながらその理由をきちんと書いていないところが多いですが、セイコーエプソンなどは、候補者とした理由の他に、「独立性について」ときちんと書いていますね。例えば、住商との取引高は0.1%未満であると記載して住商の元社長・会長を役員にしています。独立役員は東証の規定により届出しないといけません。形式的に独立役員の要件を満たしていても、明らかに非独立役員を独立役員として届けている例もあります。三菱商事では重工の会長を独立役員としています。誰が見ても独立役員とは言えないですね。三菱商事と重工はどれだけの取引があるのですか?利益相反取引の相手方ですよね。まあ、社外役員や独立役員の制度もまだまだ未熟だと言うことですね。<o:p></o:p>