まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

事業計画書のチェックポイント

2014-05-25 23:53:46 | 企業一般

 

○ 新規事業を始めるときに推進部局が事業計画書を作成して、取締役会等で審議しますね。事業計画書は、いつも右肩上がりで事業が順調に成長するモデルです。事業を行った人なら誰でも分かりますが、こんなものはただの数字遊びで、その通りになることはありえません。具体的な販売数量・単価・地域等、新規事業の詳細な人員計画も無しに数字の独り歩きで、担当部門は如何に魅力的な事業であるか、利益を確保できる事業かを説明します。数字に落とすと、売上が上がるぞ、利益も出るぞという錯覚に陥る人も居ます。そうなる気になるのですね。

 

○ 最近は、ガバナンスをきちんとする為に社外取締役を入れろという動きになっています。事業を知らない学者・弁護士・公認会計士等が社外取締役に選任されます。こういった人たちは、その道では能力もあり優秀な人たちなのでしょうが、共通する致命的欠陥があります。即ち①自分で事業を創造して育てたことが無い、②数字を見て、この計画は楽観的なのではないかと意見を述べるわけですね。私に言わせればナンセンスですね。

 

○ では、事業計画書で何を見るかです。一言で言えば、事業計画の前提条件と定性的な分析がどれだけキチンとされているかを見るのですね。工場操業の人員計画、その賃金、賃金上昇率(新興国では、毎年10%とか20%の上昇は当たりまえ)、物流コストは適正か、税金はどうなっているのか、組織図・組織構造はどういった考え方をしているか等。設備投資の金額は、業者からの見積もりがベースとなります。運転資金はキチンと見込まれているか、従業員のトレーニングコスト等も織り込んでいるか、減価償却は現地のGAAPに沿っているか、建設会社はどこか(日系ならまだしも、現地建設会社の場合は、必ずエンジニアリング会社を入れないと手抜き工事をされます)、資金は十分か、資本金の金額、借り入れを行うときの親子ローン及びその金利率(現地通貨建てですから10%とかも良くあります)。

 

 

  • こういった事項を見るのが重要ですが、一番重要なことは、誰が行うか、その経験・力量・経営力はあるかですね。結局数字にとらわれることなく、人を見るということでしょうか。

 

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米国倒産法とExecutory Contract(未履行契約)

2014-05-17 11:50:43 | 商事法務

 

  • 米国の取引先が倒産したときに、未だ履行されていない契約(executory contract)はどうなるのでしょうか?というのが今回のテーマです。会社再建型のChapter 11では、会社の事業は継続されますね。また、未履行契約ですから、倒産企業が、これを履行すればお金が入ってきますし、倒産して履行どころではないという企業もあるでしょう。

     

  • この点については、倒産法365Executory contracts and unexpired leasesの規定があります。例外はありますが、(a)項にthe trustee, subject to the court’s approval, may assume or reject any executory contract or unexpired lease of the debtor.」という規定があります。即ち、裁判所の承認を条件として、管財人は、契約を履行しても、拒否してもよいということになっています。再建型では、取引を継続しないと事業再建は出来ません、相手方にとっては不安はありますが、倒産会社が、主要取引先なら、管財人が履行を選択したらこちらも履行することになるでしょう。

     

  • では、管財人が履行を拒否した場合、他方当事者はどうすればいいのでしょうか?継続的な契約であるライセンス契約については、365(n)ではライセンシーに、契約を終了させる((1)(A))か存続を選ぶ((1)(B)項)かの選択権が与えられています。特許の使用権を得て、それで生産等行っている会社にとっては、やはり終了すると生産できないという自体も考えられますからね。従い、ライセンサーが倒産しても、ライセンシーは継続してライセンスの使用が出来ます。しかし、制限が生じますね。

     

  • (1)(B)以下の規定を引用(一部カット)して見ましょう。

 

(B) to retain its rights (including a right to enforce any exclusivity provision of such contract, but excluding any other right under applicable nonbankruptcy law to specific performance of such contract) under such contract to such intellectual property, as such rights existed immediately before the case commenced, for?

(i) the duration of such contract; and

(ii) any period for which such contract may be extended by the licensee as of right under applicable nonbankruptcy law.

 

(2) If the licensee elects to retain its rights, as described in paragraph (1)(B) of this subsection, under such contract?

(A) the trustee shall allow the licensee to exercise such rights;

(B) the licensee shall make all royalty payments due under such contract for the duration of such contract and for any period described in paragraph (1)(B) of this subsection for which the licensee extends such contract; and

 

(C) the licensee shall be deemed to waive?

(i) any right of setoff it may have with respect to such contract under this title or applicable nonbankruptcy law; and

(ii) any claim allowable under section 503 (b) of this title arising from the performance of such contract.

 

  • 制限としてspecific performance特定履行を請求することはできなくなります。即ち、ライセンサーは特定履行の義務から免れることができます。特定履行とは、ライセンス契約に、ライセンサーの義務として、第三者による特許権侵害を排除する義務、継続して技術援助(ソフトウェアの場合は保守契約の内容が記載されている場合)を行う義務、改良発明を継続的に開示する義務等がなくなります。言ってみれば、倒産を申し立てた・申し立てられた時点でフリーズして、その時点の使用権をライセンシーは継続的に使うことになります。

     

  • ライセンシーは、契約期間中、ロイヤルティーの支払義務を負い(特定履行が出来なくなった分どうするんだということまでは記載していません)、ライセンサーに対する相殺の行使が制限されます。

     

  • 共有IPについて、日本の特許法73条では、共有者全員の合意がなければ、譲渡、専用実施権、通常実施権の許諾が出来ませんが、米国では、他の共有者の同意なく処分が可能なようですね。

 

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企業を取り巻くリスク

2014-05-05 16:14:31 | 企業一般

 

  • 大企業では様々なリスクに対応するためリスク管理規定を作成してリスクに対応していますね。業種によってもまちまちですね。従い、自社にあったリスク管理規定をそのリスクに対する体制、チェックリスト等をきちんと整備する必要があります。

     

  • では、企業を取り巻くリスクにはどの様なものがあるのでしょうか?思いつくままにリスクの分類をして見ましょう。リスクには、自社のリスク、社会のリスク、経済上のリスク等いろいろです。

    カントリーリスク、商品相場リスク、為替リスク、投資リスク、市場リスク、取引リスク、コンプライアンス、自然災害リスク、人災リスク、環境リスク、物流リスク、製造物リスク、労務リスク、システムリスク、リーガルリスク、政治リスク、その他のリスク等があげられますというか、他にもいろいろあると思いますので、数え切れません。

     

  • 例えば、海外で工場を建てるときには、カントリーリスク、投資リスク、市場リスク等を分析してリスクとリターンの現状・将来予測などが必要ですね。工場を建設中のときでも日揮のアルジェリア事件のような事が起こります。火災・工事中の事故にも備えないといけません。工場ができれば工場のみならず、在庫品等にも火災保険を掛ける必要があります。

     

  • 新興国では、不明朗な腐敗役人も相手にするようなリスクもありますし、政府の監督官庁が金を取ろうと、用事も無いのにやってくることもあります。そうかといって、直ぐに金を渡すわけにも行きません。例えば、中国はフィリピンとも国境紛争を抱えています。突然バナナの輸入を停止したり、レアメタルの日本への輸出を停止したりといったことを行います。

     

    政府レベルではなく市政府レベルでも同じですね。これに対して欧米企業等は、地域社会貢献策とか小学校を建てたり、もう少し進んだ国では地域の財源不足の交響楽団に正々堂々と寄付をして、市長を招いて記念演奏会&食事会等もやります。これもリスク対策ですね。この種のリスク対策は、日本企業は不得意ですね。

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海外子会社出向者の行為の本社取締役の責任

2014-05-03 20:07:13 | 企業一般

 

  • 最近は、海外の子会社・合弁会社への出向者が増えており、出向先で現地法令に違反する行為が時々新聞等で報道されるようになりました。中でも、新興国での「お金の使用」が問題になるケースもだんだん増えていますね。明らかに贈収賄のケースもあれば、そこまで行かないファシリテーションペイメントもあります。ファシリテーションペイメントについては、止むを得ない場合も多いですから、可罰的違法性はないということでしょうか。例えば、中国で機械を生産している会社が、日本から中核部品を輸入しようとして、税関の役人が他役人同様金を取ろうとして輸入ストップする例があります。それがないと生産がストップして納入先に大変な迷惑を掛ける等のとき、お金を使わざるを得ないような場合もあります。

     

  • 国によって、例えばタイではBhts3,000を超える利益提供を受けた場合は、公務員側に報告義務がありますし、ベトナムでは200万ドン(約8000円)を超える利益提供をしたら、刑法上の賄賂になります。そうかと言って、この範囲内ならいつでも大丈夫ということも言えないのですが、まあ一つの基準でしょうか。国によっては、裁判官から金を要求される例も多いですね。ある国の裁判官は、両方から金をもらったのですが、敗訴させた方には、お金を返した例もあるようです。

 

 

  • まあ、お金はまずいというので、物を送る場合も多いですね。通常の社会儀礼の範囲なら大丈夫と言えるでしょう。例えば中国では中秋のときに月餅を送る習慣がありますので、それぐらいなら大丈夫ですね。私の知っている不思議な例は、中国のある市で多くの税金を払っている日系企業に、市政府税務局から連絡があり、会社訪問するとのこと、その税務署の職員は、手土産として茶器セットとお茶を、その企業に持ってきました。税務署から贈り物をもらったのですね。

 

 

 

  • 問題は、現場でこういった事が行われている事に無頓着とか、知らない本社役員が多いことです。グループ全体の指針も作っていないケースも多いですね。やはり、グループ全体ルールと、各国の状況を踏まえたローカルルールをきちんと作っておくべきなのですが、これまた簡単ではありませんね。大会社の取締役会は、内部統制システムの構築を決議する義務があります。学者先生のくだらん議論では、この規定について、内部統制システム構築の決定を義務付けるものであり、構築義務までを課すかについては争いがあるようですね。でも、金商法では、連結ベースですので、子会社のみならず関連会社まで含まれることになります。

     

  • 最近は、米国独禁法違反で、現地子会社の役員が懲役刑を受けて服役している例があります。業界体質等百も承知の本社役員の責任が追及されていませんね。昔、M商社の米国子会社出向者がカルテル行為関与で、親会社のM社が米国で罰金を支払い、また民事訴訟でも和解金を支払ったことで株主代表訴訟が起こされましたが、出向者に対する親会社の取締役の監督責任が問題となりました。裁判所は、親会社の取締役は、出向者の違法行為を認識することが可能であったとは言えないとして責任を否定しました。出向者に対する指揮命令は出向先会社であり、出向元の親会社の取締役は、原則として監督責任を負担しないという理屈ですね。トカゲの尻尾きりの理屈が通ったのですね。でも、今は、そんな時代でもなくなりつつあるように思います。

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