まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

新設分割計画の実行

2015-08-16 22:04:39 | 企業一般
○ 会社分割には、新設分割と吸収分割がありますね。会社分割の実務の大変さを承知している適切なアドバイザーがいれば、吸収分割の方をアドバイスするでしょうね。M&Aが専門という看板を立てている弁護士は、大抵看板倒れで実務などの知識・経験はないですから、あまりあてにはしない方がいいでしょう。吸収分割が良いのは、受皿会社を設立しておいて、その会社が吸収分割すれば、ある程度事前準備ができますからね。まあ、今回は、新設分割を行った場合の注意点等(一部吸収分割とも共通の事を含む)を記載してみましょう。

新設分割設立会社の登記:分割会社が定めた日(3月期決算会社は、通常10月1日か4月1日から2週間以内に、通常下記のような書類を添付して登記申請します。
・新設分割計画書・定款・株主総会議事録・設立時取締役の一致を証する書面(分割計画記載の設立時役員)・役員就任承諾書・代表取締役個人の印鑑証明書(取締役会設置会社)・資本金額の計上に関する証明書・設立時代表取締役選定を証する書面新・設分割会社の登記事項証明書(管轄登記所が異なる場合)
債権者保護手続については、分割会社が併存的(重畳的)債務引受(又は連帯保証)する場合は省略できますね(法810-1-2)。
-仮に10月1日を分割日としてすぐに登記申請しても、登記事項証明書が出来上がるのは1週間から10日ぐらい必要ですね。税務署への法人設立届とか、許認可、不動産移転登記等に大量に必要ですね。新会社設立+吸収分割方式にしておけば、事前にできるものがかなりありますね。

分割会社・分割設立会社の確定決算:4月1日なら3月末で確定決算しますが、10月1日会社分割でも9月30日付けで確定決算しないと、分割設立会社に譲渡する資産・負債等が確定しません。従い、経過勘定・退職給付債務等の額を期末決算と同様の手続きで確定させます。それに基づき、10月1日の開始BSでは、分割会社に残っている資産・負債、分割設立会社に移転した資産・負債を作成します。
分割設立会社の純資産の部(株主資本)は、このBSの資産マイナス負債の金額ですね。そこから分割計画書記載の資本金額(=登記のときの証明書の金額)を引いた金額が、資本剰余金の「その他資本剰余金」になります。会社分割は、資本取引ですので消費税はかからないですね。

各種届出・変更:税務署に法人設立届を出さないといけません。登記簿謄本は当然として、設立時のBS等の書類添付が必要です。併せて、源泉所得税の届出書、消費税の各種届出書、その他青色申告承認申請書等などの提出が必要です。その他包括承継で譲り受けられる許認可もあるかもしれませんが、いちいち分割設立会社に移転した旨の届出が必要です。不動産の移転登記も必要ですね。

分割設立会社の銀行取引:大企業の会社分割では、銀行も設立会社の登記簿謄本を出さなくても口座を分割日から解説してくれるようになったと聞きました。でも中小企業では、登記簿謄本も出さないのに銀行口座を開設してくれるとは思いません。口座開設しても、お客さんが従来通りの口座に振り込んだりして、口座の入金が、分割会社なのか、分割設立会社なのか、きちんと確認しないといけませんね。

健康保険・労働保険:分割設立会社の被保険者が、常時700人以上いれば、国から認可を受け新たに健康保険組合を作れますが、相手が厚生労働省ですからね。早くても2-3か月ぐらいかかるのではないでしょうか?>健康保険証は10月1日の会社分割日から必要です。子供が病気になったとか、月初めには毎月保険証をみる病院も多いです。総合型の健保の場合なら、もう少し早く手続きが進むかもしれません。労働保険関係の手続きも必要です。

厚生年金・企業年金の承継・創設等:これも各種届出が必要です。当然勤続年数の通算等が必要です。分割会社に企業年金制度がある場合には、分割設立会社でも同様の制度設計が必要ですが、これが直ぐにできませんね。いわゆる確定拠出年金は、日本では年金積立金は会社拠出が原則(米国では制度を会社が設計し、この枠組みの中で個人が選択して、個人が拠出し会社がmatching contributionする個人の制度)ですが、この制度などは、分割設立会社ができる何か月も前から準備をしておく必要がありますね。
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合弁契約の関連契約

2015-08-08 08:16:07 | 企業一般
○ 新興国で工場を建設したり、製品販売をしようとするときは、やはり現地の事情を知っている現地パートナーと組んで、合弁会社を設立することがよくあります。そして、そのパートナーと合弁契約を結びます。しかし、それだけでは会社は動き始めません。合弁契約で、会社の本店住所、資本金や株式保有比率、役員構成などを決め、また定款を定め、会社登記局などに登記を済ませば会社はできますが、中には何もありません。従い、合弁契約に、当事者の役割を記載して、会社が成立すれば、それぞれが協力し合って会社を立ち上げます。ということで、今回は、どういった立ち上げに必要な契約があるのか一例をあげましょう。

○ では、会社立ち上げのための各種契約にはどんなものがあるのでしょうか。まず列挙しましょう。①工場建設用地取得契約、②工場建設のエンジニアリング・建物建設契約、③オフィスリース契約、④総務・管理業務委託契約、⑤ローン契約、⑥アパート賃借契約、⑦技術支援契約、⑧経営委任・派遣契約、⑨その他契約ぐらいでしょうか。

工場用地取得契約-国によって外資系企業は用地の取得ができません。中国やインドネシア等は土地賃借権・使用権の取得契約となります。工業団地などでは、その団地の運営会社が協力してくれますが、普通の土地の取得なら手間がかかります。普通は、現地の土地の状況、不動産取得、手続き、注意点を知っている合弁パートナーの協力を得ます。土地の調査―汚染、地耐圧、周辺環境、電気・ガス・水道の利便性、排水処理方法等種々の規制がありますので、やはり合弁相手の協力を得ます。

工場建設のエンジニアリング・建物建設契約-日本の大手建設会社なら大丈夫ですが、現地の普通の建設会社なら、まず日本人のレベルから行ってまともにできないでしょう。中国・インドなどでは、別に決められた設計図・計画などお構いなしで、いろんな手抜きを行うのが常識です。ですから、その上にエンジニアリング会社を置いて、計画通り・設計通り進むように手当てします。といっても計画通り進むことはまれです。遅れます。建設現場の連携は非常に悪いので、上工程ができるまで下工程は着手しませんし、自分の担当分野しかしませんので、単体は完成しても、連結してもうまく進まない、ましてや全体最適などは考えていませんので、そこは欧米委の一流・優秀な、でもお金も高いエンジニアリング会社の起用が必須です。高くても、それが結局得なのです。

オフィスリース契約-合弁会社への出向者が決まっても、本社工場ができるまでオフィスがありません。合弁パートナーのオフィスの間借り契約も必要です。

総務・管理業務委託契約―工場建設・関連の許認可取得などは合弁相手に頼みましょう。現地語で書類作成などできません。言葉が通じません。原材料を海外から手当てするときは輸入ライセンスが必要です。また現地語・現地のGAAPで経理をスタートさせなければなりません。しかし、優秀で信用できる人など簡単に採用できません。合弁パートナーに手伝ってもらうわけですね。

ローン契約-資本金のみでは資金が足りない場合には、株主からのローン供与の契約を結んで資金投入をします。中国では、投資総額・登録資本が批准証書にきさいされますので、その範囲の親子ローンですね。インドでは、株主は運転資金のローンはできません。あくまでも設備投資のローンです。ローン供与でも新興国では規制があります。

アパート賃借契約-出向者は普通、現地で外国人用の高級Condoを社宅契約で結びます。この契約書は、不動産仲介会社がひな形に記入して用意をしてくれますので、それに署名すればいいですね。

技術支援契約-工場立ち上げには、工場のレイアウト、機械設備の選定、据え付け、試運転等の支援が必要です。日本側の合弁パートナーが結ぶケースが多いです。

経営委任・派遣契約-これは派遣経営者、従業員の出向と合弁会社の雇用条件等を記載します。現地での労働ビザ取得に必要な場合も多いですね。

その他-工場が立ち上がれば、技術提供のライセンス契約、原材料輸入契約、現地販売代理店契約、従業員雇用契約など、いろいろな契約を作ります。

まあ、労力がかかるということですね。
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