○ 昔、私がコンサルタントみたいなことをやっていたときに、ある中堅企業から米国で会社を作りたいと言われました。ということで設立準拠法をデラウェア州として会社設立手続きをしました。勿論実質的な本店所在地は別の場所でした。また、米国の上場会社の半分以上はDelaware州の会社だと思います。なぜ登記地をデラウェア州として、デラウェア州会社法を準拠法として会社を設立するのでしょうか?今回は、その理由の解説です。<o:p></o:p>
○ 米国の会社法は州法により定められていますね。従い州法により内容が異なります。上場企業等の株式等の証券の発行・開示については連邦証券法、公開買付についてはWilliams Act of 1968、また最近では内部統制のSOX法、即ちSarbanes-Oxley Act of 2002等は連邦法ですね。<o:p></o:p>
○ まず、どの州の会社法に準拠して会社を設立するかは発起人(Incorporator)が自由に選択できます。手続的な要件(登記+訴状受領の代理人等)を満たせば、本支店・工場等をどの州に設けようが自由ですね。<o:p></o:p>
○ ではなぜデラウェア州が選ばれるのでしょうか?
1) 1899年の制定以来、株主・取締役の自治を重視した柔軟なものであり、発起人にとって便利だったからですね。<o:p></o:p>
2) デラウェア州は、東海岸に面した全米でもロードアイランド州次いで小さな州ですが、起業家にとって都合の良い法律を作って、企業誘致を計り、会社設立手続きにともなう租税収入を増やそうとしたわけですね。ただ、会社にとっては営業税等の州税を払わされてはメリットが無いわけですから、州内で営業しなければ州税の支払い義務も免除されますね。<o:p></o:p>
3) 他の州もデラウェア州のまねをして会社法の規定を緩和していますし、日本の会社法も緩和されていますが、デラウェア州法の特徴は、以下等ですね。
① 発起人は1人でもよい。勿論会社でも個人でもPartnership等でもよい。
② 資本金の下限が無い。
③ 株主総会・取締役会は、州外で開催可能。
④ 株主総会・取締役会は、実際に開催することなく、書面上の全員一致により決議可能。
⑤ 取締役は1人でもよい。
⑥ 1人のOfficerが、全ての役職(CEO, Treasurer, Secretary)を兼任できる。
⑦ 取締役会に付随定款(By-laws)の作成・変更権限を付与できる。
⑧ 自社株式の購入、自己株式の保有・売却が可能。
⑨ 役員(Directors & Officers)は、Duty of Loyalty(忠実義務)やDuty of Care(善管注意義務)を負っていますね。米国の株主は、すぐに役員に損害賠償を請求する代表訴訟を起こしますが、基本定款(Certificate of Incorporation)にその旨の規定を置けば、役員の受任者としての注意義務違反から生じる会社・株主に対する損害賠償の責任を制限することも可能(1986年改正)<o:p></o:p>
多くの会社がデラウェア州会社法の法人ですので、当然判例の蓄積も多いですね。即ち、事件例が多いということは、問題が起きれば判例を調べれば予見可能性が大きくなるという事ですね。<o:p></o:p>
○ デラウェア州の会社法を巡る、その他の特徴は以下ですね。
1) デラウェア州の裁判所は、他の大多数の州と異なり、二審制を採用しています。第1審が、デラウェア衡平法裁判所(Delaware Court of Chancery)であり、第2審が最終判断を下すデラウェア最高裁判所(Delaware Supreme Court)ですね。正義と衡平の見地から柔軟な裁判を行います。多くの州では事実問題を認定する小陪審(petit jury)がありますが、デラウェア州では裁判官が判断を行います。
2) デラウェア州会社法の影響力が大きくなり、州毎に異なる弁護士といえども会社法はデラウェア州会社法を知っています。ただ、実際に蓄積された諸問題の判例や理論的な問題の解決を計るため、毎年細かな会社法改正が行われているようですね。→というわけで、キチンとキャッチアップ出来ないので、私がつまみ食いで読む会社法は、模範事業会社法です。<o:p></o:p>
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