○ 米国の物的担保です。ご承知の通り、法律上当然に認められる法定担保権と債務者と担保権者間にて契約で生じる約定担保権がありますね。法的担保権としてはLienがあります。日本語では先取留置権とでも言った方が良いでしょう。当初は、占有の取得と継続が条件でしたが、衡平法により占有に関係なく認められるようになったようです。Warehouseman’s LienとかMaritime Lien(Lien for freight)等ですが、Tax Lien等もあります。物的担保としては、① Mortgage、②Deed of Trust (以上が抵当権)、③Pledge(質権)、④Title Retention Sale(所有権留保売買)、⑤Chattel Paper (動産担保証券)等が主なものでしょうか。<o:p></o:p>
○ 不動産担保権(Security Interest in Real Property) ? 不動産担保は、その地域・土地と人々との取引が基礎としてあるので、各州ごとに発展しており、共通点もありますがどうも各州ごとにいろいろな差異もあるようですね。スキームとしては、Deed of TrustはTrustですから3間契約ですが、MortgageはMortgagor(債務者)とMortgagee(債権者)間の2者間契約ですね。Trustの発達している米国ですので、Deed of Trustの方式の方が有力なようです。<o:p></o:p>
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○ Deed of Trustでは、Trustor(債務者)、Beneficiary(債権者)とTrustee(債権者の為にTitleを保有する者=一般的にはTitle Insurance & Trust Company)の3者間で約定されます。Titleは、債務者からTrusteeに移転され、TrusteeはTrustorの為にTitleを持つわけですね。債務者がdefaultしたときは、Trusteeが競売により換価処分(Foreclosure)を行います。換価処分には、裁判所の後見無しに競売できる任意換価処分(Foreclosure by Power of Sale)ができる州もあるようですが、裁判所の後見のもとに司法換価処分(Judicial Foreclosure)を行うのが多いようです。<o:p></o:p>
○ 動産担保権(Security Interest in Personal Property)については、Uniform Commercial Code(UCC) Article 9に規定されています(UCCは不動産担保には適用されません)。しかし、各州には、従来の法律や慣行もあり、必ずしもUCC通りではないようです。
Article 9は、9-104に定める適用除外を除き、動産又は附従物(Fixture)に対してSecurity Interest(担保権)を設定しようとする全ての取引、及びAccounts又は動産担保証券(Chattel Paper)のsaleに適用されます。また、委託販売取引(Consignment)/Lease取引でも当事者の意思が担保取引の場合、所有権留保売買(Title Retention Sale)は担保のためと推定されます。但し、連邦制定法による担保権、Landlord Lien、役務・資材提供した者が取得するLien、賃金請求権の移転等には適用されません。<o:p></o:p>
○ 担保物(Collateral)- 担保権の対象財産は以下のように分類されます。
① Goods (物品)-消費者用物品、事業用物品(Equipment)、農産物(Farm Products) & Inventory(棚卸資産)です。
② Documents (権原証券)-Bill of Lading(船荷証券)やWarehouse Receipt(倉庫証券)等
③ Instruments (金銭・投資証券)-小切手、手形、譲渡性預金証書、社債券その他
④ Chattel Paper (動産担保証券)-金銭債務と特定商品における担保権の両方を証する書面
⑤ Accounts ? 販売・リースされた物品・提供役務に対する支払請求権で、Instrument/Chattel Paperによって表章されていいないもの。
⑥ General Intangibles (一般無形資産)-Patent, Trade MarkやCopyright等<o:p></o:p>
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○ 約定担保権の設定(Creation)は、Security Agreement(担保契約書)に署名するか、担保物が担保権者の占有となることにより成立しますが、第三者に対する対抗力の具備(Perfection)が必要です。この具備には、指定Office(Secretary of State等)でのFinancing Statementへの登録、占有等が必要ですが、何もしないでPerfectionとなる場合もあります。Perfectionをしないと第三者に対して優先権の主張ができなくなります。即ち、担保権は発生(attach)しないと、債務者・第三者に対してenforceableとはなりません。また担保権者間では、先にattachした方が優先します。<o:p></o:p>
○ 担保権の実行(Enforcement)は、債務者が担保契約書記載の契約違反=defaultをすると担保権者により行われます。担保権者は、Judicial Processによらずに担保物の占有を回復して、9-504(3)の手続きに従い、Commercial reasonableな方法で、事前に債務者に書面による通知を行ったうえで、private or public saleによりCollateralの処分を行います。担保権者は、Enforcementに要した費用や担保契約書に規定する弁護士費用を差し引いた後、担保された債務に充当し、残余があれば劣後の担保権者の債務に充当し、更に余剰があれば債務者に返還されます。