まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

常識「会社は株主のもの」という非常識

2015-03-29 20:21:24 | 企業一般
○ 米国で勉強された人は、会社は株主のものという当然の理屈に洗脳されて、それを疑う人は少ないですね。証券業者の人もそうですね。株式を扱っている人ですからね。多くの人が「会社は株主のもの」と認識すると、これに異を唱えることは難しくなりまし、異論を唱えると批判や反論がでます。

○ 2008年1月24日、経産省の北畑隆生事務次官は、(財)経済産業調査会主催講演会で、「株主は(企業経営)能力がないうえに浮気者、それから無責任、有限責任であり、配当を要求する強欲な方」と発言しています。

○ 東大の岩井教授は、会社は所有の二重構造であると言われています。民法や商法の教科書では「本来ヒトではないが法律上ヒトとして扱うことのできるモノ」と定義されています。つまりヒトとモノの二重性があって、会社はモノとして株主に所有されると同時にヒトとして会社財産を所有する「二重の所有関係」にあるわけです。この法人の二重性からコーポレート・ガバナンスの問題を紐解くと、いわゆる米国型は株主によって所有される「モノとしての要素」が強調され、逆に日本型では会社財産を所有する「ヒトとしての要素」が強調されていることが見えてきます。つまりどちらが正しいということではなく、2つの側面のそれぞれ別な面を強調しているに過ぎないのです。

○ 優良企業のJohnson & Johnsonでは、我が信条(Our Credo)として、企業理念として、第一の責任は顧客(医療関係者等)に対する責任を果たす。二番目は全社員への責任。第三番目は社会に対する責任、そして四番目の最後の責任は株主に対する責任を果たすと宣言しています。何でも、株主comes first等ということは言っていません。

○ H22.3の平成21年度M&A市場における公正なルール形成に関する調査である「諸外国の上場企業法制に関する調査」報告では、従業員代表が会社の意思決定手続きに直接関与することを会社に義務付ける制度を持つ国について記載されています。共同決定法のドイツや取締役会又は監査役会メンバーの一定数を従業員から選任する制度を導入することができるフランスですね。

○ 会社は株主のものいう人は何を根拠に言っているのでしょう?アメリカ人が言っている、アメリカのビジネススクールの教科書に書いてあったとかでしょうか?あるいは、周りの人が、そう言っているからでしょうか?

会社法に、「会社は株主のもの」という規定はありますか?そんな規定はありません。株主は株式の保有者ですが、会社の保有者等ということは書いていません。会社の純資産を米国のまねをして「株主資本」という呼び名をつけています。おかしいですね。株主資本等と呼んでも株主の実際のCash outの投資に対して株主資本が戻ってきますか?Cash inで戻ってくるのは配当ですね。利益剰余金(実際は「その他利益剰余金」だけのケースが多い)は、株主が拠出したお金ではありません。その会社の役職員が、汗水たらして稼得したお金部分です。勿論株主は元手を出してくれましたから、配当で報いないといけません。しかし、元手が自動的に増幅した訳ではありません。役職員が働いたから利益剰余金ができたのです。利益剰余金は株主が生み出したモノではありません。

会社は、そこで働く従業員全体と株主の特殊な共有物と考えるのはどうでしょうか?

各国の署名・記名捺印&会社印押捺

2015-03-08 22:37:52 | 商事法務
○ 会社印などを押す制度の国は、世界でも多いですね。今回は、英国、中国、タイ、日本と、最近はあまり見かけない米国のことについてのべてみましょう。

○ 日本では、会社法等に署名又は記名押印という言葉が頻繁に出てきます。日本では、代表取締役の制度を採用していますので、署名とは代表取締役が署名することですね。又は記名押印ですから、別に署名すれば、記名押印しなくてもいいのですが、現実は記名押印が多いですね。押印の印は、「xx株式会社 代表取締役の印」となっていますので、会社の印では無く、代表取締役個人の印鑑です。これのほかに慣習的に四角の角版のいわゆる社印があります。

○ 会社印の制度は、英国(系の国々)、中国、タイ等でも見られます。Common SealとかCorporate (Common) Sealとか呼ばれているものですね。英国では、厳密にはCorporate Sealを押すには取締役会の決議がいるようですが、中国のように気軽に何でも、会社の本当の書類ですよというのを証明する役目のために会社印を押す場合も多いですね。

中国では、会社印等の印鑑類は公安の確認を得ないと調整できないですね。その他法定代表人の印鑑とかいろいろな印鑑が必要ですね。会社印の制度は、日本の角版の制度とよく似ていますね。その会社が確認した書類であるという意味でしょうか。

○ タイでも、Common Sealをよく押しますが、それは中国のように、この書類は本物ですよという意味でしょうか?タイでは、民商法の会社法部分には、Common sealという言葉は出てきませんが、Partnershipのところにはsealed with the common seal of the partnershipという言葉が出ていますので、会社印の作成・捺印が前提になっています。このCommon Sealの効力・役割は、よくわかりませんが、銀行などは、なんでもかんでもこれを押印するように求めます。また時々政府系の公団とかの契約書には、毎ページこれが押してありますね。これは、確かにその会社が押印したものですという意味なんでしょうね。毎ページ会社の社長なりがイニシャルサインをしたほうが確かなような気がするのですが、それも大変ですので、会社印で簡略化していますね。

○ 英国では、Common sealの押してある書類は、約因(Consideration)がなくても、enforceableですね。いわゆる捺印証書です。捺印証書は、Formal contract=要式契約ですので要式が必要です。例えば無償の贈与契約=約因のない契約や負担する債務の内容を書面にして、以下の3つの要件が必要です。①署名。②捺印=法人の印章・会社印ですね。及び③交付(delivery。効力を発生させる行為ですが、現実の交付は要件とはなっていない)。

○ 米国では一般的に契約書に署名しますね。本来の英国流で言えばこれに捺印が必要ですが、最近は捺印しません。約因が無くても書面になっておればenforceable としている例が多いですね。でも昔は、署名の後に「Seal」とか「L.S.」=locus sigilli=place of the sealと記載して簡略化していましたが、これも省かれました。最近は、署名してこれをPDFで送信して、それに署名をすれば、これで契約成立としていますし、丁寧に、それで契約成立だと文言を書いてある契約も見たことがありました。

○ 会社印の制度、その使用態様などは、各国ごとに違いますし、法律に書いていませんので、まあ実例に当たって対応することになるでしょうね