まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

大企業の資材調達の建前と実態

2010-06-26 23:04:45 | 企業一般

     今回は、少し話題を代え、大企業がはやりのCSR等に呼応して行動規範や調達方針を制定していますが、これが現場と遊離したり、言葉だけで終わっている、即ち簡単に言えば、立派なこと言っているわりに、実態は違うということを指摘してみましょう。

     ある大会社のWEBに資材調達基本方針として、以下のようなことが記載してありました。

・基本的な考え方:グループの企業価値の向上とともに、取引先との相互発展に貢献。

・平等な競争機会の提供:調達情報の適時・適切な発信と平等な競争機会の提供。

・公正な取引先の評価・選定:取引先の評価・選定は、経営の信頼性、調達品等の価格・品質・納期はもとより先進的な技術力及びCSRの視点並びに事業継続の視点等を加味し、総合的に行なう。

・相互の発展:コミュニケーションを密にして、信頼、発展できる関係づくりに努める。

・情報の管理保護:適正に管理・保護。

・調達姿勢:グループ行動規範に基づいた調達姿勢で業務遂行致します。

・対等で公正な取引の実行:対等・公正な立場で接し、関係法令及び契約に従って誠実な取引を行なう。

・優越的地位濫用の禁止優越的地位を利用した不当な不利益を及ぼす取引を行なわない。

・誠実な取引の実行:職務に関連して、利益や便宜の供与を受ける等の個人的な利益の追求は行わない。

     上記の中で、最も守られないのが、対等で公正な取引の実行と優越的地位濫用の禁止、つまり不公正であり、独禁法に違反するかどうかは別として、力関係で優越的地位の濫用が、日常茶飯事に行われています。

○ この会社の資材基本契約書の雛形には、一例として以下のような条項があります。

「納入業者から甲(この大企業)に利用許諾される、納入業者又は第三者の著作物(=許諾著作物)の利用範囲は個別契約で定める。個別契約で定めがないものは、甲・甲の関係会社は、甲自ら複製・改変・譲渡・貸与・公衆送信でき、また第三者に使用権の再許諾ができる。

これ程納入業者の知的財産をバカにした、また無視した規定はありませんね。特に「譲渡」というのは如何なものか。他人のもの(著作物)を、譲渡・売り飛ばせると規定されています。権利侵害ですね。

     この会社のこの規定は、私が知っている中でも一番下請業者をバカにした規定です。また、基本契約は絶対に変更しないという態度も気に入りません。まあ、同業他社の大企業の資材取引基本契約も、似たような規定が多いですけどね。

○ 独禁法で摘発されるのは、氷山の一角で、やりすぎの例だけです。納入業者が如何にいじめられているか、不公正な立場で取引を強いられているかですね。

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のれん=非償却資産の理由は不明

2010-06-06 18:28:06 | 企業投資

○ 国際会計基準や米国会計基準では、のれんは償却資産ではありませんね、ところが、日本の会計基準では、現在のところ最大20年の償却資産ですね。

       米国では、2001年に財務会計基準書(SFAS)第142号「のれんその他の無形資産」で、減損テストは行ないますが、のれんの規則的な償却を認めない旨を公表しました。それまでは40年以内に規則的に償却しなければならないと定めていました。これを受けてのれんの規則的償却を定めていた国際会計基準(IAS)第22号「企業結合会計」に代えて,国際財務報告基準書(IFRS)第3号「企業結合」を2003年に公表して,のれんの規則的償却を認めなくなりました。国際会計基準も米国会計基準でも償却資産だったのですね。

○ なぜ非償却資産としたのでしょうか?その理由がはっきりしません。理由としては、①償却期間に合理性が無く、恣意的に設定できる。②のれんの価値は減らないから。③価値が下がれば減損処理すればよいからということが書いていました。①については、合理的に考えて一定期間、例えば10年とすると社内の連結会計規則で決めて開示すれば良い事ですが、どうもその辺の開示はきちんと行われていないようですね。社内で10年と決めておきながら、大型の買収をしたある会社が、この件だけは20年とか恣意的なことをするからいけないのです。②については、自家創設のれんはのれんとして計上しませんから、例えば他社から買収等したのれんは、ほっとおけば当然価値は減ります。また、上記の考え方は②と③が矛盾します。価値は減らない、でも価値が減ったら減損すれば良いという考え方というのはおかしな考え方ですね。納得性の無い・合理的な根拠のない考え方ですね。

○ 米国では、2000年前後ITバブルでM&Aが盛んでしたから、買収企業は莫大なのれん代を計上しましたね。見かけの利益を増やすには、償却資産が少ないほうがいい訳ですから、業績をよく見せかけよう、株価をアップさせようなどという不純動機が、裏であったのではと勘ぐりたくなりますね。

       どうして、価値が減らないのですか?コカコーラとかマクドナルドというブランドは一流ののれんですね。しかし、その価値の維持のために多額の広告宣伝費・販売促進費を使います。これらの費用によりブランドが維持されているのです。ほっとけばブランドは、急激に廃れて価値が落ちます。コカコーラが、10年も広告宣伝をしなければ、街の自動販売機を見て「まだあるんだ」とか「もう消えたと思ってた!」となりませんか。

○ 即ち、多額の費用を使って価値を維持・増進する。でもその部分は自家創設のれんの部分ですね。取得した部分は、右下がりで価値が減価していきます。もし価値が一定なら、取得部分は減価していき、自家創設部分がその分増えるから、結果として価値が維持されている。しかし、自家創設のれん部分は計上しませんから、取得したのれんは価値が減少します。なのにどうして非償却資産とするのででしょう?⇒私は、非償却資産とする合理的説明をしている資料や論文を見たことがありません。(根拠を詳説した論文などをご存じの人はご教示お願いします)

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のれん=超過収益力は間違い

2010-06-05 21:52:59 | 企業投資

  今回は「のれん」の話です。そもそも「のれん」とは何かですが、いろいろな角度から、まとまりの無い見解があるようですね。企業結合会計の形式的な基準としては時価ベース純資産との差額ですね。②のれんとは「超過収益力」であるという人がいます。「のれん」は将来キャッシュフローへの期待に対して支払った金額で、特定のものを資産計上したものではないという考え方もあります。更にのれんとは買収時に承継した特定の「なにか」を資産計上したものであるという考えもあります。「なにか?」とは「なんやねん」と言いたいですね。上記の中で、もっとも一般的な考えは、「のれんとは超過収益力である」ですね。そう考えている人が多いですね。財務会計の教科書にもそういった事が書いていると思います。結論を先に言いますと、この考え方は誤りです。

○ 上記①の会計上の考え方では、例えば買収価額のうち、対象会社の時価ベース純資産との差額ですから、PBRPrice Book-Value Ratio:株価純資産倍率=厳密には1株当たりの株主資本ですが、ここでは時価ベース純資産の何倍で株式を取得したかという意味)が1を超える価格で企業買収すれば、正ののれん、1未満なら負ののれんとなります。超過収益力とか平均利益金額とは関係がありません。

○ ②のれんとは超過収益力であると一般的には考えられています。税務の考え方もこれですね。相続税財産評価基本通達の165営業権の評価で、超過利益金額とか平均利益金額とか言っていますね。また、最高裁判所の判例でも、「営業権とは、当該企業の長年にわたる伝統と社会的信用、立地条件、特殊な製造技術及び特殊の取引関係の存在並びにそれらの独占性等を総合した、他の企業を上回る企業収益を獲得することができる無形の財産的価値を有する事実関係」としています。

       ③の考え方は良くわかりません。将来キャッシュフローの現在価値がのれんということでしょうけどね。のれんに基づく将来のキャッシュフローを維持するには、常に広告宣伝費等を投じて、ブランド維持をしないといけませんが、これは自家創設のれんですね。今の会計では自家創設のれんは認識しませんね。この点は次回にでも触れましょう。

       買収・合併等のM&Aが行われるとのれんが計上されますね。M&Aの対象企業っていうのは、平均利益を上回る超過利益を出している優良企業が対象になるのでしょうか?そんなことは無いですよね。他の企業と比べて業績がいまいちだけど、買収企業の資源と組み合わせて相互補完・相乗効果を発揮すれば、業績も向上すると考えてM&Aを行う訳ですね。即ちM&Aの対象企業は、超過収益力等無い企業が多いのです。しかしのれんが計上されますね。こういったM&A対象企業を調べて、実証してのれんとは超過収益力であると言っている方がいますか。そうでは無いですね。それなのにどうして「のれん」とは超過収益力ですと言うのでしょうか?

       では「のれん」とは何でしょうか。これは私の定義です。「人により、物(技術込み)・金・情報(知恵)等を有機的一体として継続的に機能させ、一定の取引分野で継続的顧客等を有する収益基盤である」とまあ、分かったような、分からないような定義をしておきましょう。のれんを維持するのは人です。人が良質な商品・サービスを提供し、約束(取引条件)を守り、継続的な信用・信頼関係を維持し増進します。人の地道な努力によりのれんが蓄積します。企業を買収しても重要な人が急減・去っていったら、のれんも減損しますね。のれんとは人が、従来の基盤をもとに、物・金・情報等を利用して維持・発展させるものです。

       BSを見て下さい。資産マイナス負債は純資産ですが、純資産の構成要素は物・金・知恵=知的財産等ですね。仮にPBR2(純資産の2倍の価格)が買収価額としましょう。この場合のれんの金額も純資産と同じですね。この「のれん」とは何でしょうか。それは、人の活動から生まれた収益基盤を評価した価値です。こういう基盤あるいは人の価値を見ることが重要な事であり、これが「のれん」なのです。

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