○ 今回は、少し話題を代え、大企業がはやりのCSR等に呼応して行動規範や調達方針を制定していますが、これが現場と遊離したり、言葉だけで終わっている、即ち簡単に言えば、立派なこと言っているわりに、実態は違うということを指摘してみましょう。
○ ある大会社のWEBに資材調達基本方針として、以下のようなことが記載してありました。
・基本的な考え方:グループの企業価値の向上とともに、取引先との相互発展に貢献。
・平等な競争機会の提供:調達情報の適時・適切な発信と平等な競争機会の提供。
・公正な取引先の評価・選定:取引先の評価・選定は、経営の信頼性、調達品等の価格・品質・納期はもとより先進的な技術力及びCSRの視点並びに事業継続の視点等を加味し、総合的に行なう。
・相互の発展:コミュニケーションを密にして、信頼、発展できる関係づくりに努める。
・情報の管理保護:適正に管理・保護。
・調達姿勢:グループ行動規範に基づいた調達姿勢で業務遂行致します。
・対等で公正な取引の実行:対等・公正な立場で接し、関係法令及び契約に従って誠実な取引を行なう。
・優越的地位濫用の禁止:優越的地位を利用した不当な不利益を及ぼす取引を行なわない。
・誠実な取引の実行:職務に関連して、利益や便宜の供与を受ける等の個人的な利益の追求は行わない。
○ 上記の中で、最も守られないのが、対等で公正な取引の実行と優越的地位濫用の禁止、つまり不公正であり、独禁法に違反するかどうかは別として、力関係で優越的地位の濫用が、日常茶飯事に行われています。
○ この会社の資材基本契約書の雛形には、一例として以下のような条項があります。
「納入業者から甲(この大企業)に利用許諾される、納入業者又は第三者の著作物(=許諾著作物)の利用範囲は個別契約で定める。個別契約で定めがないものは、甲・甲の関係会社は、甲自ら複製・改変・譲渡・貸与・公衆送信でき、また第三者に使用権の再許諾ができる。」
これ程納入業者の知的財産をバカにした、また無視した規定はありませんね。特に「譲渡」というのは如何なものか。他人のもの(著作物)を、譲渡・売り飛ばせると規定されています。権利侵害ですね。
○ この会社のこの規定は、私が知っている中でも一番下請業者をバカにした規定です。また、基本契約は絶対に変更しないという態度も気に入りません。まあ、同業他社の大企業の資材取引基本契約も、似たような規定が多いですけどね。
○ 独禁法で摘発されるのは、氷山の一角で、やりすぎの例だけです。納入業者が如何にいじめられているか、不公正な立場で取引を強いられているかですね。