○ 米国独禁法を少し勉強しようと新宿の紀伊国屋に行ったら、「アメリカ独占禁止法第2版」という分厚い本が売っていました。きちんと書いている本なので、これは読んだらすぐに眠たくなるし、第一まともに読まないので、買うのをやめて、ネットサーフィンをして自分で簡潔なサマリを作った方が良いなということで、今回は米国独禁法の体系概要です。勿論独禁法ですので、ガイドラインとか個別の判例が参考になるのですが、その前に前提の枠組みをきちんと整理しておかないとということで、今回は枠組みについてです。
○ まず、連邦反トラスト法の4つの特徴です。
(1)広範なカバー:日常の取引から合弁・企業買収・合併まで広汎な範囲に適用。
(2)厳格性:司法省を中心として特に刑事事件に重点をおいて運用されます。また、私訴においては3倍賠償という懲罰的賠償が課されます。
(3)判例法:日本の公正取引委員会も最近は少し機能していますが、米国の訴訟社会、裁判・法律社会を反映して、司法省・FTC(Federal Trade Commission)による活発な運用の他、私訴も多く提起され、これらの裁判を通じてcase lawとして発達した。従い、具体的な判例をきちんとマスターしないと、法令だけ見てもわからない。
(4)域外適用:外国における米国反トラスト法違反にも適用されており、EU独禁法の特徴でもあり、世界中で事業を展開する企業にとっては、米国のみならず、その域外適用、EU独禁法まで考慮したビジネス等の展開が必要であること。<o:p></o:p>
<o:p> </o:p>
○ 米国反トラスト法は、①Sherman
Act、②Clayton Act及び③FTC (Federal
Trade Commission) Actの三つから成り立っています。<o:p></o:p>
① Sherman Act =The Sherman Antitrust Act
(1890)→1条と2条の抜粋です。
Section 1. 取引を制限するものは違法:
Every contract, combination(結合) in the form of trust or otherwise, or conspiracy(共謀), in restraint of trade or commerce (取引を制限する), is declared to be illegal (違法). これらの行為を行ったものは有罪・重罪として、企業の場合は$10,000,000以下、個人の場合は, $350,000以下の罰金又は3年以下の禁固,あるいは両方を課す。→具体的には、Price Fixing(価格協定)、市場・顧客分割(Market
Division/Customer Allocation)及びGroup Boycott(集団的ボイコット)が、典型的な違法行為(Hardcore violation)となります。<o:p></o:p>
Section 2. 独占は重罪:
Monopolize(独占), or attempt to monopolize(独占する企て), or
combine or conspire with any other person or persons(他者との結合・共謀)は有罪・重罰。(罰則は1条と同じ)<o:p></o:p>
<o:p> </o:p>
② Clayton Act = The Clayton Antitrust Act
(1914)→主要条文の抜粋
Sherman
Actでは、競争に対する実際の制限(actual restraint)が要件とされているのに対して、Clayton Actでは、競争を弱める傾向(tendency
towards lessening competition)のみで違法性を認め、反競争的効果をもたらす可能性ある行為を萌芽の段階で摘み取ろうとしています(Incipiency doctrine. 但し、特定のcategoryの行為のみ対象)
2条:Discrimination in price, services, or facilities. the effect of such
discrimination may be substantially to lessen competition or tend to create a
monopoly in any line of commerce, or to injure, destroy, or prevent competition
with any person
3条:Sale, etc., on agreement not to use goods of competitor. whether
patented or unpatented. fix a price charged therefor, or discount from, or
rebate upon, such price, on the condition, agreement, or understanding, the
effect of such lease, sale, or contract for sale or such condition, agreement,
or understanding may be to substantially lessen competition or tend to create a
monopoly in any line of commerce.
7条Acquisition by one corporation of stock/assets of another .
the effect of such
acquisition may be substantially to lessen competition, or to tend to create a
monopoly.
これをチェックする方法として、Pre-merger notification(企業結合事前届出制度)がありますね。尚6条では、反トラスト法は労働組合には適用されない旨の規定があります。<o:p></o:p>
<o:p> </o:p>
③ FTC Act
5条. Unfair
methods of competition unlawful; prevention by Commission
(a) Declaration of
unlawfulness; power to prohibit unfair practices;
Unfair methods of competition
in or affecting commerce, and unfair or deceptive acts or practices in or
affecting commerce, are hereby declared unlawful..<o:p></o:p>
Sherman/Clayton両法によって規制されない分野まで規制の対象としている点―単独行為 も対象として、Incipiency doctrineを徹底している点に特徴があります。