○ 1月20日の日経新聞朝刊5面には、日本航空の会社更生法申請にあたり、関係者の記者会見での主な発言が記載されています。企業再生支援委員長の瀬戸英雄氏は、「株主責任についてどう考えるか」と問われ、「株主を残すには営業上のメリットという理由が必要。ただ99%減資をする場合、1万株もっていれば100株に減る。これでは株主優待の基準を下回る。長年日航を支えてくれた人には別の形でお礼の仕方があるのではないかと考えた。」と記載されています。
○ 「99%減資すれば1万株が100株になる」=企業再生支援委員長たるものの発言としては、不適切・でたらめですね。会社法の資本金の減少について正確に理解していない。関係者の複雑な利害調整の前提知識として当然正確に知っておくべきことなのにね。困ったものですね。
○ 平成13年の商法改正までであれば、資本減少の方法には株式数の減少と資本金の額の減額がありました。しかし同年の改正により額面株式が廃止され、株式数と資本の額との関係が遮断されたため、資本減少のために株式数を減少させる、あるいは株式数を減少させて資本減少を計る必要はなくなりました。即ち、資本金の額は発行済株式数と関係がないので、発行済株式の数と無関係に資本金の額の減少が行えるんですね。
【資本金の額の減少】
○ 会社法447条(資本金の額の減少)の1項には以下のように記載されています。
株式会社は、資本金の額を減少することができる。この場合においては、株主総会の決議によって、次に掲げる事項を定めなければならない。
①減少する資本金の額
②減少する資本金の額の全部又は一部を準備金とするときは、その旨及び準備金とする額
③資本金の額の減少がその効力を生ずる日
この規定は、資本金の額の減少は総会決議事項であり、上記①―③を決議しなさいと書いていますが、これによって株式数を減少させなさいとは規定していません。
○ 分かりやすい例をあげましょう。株価を1株純資産としましょう。
発行済株式数 純資産の額 1株純資産
1) 100株 100万円 1万円
2) 1万株 100万円 100円
3) 10株 100万円 10万円
上記2)は株式分割(100分割)、3)は株式併合(10株→1株=1/10)ですね。
例えば上の例で、純資産の額が0円なら、発行済株式が、10株,100株,1万株、100万株であっても1株純資産は0円ですね。即ち、99%減資=資本金の減少を行っても、発行済の1万株は1万株ということですね。
【株式の消却】
○ ○ 株式数の一部を消滅(株式数の減少)させるのは、今の会社法により自己株式の消却に一本化されました。即ち、発行済株式の数を減らすには、株主が保有する株式を会社が取得して自己株式にしたうえで消却することになりました。自社株を取得して自己株にするには、種々の規制、中でも財源規制等がありますね。
○ ついでながら、昔の商法(212/213条)では、①自己株式の消却、②株主が保有する株式の消却の2つの方法がありましたが、後者の方法を廃止して、いったん全て自己株にしてから、消却することになったのですね。
【資本金の額の減少+株式の消却】
◎ ○ JALの場合は、会社更生法なので別ですが、株式の消却(自社株式を取得して自己株式にして消却)、資本金の額の減少という別々の手続きを一緒に行えば、株式数も減少しますし、資本金の額も減少します。勿論、自社株式の取得には財源規制が働きますから、まず資本金・準備金の減少の総会決議を取得して、「その他資本剰余金」を作って自社株式を取得しないといけませんけれども。
○ (突然恨み節?)JALの件、ほんまに困りますね。私のJAL株。世界一周無料航空券5枚ぐらいくれない?マイルなら2百万マイルぐらい欲しいね。