まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

資本金の減少と株式数の減少

2010-01-31 21:06:19 | 商事法務

     120日の日経新聞朝刊5面には、日本航空の会社更生法申請にあたり、関係者の記者会見での主な発言が記載されています。企業再生支援委員長の瀬戸英雄氏は、「株主責任についてどう考えるか」と問われ、「株主を残すには営業上のメリットという理由が必要。ただ99%減資をする場合、1万株もっていれば100株に減る。これでは株主優待の基準を下回る。長年日航を支えてくれた人には別の形でお礼の仕方があるのではないかと考えた。」と記載されています。

     「99%減資すれば1万株が100株になる」=企業再生支援委員長たるものの発言としては、不適切・でたらめですね。会社法の資本金の減少について正確に理解していない。関係者の複雑な利害調整の前提知識として当然正確に知っておくべきことなのにね。困ったものですね。

     平成13年の商法改正までであれば、資本減少の方法には株式数の減少と資本金の額の減額がありました。しかし同年の改正により額面株式が廃止され、株式数と資本の額との関係が遮断されたため、資本減少のために株式数を減少させる、あるいは株式数を減少させて資本減少を計る必要はなくなりました。即ち、資本金の額は発行済株式数と関係がないので、発行済株式の数と無関係に資本金の額の減少が行えるんですね。

資本金の額の減少】

     会社法447条(資本金の額の減少)の1項には以下のように記載されています。

株式会社は、資本金の額を減少することができる。この場合においては、株主総会の決議によって、次に掲げる事項を定めなければならない。

 ①減少する資本金の額

 ②減少する資本金の額の全部又は一部を準備金とするときは、その旨及び準備金とする額

 ③資本金の額の減少がその効力を生ずる日

この規定は、資本金の額の減少は総会決議事項であり、上記①―③を決議しなさいと書いていますが、これによって株式数を減少させなさいとは規定していません。

     分かりやすい例をあげましょう。株価を1株純資産としましょう。

発行済株式数   純資産の額     1株純資産

1) 100株    100万円      1万円

2) 1万株     100万円      100円

3) 10株     100万円      10万円

上記2)は株式分割(100分割)、3)は株式併合(10株→1株=1/10)ですね。

例えば上の例で、純資産の額が0円なら、発行済株式が、10,100,1万株、100万株であっても1株純資産は0円ですね。即ち、99%減資=資本金の減少を行っても、発行済の1万株は1万株ということですね。

【株式の消却】

○ ○ 株式数の一部を消滅(株式数の減少)させるのは、今の会社法により自己株式の消却に一本化されました。即ち、発行済株式の数を減らすには、株主が保有する株式を会社が取得して自己株式にしたうえで消却することになりました。自社株を取得して自己株にするには、種々の規制、中でも財源規制等がありますね。

○ ついでながら、昔の商法(212/213)では、①自己株式の消却、②株主が保有する株式の消却の2つの方法がありましたが、後者の方法を廃止して、いったん全て自己株にしてから、消却することになったのですね。

【資本金の額の減少+株式の消却】

◎ ○ JALの場合は、会社更生法なので別ですが、株式の消却(自社株式を取得して自己株式にして消却)、資本金の額の減少という別々の手続きを一緒に行えば、株式数も減少しますし、資本金の額も減少します。勿論、自社株式の取得には財源規制が働きますから、まず資本金・準備金の減少の総会決議を取得して、「その他資本剰余金」を作って自社株式を取得しないといけませんけれども。

○ (突然恨み節?)JALの件、ほんまに困りますね。私のJAL株。世界一周無料航空券5枚ぐらいくれない?マイルなら2百万マイルぐらい欲しいね。


現物出資による事業譲渡・会社分割

2010-01-17 21:19:03 | 商事法務

     現物出資について、会社設立時は変態設立事項として会社法33条に、成立後については207条に規定されています。原則は、裁判の選任する検査役の調査が必要ですが、多くの例外事項を定めて、弁護士・公認会計士・税理士(法人を含む)の「価額が相当であることの証明」があればよくなりました。その内容は前回のブログで記載しました。

     株式を対価として、金銭以外の財産を出資するのが現物出資ですね。法では財産と言っていますが、資産ですね。財産的価値のあるものなら何でもいいわけですね。資産と言っても費用を資産化した繰延資産は財産的価値はないですから、例外です。

     現物出資財産といえば、例えば、不動産、特許権、ブランド、のれんなどですね。のれんについては、自己創設のれんは認められていないので、有償で譲り受けた場合ですね。パーチェス法ですから、時価ベース純資産と譲受対価との差額がのれんとなります。

現物出資は、単品あるいはひと塊りの資産を想定していますが、立法者にとっては想定外かもしれないですが、別に「事業」を現物出資しても言いわけですね。 

     というわけで、現物出資の方法による事業譲渡・譲受、会社分割(吸収分割と変態設立事項として新設分割)が可能になるわけですね。制限は株式を対価とするということですね。整理するといかぐらいでしょうか(簡易・略式手続の部分は除く)。また重要な財産の処分・譲受に該当するという前提での整理です。

        現物出資     事業譲渡     会社分割

      出資者 被出資者 譲渡者 被譲渡者 分割会社 承継会社

取締役会    ○  ○     ○   ○    ○    ○

株主総会    無  *1  特別決議 不要(*2) 特別決議 特別決議

対価      新株 ―   金銭・新株 -    新株等  -

債権者保護手続 無  無    無    無    必要   必要

株式買取請求権 無  無    有   原則無   有    有

公取報告    *3 無    無    有       有(*4)  有

*1 募集株式発行の手続きによる=公開会社は取締役会、非公開会社は総会特別決議。普通は第三者割当増資となる。公開会社でも有利発行の場合は特別決議

*2 会社成立後2年内のときは事後設立の特別決議(467I⑤)。事業全部の譲受の場合は特別決議

     3 議決権の10%,25%,50%超の場合、今は事後報告、来年から20%、50%超の場合事前報告

     4 分割会社・承継会社が共同で届出書作成(待機期間は届出後30日。届出日は届出書を公取に提出した日ではない。実務上45ぐらい必要)

○ 現物出資では、対価関係=割当られる株式数とその価値の判定が難しいですね。契約関係は、会社分割では分割計画書や吸収分割契約、事業譲渡では事業譲渡契約書ですね、現物出資の場合は、その会社と現物出資の契約を締結したうえで、当該会社が会社法の募集株式の割当ての手続きをすることになりますね。

誰か、大規模な事業譲渡・吸収分割を現物出資の方法でしませんか?


現物出資の調査と弁護士等の証明

2010-01-11 23:30:55 | 商事法務

     株式の対価として金銭以外の資産を出資する現物出資に関する規制については、会社設立のときは変態設立事項の調査として会社法33条に、会社成立後については207条に規定されていますね。昔と比べると随分緩和されました。原則は、裁判所の選任する検査役の調査2071-5項)で現物出資財産の価額の調査をして、適正な価額を算出し、この価額に対して株式の割当を行います。原則の適用除外として、2079項では、①発行済株式数の10%以下の場合、② 出資財産の総額が500万円以下の場合、③市場価格のある有価証券をマーケット価格以下で出資する場合、④弁護士・公認会計士・税理士(法人を含む)から、その価額が相当であることについての証明(不動産の場合は、当該証明及び不動産鑑定士の鑑定評価を付ける)を受けた場合⑤弁済期が到来した会社に対する金銭債権を現物出資する場合には、検査役の調査が免除され、株式の割当を行えるとしていますね。

     金銭以外の資産ですから、土地・建物・機械、権利(物権・債権・知的財産権)、有価証券、あるいはのれん・ノウハウ・ブランド等の財産的価値のあるものなら、あるいは有機的一体となった事業でもよいわけですね。検査役の調査を要求する趣旨は、資産の過大評価をして水増しされて多くの株式を取得して例えば支配権を維持したりする者と、他の金銭出資をした株主との間の不公平を防ぐ趣旨と、水膨れの資産が形成されて債権者を欺くのを防ぐ趣旨ですね。

     最近は、例えば、不動産価格で言えば、2年前の青山辺りの不動産価格は半値どころか、1/3以下になっています。不動産の鑑定評価等も、ご承知のように結構鑑定人によって違うというか、まあそれなりに操作もできるわけですね。株式でも去年なら価値のあった日本航空の株式も今は殆ど価値無しですね。最近は資産価値が急激に変化しますね。非常にVolatileです。まあ下がることが多いですけどね。

     特許などの知的財産の評価は難しいですね。特許など持っていてもすぐに事業化できるわけでもありませんし、ハッキリ言って、特許で儲かるのは千に3つぐらいでしょうか。発明者の思い入れは別として、金が儲かる・事業として成り立つ特許というのは、一連の特許の組み合わせとか、その特許を利用した製造技術等の総合力ですからね。特許権等の開発コストというのも一つの価額ですし、特許を利用して将来のフリーキャッシュフローの現在価値を予測するのも価額ですね。結構どんな数字でも出せますね。

○ 弁護士等により価額の相当性の証明をしてもらうとしていますが、資産を正当に評価する能力があるのでしょうか?ありませんね。昔、弁護士のみしか証明ができないころ(今は公認会計士等もできますが)。ある案件である弁護士に証明をお願いしたら、評価できなので、公認会計士の評価書を出して欲しいといわれたことがあります。仕方がないから、こちらである考え方と方式で算出した評価を全部公認会計士に教えて、それに従って評価書を出してももらって、それを弁護士に持ち込んで証明書を出してもらったことがあります。金・時間の無駄ですね。こんなことやめてもらいたいですね。まあ、最近は融通性ある税理士さんにお願いすれば簡単かも?(ある程度常識の範囲内ならね)

○ 現物出資財産は、その財産を利用し収益を上げられる能力のある会社にとっては価値がありますが、そういった能力のない会社にとっては価値がないということです。相当な価額というのは、その会社の役職員がその財産を事業にうまく利用し、どれぐらいの収益を上げられるかを基に算出が可能となるのですね。といっても実際の価額算出はかなり難しいですけどね。しかもどれだけの利用価値があるのかは、例えば同じ特許権でも同じ業種の他の会社の場合は全く違うでしょうね。

○ 現物出資財産を見て価額が相当である証明を出せというのは、考え方そのものがおかしいのです。その会社がその現物出資財産から、どれぐらい収益を得られるか、収益に貢献するかという点が重要なのに、そういう視点がないのが会社法の規定ですね。でも現実的には、将来収益等どれぐらい得られる等「とらぬたぬきの計算」しかできないでしょうから、結局は現物出資をするときに関係者がその価額で納得すれば、それが相当の価額なのだと思います。ではどうすれば良いのでしょうか?

     私は、今の現物出資の規制を廃して、現物出資の簡単な内容と価額・割当株式の種類・数を登記事項にすべきと思います。現物出資を受ける企業は未上場企業です。株式は公開されていません。企業・事業関係者やベンチャーキャピタル等のプロの投資家が株式を取得します。これら出資者・投資家は、登記簿の記載を契機として、経営陣から現物出資の内容の詳細を聴き、その財産が事業に役立っているのかを、経営者の言葉をそのまま鵜呑みにすることなく自分で調査し判断すれば良いのです。その会社に関わりを持つ人・持とうとする人が納得すれば良い話だと思います。債権者は、現物出資財産を利用してその会社がきちんと事業をしているのかを見れば良いのだと思います。


NPOを株式会社・合同会社で設立する

2010-01-03 22:25:20 | 社会・経済

       最近環境、国際協力等様々な分野でNPO活動が活発になって来ており、またその重要性が増しています。しかし、多くのNPOが法人格をもたずに任意団体として活動しています。しかし法人格を持たないと、いろいろ不便です。事務所を借りたり、銀行口座を開設したり、物を購入するのも、理事長名義になります。また理事長が交代したらその変更手続きも手間です。法人格を持つと団体名で法律行為ができますので便利ですね。

       政府も、NPOの重要性と意義を認め、NPO法人(特定非営利活動法人)の設立促進を諮るため、特定非営利活動促進法(H10年施行)を制定し支援しています。しかし、実際はなかなか手間がかかるようです。

設立の申請書類だけでも12種類(①設立認証申請書、②定款、③役員名簿、④就任承諾書、⑤社員名簿、⑥確認書、⑦設立趣意書、⑧設立意思決定を証する議事録、⑨⑩初年度及び翌事業年度の事業計画書、⑪⑫初年度・翌事業年度の収支予算書)あります。これら書類は出せば終わりではなく、翌年度からも同様の書類・変更等の届出、定款変更の認証申請・届出を行わないといけません。余程しっかりした組織でないとやっていけません。

詳しくは、内閣府 NPOホームページ↓ 設立及び管理・運営の手引き ご参照  http://www.npo-homepage.go.jp/found/npo_guide.html

  

○ 税法上の認定NPO法人になれば、個人の寄付金は寄付金控除の対象に、また法人では、通常の寄付金の損金算入限度額に加えて別枠で損金算入ができる等、また当該法人についても収益事業から得た益金から収益事業の損金にプラスアルファの損金算入ができるというメリットがあります。でも、NPOで収益事業を行って課税所得のあるNPOってどれだけあるのでしょうか?まあ、殆んどないでしょう。

       ということで、こんな邪魔くさいことするなら、株式会社の形式を使ってNPOを作ったらどうでしょうか。まあ、会社設立登記、税務署等への設立届けと変更時の変更届は必要ですが、経理さえきちんとすれば、大丈夫ですね。物を販売したりしているNPOも多いですが、活動資金の一部であり、利益を上げているところなどまずないでしょうね。課税所得もまず発生しないので税金を納めることもないでしょう。但し、固定資産税、住民税の均等割り、事業税の外形標準の部分については少し納める必要がありますけれどもね。

       運営については、具合的には以下等が考えられるでしょうね。思い付きですけど。

・ 定款の目的NPOの目的を記載しておけば良いですね。

     役員:代表取締役理事長・総裁でも隊長でもご自由に、取締役理事とか適当に作ればいいですね。

     会員NPOは会員制ですね。しかし株式会社という形式を利用したら株主ですね、合同会社なら社員ですね。

     会費の徴収:新株予約権を理事長なりに発行しておいて、新規会員にはその予約権を譲渡して予約権を行使して払込をしてもらう、これを会費の払込とすれば良いですね。翌年からもその新株予約権を行使してもらって会費を毎年納入してもらうわけですね。

変更登記が少し手間ですけど、会員募集を一定の時期にして、登記の回数を減らせばいいですね。

     株主(会員)の権利:会社法105条には株主の権利として、1)剰余金配当を受ける権利、2)残余財産の分配を受ける権利、3)議決権が規定されています。1)&2)の両方を与えないのは会社法違反ですので、形式的に与えておけば良いですね。NPOですから所詮は利益など出ませんからね。

こんな感じでしょうか。NPOを設立しやすい株式会社(あるいは合同会社)で設立するのも手だと思いますが、如何でしょうか。