まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

米国企業の取締役会等と役員

2013-07-20 01:14:56 | 商事法務

 前回は、日本企業の株主総会よりも下位の取締役会・代表取締役等の機関について記載しましたが、今回は米国企業の取締役会や役員等についてです。<o:p></o:p>

 

 米国企業の取締役会の職務として、模範事業会社法§ 8.01では下記のように定めています。§ 8.01. REQUIREMENT FOR AND DUTIES OF BOARD OF DIRECTORS

(b) All corporate powers shall be exercised by or under the authority of, and the business and affairs of the corporation managed by or under the direction of, its board of directors, subject to any limitation set forth in the articles of incorporation or in an agreement authorized under section 7.32.(Shareholders Agreements)

また、Delaware会社法§141では、以下のように定めています。

(a) The business and affairs of every corporation organized under this chapter shall be managed by or under the direction of a board of directors, except as may be otherwise provided in this chapter or in its certificate of incorporation.

<o:p> </o:p>

 

 All corporate power(全ての会社の権能)は、定款又は株主間契約所定の制限のもと、取締役会によって行使されるかその授権のもとに行使され、会社業務(the business and affairs)は、取締役会の指示の下に経営されなければならないと定めています。

法令では取締役会が原則となっていますが、実際は、取締役会は、重要経営事項を除き、また最終的な監督権限を留保した形で、委員会(committee)に委譲(delegate)し、その下部機関として会社役員(officer)に任せていますね。委員会については、会社法に少し規定されていますが、役員についてはあまり規定されていません。ChairmanCEOというのも、付随定款や取締役会で決めるわけですね。

米国では、契約相手方がいちいち相手先企業の定款等をM&Aの場合を除き調べませんので、重要契約にはRep. & WarrantyとしてBoard Approvalを得ていることというのを入れますが、こういった事情から来ているのではないでしょうか。<o:p></o:p>

 

 

○ 日本の委員会設置会社は、米国の委員会制度を真似て作ったものですが、この委員会についてはどのように規定されているのでしょうか?

模範事業会社法§ 8.25. COMMITTEES

(a) Unless this Act, the articles of incorporation or the bylaws provide otherwise, a board of directors may create one or more committees and appoint one or more members of the board of directors to serve on any such committee.

これだけしか書いていないですね。硬直的な日本の委員会設置会社では、指名委員会、監査委員会&報酬委員会と規定されていますが、米国の会社法は取締役会が決めることができます。この3つの委員会は必須としているのはNYSEListing Requirementですね(監査委員会は社外取締役のみという条件)。大企業は一般的にこの3つに加えて執行委員会(executive committee)や財務委員会(finance committee)等を持っています。<o:p></o:p>

 

<o:p> </o:p>

社長(president)は、最近はChief Executive Officer(CEO)と呼ばれていますね。また業務推進責任者をChief Operating Officer(COO)等と呼びますが、法令上は特に規定せずに定款で自由に決めることができるわけですね。役員の任期についても定款で決められます。但し、一般的・慣行的に定款に1年としていますが、例外(役員改選時期をずらす買収防衛策のstaggered board)もありますね。

これ以外の役員としては、Chief Financial Officer (CFO)Secretary(総務責任者)もあります。役員の兼任については、会社法遵守のチェック機関であるSecretaryCEOが兼任するのを認めていない州が多いと思いますが、Delaware州では、一人で全部兼任ができるようですね。<o:p></o:p>

 

<o:p> </o:p>

 上記のような構造ですので、役員の権限について会社法は定めていませんねそれは付随定款や取締役会決議で定めるものとしています。但し、役員の義務については、模範事業会社法§ 8.41. DUTIES OF OFFICERSに、以下のような当たり前の定めをしています。即ち、付随定款等を守りましょうと規定していますね。

Each officer has the authority and shall perform the duties set forth in the bylaws or, to the extent consistent with the bylaws, the duties prescribed by the board of directors or by direction of an officer authorized by the board of directors to prescribe the duties of other officers.<o:p></o:p>

 

日本と比べるとだいぶ違いますね。こういった構造を無視して、会社法に委員会設置会社を設けています。

<o:p></o:p>

Dsc00359

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

取締役会設置会社の代表権等

2013-07-15 18:49:12 | 商事法務

 

 ①日本の会社法362条(取締役の権限等)は、取締役会の職務として2項で以下を定めています。①業務執行の決定、②取締役の職務の執行の監督及び③代表取締役の選定及び解職、また4項として取締役に委任できない事項として、①号から⑦号までの事項(重要財産の処分・譲受、多額の借財等)に加え「その他の重要な業務執行の決定」としています。即ち、業務執行の決定等が取締役会の職務ですね。また、代表取締役の選定と規定していますので、社長を代表取締役として選定する義務もありません。会長だけを代表取締役とすることも可能ですし、例えば株式会社田舎村なら、代表取締役村長でもいいわけですね。<o:p></o:p>

 

②業務執行権限については、363条1項で、①代表取締役と②代表取締役以外の取締役であって、取締役会決議により業務執行する取締役として選定(選定業務執行取締役)されたものが業務執行を行うとされています。即ち、選定業務執行取締役は、会社業務について対内的な権限だけを持っているだけであり、対外的に会社を代表する権限は無いということですね。但し、354条の表見代表取締役の規定で「代表取締役以外の取締役に社長、副社長その他株式会社を代表する権限を有するものと認められる名称を付した場合には、当該取締役がした行為について、善意の第三者に対してその責任を負う。」と規定しています。<o:p></o:p>

 

 

 一方、代表取締役は、株式会社の業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する349条)としています。また、商法25には以下の規定があります1)商人の営業に関するある種類又は特定の事項の委任を受けた使用人は、当該事項に関する一切の裁判外の行為をする権限を有する。 2) 前項の使用人の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。 <o:p></o:p>

 

 

 不思議な規定ですね。実務とかけ離れていると思いませんか?即ち、以下等ですね。

1) 代表取締役社長と取締役社長とは違う。即ち、取締役社長でも代表権が無い場合があるということですね。でも、かなりの会社では、取締役社長とだけ書類・契約に記載されて対外的業務執行が行われています。株主総会は、取締役が招集する(296条)ことになっていますが、規定としては、取締役会が招集を決定し、執行機関である代表取締役がこれを執行してする。即ち「招集ご通知を」株主に送付しますが、厳密には取締役社長では無く、代表取締役社長と明記して行うべきものですね。代表権を持っているのに、代表取締役社長と記載せずに、取締役社長とだけ招集通知に記載して株主総会を招集している会社が結構あります。銀行取引などでも取締役社長の名前で行っている場合もあります。なぜ正確に代表取締役社長と記載しないのでしょうか?<o:p></o:p>

 

<o:p> </o:p>

2) 例えば、人事担当取締役名で採用通知を出しますね。これって会社を代表した行為ですよね。社内では、採用計画を立てて人事業務を執行します。それに基づき多くの外部の企業と採用パンフレット印刷・ビデオ作成、関連取引を行います。会社の業務というのは、内部だけとか外部とかだけというのでは業務を遂行できないのです。内部業務・外部業務は表裏一体なのです。<o:p></o:p>

 

 

3) 商法25条によれば、例えば「購買部長」ならば、原材料等の購買業務を行う権限を授権されていると考えられますので購買権限があります。取締役購買部長なら、購買部長として権限はありますが、取締役では権限があるかわかりません。単なる「取締役」が購買した場合は、代表取締役から購買権限を授権されているかいちいち調べないとわかりませんし、購買権限が授与されているか委任状を見せてくれといっても無い場合が多いでしょう。普通は社外秘の社内の権限規定に記載されていることが多いのではないでしょうか?<o:p></o:p>

 

会社法の規定は、なんとなくすっきりしませんね。

<o:p></o:p>

Dsc00355

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

米国会社の株式譲渡

2013-07-06 00:17:31 | 株式関連

 

 米国企業の株式譲渡はどのようにするのでしょうか?模範事業会社法を調べました。6章にはSHARES AND DISTRIBUTIONSとありましたが、Subchapter ASharesは、授権資本、種類株式等の規定で、Bは株式の発行の事でした。 C. ではSUBSEQUENT ACQUISITION OF SHARES BY SHAREHOLDERS AND CORPORATIONと記載され株主の preemptive rights(株主は定款に規定されない限り新株引受権を有しないとかStock Optionとして役職員に付与された株式には新株引受権は無い等を規定)や自己株の取得(自己株を取得したとき当該株式は未発行株式となる)の事等が記載されており、株式譲渡の方法などの規定は見当たりません。株式の譲渡に関する規定は、米国ではUniform Commercial Code ARTICLE 8 - INVESTMENT SECURITIESなど に規定されているのですね。というわけで、今回は、米国企業の株式の譲渡の話です。<o:p></o:p>

 

 

 まず前提として、株券が発行されるのか不発行なのか、譲渡制限は出来るのかですが、その部分は当然会社法に規定されます。株券発行でも、不発行でも出来ますし、譲渡制限もできます。模範事業会社法では、§ 6.25. FORM AND CONTENT OF CERTIFICATES§ 6.26. SHARES WITHOUT CERTIFICATES§ 6.27. RESTRICTION ON TRANSFER OF SHARES AND OTHER SECURITIESに規定されています。

譲渡制限を行うときの条件は、それが明白に分かるようにしておかないと効力を生じないということですね。6.27 (b) では、「(b) A restriction on the transfer or registration of transfer of shares is valid and enforceable against the holder or a transferee of the holder if the restriction is authorized by this section and its existence is noted conspicuously on the front or back of the certificate or is contained in the information statement required by section 6.26(b). Unless so noted, a restriction is not enforceable against a person without knowledge of the restriction.」と規定しています。6.26は株券不発行会社の事ですが、株主にwritten statement of the informationを送付して譲渡制限を通知することになっています。<o:p></o:p>

 

 

 株券発行(certified securities)会社の株式譲渡 UCC§ 8-301. DELIVERY

株券が発行されているときは、株券の交付を受けたときに買主は株式(有価証券)の譲渡を受けたことになります。勿論買主本人の為に第三者が受けてもよい訳ですね。しかし証券会社も顧客(買主)の為に交付(delivery)を受けることができますが、記名式株券の場合だけに限られており、交付のときに、この株券にspecial indorsement (記名式裏書)をするかblank indorsement (白地裏書)をしなければなりません。<o:p></o:p>

 

 株券不発行(uncertified securities)会社の株式譲渡 UCC§ 8-301. DELIVERY 

発行会社が株主名簿に、譲受人の名義を登録したときに株式譲渡の効力が生じます。そのためには、譲渡人が会社に対して名義書換指図書Instructionを出状して行います。<o:p></o:p>

 

<o:p></o:p>

 名義書換 UCC§ 8-401. DUTY OF ISSUER TO REGISTER TRANSFER

記名式株券の場合には、裏書(Indorsement:白地裏書も可)した株券の交付とともに、発行会社に譲渡を登録する請求書(a request to register transfer を提出して行います。

一方株券不発行会社の場合には、発行会社に名義書換請求の指図書Instructionを提示して行いますが、その指図書はan appropriate personにより作成されたものでなければなりません。

このappropriate personですが§ 8-107(a)(2)に定義があります。(2) with respect to an instruction, the registered owner of an uncertified securityですね。尚、同条(1)には記名式株券の裏書のときのappropriate personの定義があり、(1) with respect to an indorsement, the person specified by a security certificate or by an effective special indorsement to be entitled to the securityとされていますので、譲渡人の名前が株券に記載されていますので、通常譲渡人が裏書するわけですね。

<o:p>

Dsc00293_19

</o:p>

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする