前回は、日本企業の株主総会よりも下位の取締役会・代表取締役等の機関について記載しましたが、今回は米国企業の取締役会や役員等についてです。<o:p></o:p>
○ 米国企業の取締役会の職務として、模範事業会社法§ 8.01では下記のように定めています。§ 8.01. REQUIREMENT FOR AND DUTIES OF BOARD OF DIRECTORS
(b) All corporate powers shall be exercised by or under the authority of, and the business and affairs of the corporation managed by or under the direction of, its board of directors, subject to any limitation set forth in the articles of incorporation or in an agreement authorized under section 7.32.(Shareholders Agreements)
また、Delaware会社法§141では、以下のように定めています。
(a) The business and affairs of every corporation organized under this chapter shall be managed by or under the direction of a board of directors, except as may be otherwise provided in this chapter or in its certificate of incorporation.
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○ All corporate power(全ての会社の権能)は、定款又は株主間契約所定の制限のもと、取締役会によって行使されるかその授権のもとに行使され、会社業務(the business and affairs)は、取締役会の指示の下に経営されなければならないと定めています。
法令では取締役会が原則となっていますが、実際は、取締役会は、重要経営事項を除き、また最終的な監督権限を留保した形で、委員会(committee)に委譲(delegate)し、その下部機関として会社役員(officer)に任せていますね。委員会については、会社法に少し規定されていますが、役員についてはあまり規定されていません。ChairmanやCEOというのも、付随定款や取締役会で決めるわけですね。
米国では、契約相手方がいちいち相手先企業の定款等をM&Aの場合を除き調べませんので、重要契約にはRep. & WarrantyとしてBoard Approvalを得ていることというのを入れますが、こういった事情から来ているのではないでしょうか。<o:p></o:p>
○ 日本の委員会設置会社は、米国の委員会制度を真似て作ったものですが、この委員会についてはどのように規定されているのでしょうか?
模範事業会社法§ 8.25. COMMITTEES
(a) Unless this Act, the articles of incorporation or the bylaws provide otherwise, a board of directors may create one or more committees and appoint one or more members of the board of directors to serve on any such committee.
これだけしか書いていないですね。硬直的な日本の委員会設置会社では、指名委員会、監査委員会&報酬委員会と規定されていますが、米国の会社法は取締役会が決めることができます。この3つの委員会は必須としているのはNYSEのListing Requirementですね(監査委員会は社外取締役のみという条件)。大企業は一般的にこの3つに加えて執行委員会(executive committee)や財務委員会(finance committee)等を持っています。<o:p></o:p>
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○ 次に役員については、Delaware州法§ 142. Officers; titles, duties, selection, term; failure to elect; vacancies. では、
(a) Every corporation organized under this chapter shall have such officers with such titles and duties as shall be stated in the bylaws or in a resolution of the board of directors which is not inconsistent with the bylaws
(b) Officers shall be chosen in such manner and shall hold their offices for such terms as are prescribed by the bylaws or determined by the board of directors or other governing body.
社長(president)は、最近はChief Executive Officer(CEO)と呼ばれていますね。また業務推進責任者をChief Operating Officer(COO)等と呼びますが、法令上は特に規定せずに定款で自由に決めることができるわけですね。役員の任期についても定款で決められます。但し、一般的・慣行的に定款に1年としていますが、例外(役員改選時期をずらす買収防衛策のstaggered board等)もありますね。
これ以外の役員としては、Chief Financial Officer (CFO)やSecretary(総務責任者)もあります。役員の兼任については、会社法遵守のチェック機関であるSecretaryをCEOが兼任するのを認めていない州が多いと思いますが、Delaware州では、一人で全部兼任ができるようですね。<o:p></o:p>
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○ 上記のような構造ですので、役員の権限について会社法は定めていませんね。それは付随定款や取締役会決議で定めるものとしています。但し、役員の義務については、模範事業会社法§ 8.41. DUTIES OF OFFICERSに、以下のような当たり前の定めをしています。即ち、付随定款等を守りましょうと規定していますね。
Each officer has the authority and shall perform the duties set forth in the bylaws or, to the extent consistent with the bylaws, the duties prescribed by the board of directors or by direction of an officer authorized by the board of directors to prescribe the duties of other officers.<o:p></o:p>
日本と比べるとだいぶ違いますね。こういった構造を無視して、会社法に委員会設置会社を設けています。
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