○ 世界各国の法体系は、英国が起源のCommon Law(英米法・判例法)とフランス・ドイツ(古くはローマ法)を起源とするCivil Law(大陸法・制定法)に分けられますね(その他に、社会主義法、イスラム法もありますが、一切知りません)。ここでは、公法(Public Law)/刑事法(Criminal Law)との対比で使われるCivil Law(民事法)ではなく、法体系としてのCivil Law等の話です。また、Civil Lawとの対比ではCommon Law (広義)と言われますが、広義のCommon Lawは、狭義のCommon LawとEquity(衡平法)に分かれますね。今回は、広義のCommon LawとCivil Law、及び狭義のCommon LawとEquityの話です。<o:p></o:p>
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○ Civil Lawは制定法ですから法典があります。ですからわかりやすいですね。勿論法典の各条文の解釈にもいろんな解釈ができる場合がありますので、それを補うのは判例法ということになります。Common Law(広義)は判例法だと言われますが、Civil Lawとの対比で言う場合は、判例法だけでなく制定法も含めた英米法の全体を言います。この場合は判例法というと誤解を招きます。<o:p></o:p>
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○ Common Lawは、EnglandのCommon Law courtが下した判決が集積してできた契約法・不法行為法・不動産法(=Civil Lawで言えば民法典のカバーされる領域)・刑事法分野の判例法体系であり、その特徴は陪審審理を用いることと、民事事件では金銭賠償による救済を原則とすることでした。しかし、これでは適切な救済の与えられない場合もあり、衡平と正義の見地から救済を得て当然とするものが、国王に請願し、それが国王の下での統治作用の機関であるLord Chancellor(大法官)に送付され、これが大法官裁判所(court of Chancery)となり、陪審審理を行わず、Injunction(差止命令)やSpecific performance(特定履行)などで救済を計りました。この分野がEquityでありでは信託法が形成・発展しました。<o:p></o:p>
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○ Common Lawの訴訟とEquityの訴訟は上記の通り別々の裁判所で取り扱われてきました、またCommon Lawは厳格な手続を採用してきたのに対し、Equityの訴訟では比較的柔軟な手続運営がされてきましたが、両方の融合が進み、現在では、両方の訴訟手続に余り違いは無いようですが、今でも、英米法の中でCommon LawとEquityの違いは広く認識されており、陪審審理の有無で現実的な違いが生じています。<o:p></o:p>
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○ 米国も、英国からCommon LawとEquityを承継しましたが、現在では、連邦裁判所及び大半の州(デラウェア州を除く)で、Common Law訴訟とEquity訴訟の手続は統一されていますが、陪審審理が認められるかという点で、まだ違いが残っているようです。デラウェアの大法官裁判所(Equity裁判所)では、会社、信託、不動産、契約等の訴訟を管轄しています。<o:p></o:p>
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○ Common Lawは判例法と言われていますが、判例法が確立しているのは上記の通り民事法では民法の分野です。従い、英米には日本の民法典に類するものはありません。しかし、商法典等はあります(統一商法典・会社法等)。だから、判例法の国だからといって、法典のある分野は当然法典優先ですね。つまりこの点は英米法も大陸法も同じなのですね。
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