まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

株式譲渡契約と競業避止義務について

2018-09-01 21:04:28 | 商事法務
○ 事業譲渡については、会社法467-470条に規定されていますね。そこには競業避止についての定めはありませんが、商法の時代遅れの16条には、営業譲渡人の競業の禁止として「譲渡人は、当事者の別段の意思表示がない限り、同一の市町村の及び隣接市町村内においては、その営業を譲渡した日から二十年間は、同一の営業を行ってはならない。」という規定があります。インターネットで販売できる時代に、この規定はあまり意味が無くなりつつありますが、まあ、美味しい老舗まんじゅう店が、営業譲渡した場合などには、意味がありますね。

○ 事業(営業)譲渡した場合には、商法がありますから競業避止がありますが、老舗まんじゅう店が、事業ではなく、その老舗の株式の全部を売却した時に競業避止義務はあるのでしょうか?事業譲渡という方法と、その事業を行っている会社の株式を譲渡するというのは、単なる方法の違いであって実質は変わらないですね。ですから株式譲渡の場合でも、競業避止義務を認めても良いように思えます。

○ 東京地裁平成22年2月25日判決では株式譲渡で競業避止義務を認めています。裁判所の判断の要約は以下のようです。
・Y氏の行為は、労働者派遣事業の経営に直接関与するものではないとしても、労働者派遣事業の経営を経済的に支援し、A社の業績の低下を招くおそれがある行為であるから、株式譲渡契約において禁止されているA社の競業事業に関連する行為に該当する。したがって、Y氏の行為は、競業避止義務に違反する。
・競業避止義務は、職業選択の自由及び営業の自由を制約するものであるから、その制約の程度が、競業避止条項が設けられた目的等に照らし必要かつ相当な範囲を超える場合には、公序良俗に反し無効となるが、本件の競業避止条項が公序良俗に反し無効であると認めることはできない。
この事例は、Y氏が、株式代金を受領しても、裏で間接的に事業を継続しようとしたのでしょうか?

○ 商法では、「同一の市町村の及び隣接市町村内」で、反対の合意のない限り競業避止の義務を負わせていますが、他府県、日本全国で競業避止を負わせているわけではないですね。一方、独禁法2条9項の不公正な取引方法の拘束条件付取引では、「相手方とその取引の相手方との取引その他相手方の事業活動を不当に拘束する条件をつけて、当該相手方と取引すること。」を禁止しています。ですから、株式譲渡契約という契約の時に、競業避止義務を課すのは、拘束条件付き取引ですね。ただ、「不当に」という言葉がありますので、不当とは何かということが問題になると思います。

○ 商法を見ると、他府県なら問題なさそうですね。また、今の時代二十年というのは、世の中が変わっています。長すぎますね。せいぜい5年ぐらいでしょうか?一般的に株式譲渡するときに、あたかも当然のように競業避止を言う人がいますが、日本では緩い規制になっていますね。諸外国では、従業員の勤務中のときは、競業避止義務を負わすことはできますが、退職後の縛りは一切認めない例も多いように見受けられます。

○ また合弁契約を締結した当事者が、合弁会社と同じ事業を当該国では出来ないという条項を入れる例も多いですね。競業避止と独禁法、職業選択の自由及び営業の自由をどのように調和すればいいのか、なかなか回答がありません。

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