○ 議決権というのは、広義の議決権と狭義の議決権がありますね。一般的には狭義の議決権を言いますね。広義の議決権とは、広義の総会参与権の事を言い、この総会参与権は、①総会招集通知を受ける権利、②総会に出席する権利、③総会で発言する権利、④議決権等(これに加えて総会で情報の提供を受ける権利等、議決権の周辺の権利を含みます)を包括的に含んだ権利の事を言いますね。狭義の総会参与権とは上記の①から③ですね。
○ 一方、無議決権株式の株主には、総会招集通知(299条)が不要であると、多くの学者・先生方が言われているようです。その根拠と言えば、法298条2項のようですね。同条では株主総会招集の決定について定めていますが、2項では、「取締役は、株主(株主総会において決議をすることができる事項の全部につき議決権を行使することができない株主を除く。)の数が千人以上である場合には、前項第三号に掲げる事項を定めなければならない。」また、前項第三号は「株主総会に出席しない株主が書面によって議決権を行使することができることとするときは、その旨」と規定されています。
○ 299条1項では、「株主総会を招集するには、取締役は、株主総会の日の二週間前までに、株主に対してその通知を発しなければならない。」と規定されています。
「株主に対して」と記載されています。「(当該株主総会にて議決権を行使できない株主を除く)」とは記載されていません。どうして無議決権株式の株主には招集通知を送らないのですか?優先株式を上場している伊藤園は、(議決権のある)普通株の株主のみ招集通知を送っているのでしょうね。無議決権株式の株主にも、招集通知を送って、出席したい株主には来てもらって、議決権ある株主と無議決権株式の株主と分別すればいいだけですね。「株主総会」ですから株主にオープンにするのが健全な常識であり、情報公開・説明義務(義務にまでするかとか、細かい事を法学者は言いがちですけどね)が、会社が取るべき基本的姿勢であり、会社法も後押しするのが、当然だと思うのですがね。
○ 無議決権株式の株主には、株主提案権、株主総会招集権、総会の検査役選任請求権等、議決権の存在を前提としている権利は行使できないのは仕方が無いにしても、総会招集通知を受け、出席し、発言する権利は当然認められるべきですね。
無議決権株式の株主(2-3人の特定少数で、多数の、例えば配当優先株等を保有している場合は除く)にとっては、年に一度の経営陣との情報・意見交換の機会ですね。こういう機会を当然株主の全てに与えるべきですね。
○ 学者が、議決権行使に興味がない株主なので、総会参与権等与えなくても良いと考えること自体が誤りなのです。株主総会では、議長(社長の場合が多いですね)が、どんな人で、どういう議事進行をしているのか、丁寧に・誠意をもって株主の質問に答えているのか、事務当局の書いた文章を棒読みしているのか、どういった株主が出席しているのか、労働組合の株主が来て、経営陣と対立しているのか、この社長になって10年以上業績低迷とか(この社長なら、もう会社の将来性無しだと感覚的に分かりますね。)、環境のせいにして言い訳している社長とか、まあいろいろですね。上場企業の社長と言っても、しっかりしているのから、どうしてこの人が社長?やってんのまでいろいろいるのです。実際の株主総会に出席すれば、招集通知や決議通知のような書面では分からない有益な情報が得られるのです。なぜこういう貴重な機会を奪う解釈をするのかですね。
○ 大体、会社の組織運営、構造、機関、ガバナンス等、会社の内実を知らないで、会社法を研究している会社法学者が多すぎます。だから、ピンボケ・的外れの指摘が多いのです。またまた、会社法改正議論がスタートしますね。4月下旬法制審議会に会社法制部会が発足するようです。会社の実態・内実を知らない学者で構成されるんでしょうね。困ったものですね。