まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

企業統治強化は累積投票制度復活から

2009-05-24 18:43:51 | 企業一般

     5月18日のMonday Nikkeiの法務欄(16)に、「社外取締役の原則導入 経団連は消極的 投資家と経営者が対立 企業統治巡り出口見えず」ということで記事が掲載されていました。引用すると以下です。

     経団連の提言「より良いコーポレートガバナンスをめざして」には、①金融危機を招いた米金融機関のガバナンスは法律や証券取引所が求める(社外取締役の義務付け)要件を備えながら、機能を果たさなかった②特定の国(米国)のガバナンスルールを日本に当てはめることは適当ではない③(日本の)監査役制度は欧米の経営監視機能に勝とも劣らないーと日本の企業統治を自賛している。

     この提言は、金融庁の金融審議会「我が国金融・資本市場の国際化に関するスタディグループ(SG)」や、経済産業省の「企業統治研究会」に答えたものだ。

     金融審SG・企業統治研は、6月にもまとめる報告書で「上場企業は社外取締役を導入するのが望ましい」という原則の明記を目指している。

     私に言わせれば、両者の議論とも「ピンぼけ」も甚だしいということです。(1)金融審・企業統治研では、社外取締役を選任すれば、企業統治が向上する。(2)経団連側は、監査役制度があるじゃないということですね。

(1)  金融審・企業統治研側は、社外取締役を選任すれば、取締役会の形骸化が防がれ監督機能が向上するという主張ですね。本当にそうですかね?そんな先進事例がどれだけあるんですかね。

事業報告書を見れば、会社法施行規則124条四号に従い、社外役員の活動状況を記載することになっていますね。「当該社外役員の意見により当該株式会社の事業の方針又は事業その他の事項に係る決定が変更されたときは、その内容」を記載することになっていますが、そんな記載がなされた事例があるのですか?きちんと調べたのですか?殆どケースでは、「自らの経験に基づき、適切な意見を述べた」とか、「適宜必要な発言をした」ぐらいしか書いていません。つまり、単なるコメントを述べた程度です。 

・ 私も社外取締役みたいなことをしていましたからよく分かりますが、取締役会の事前配布資料など読んでる時間が無い、読んでも社外の人間には理解できない部分がある、違法な事など取締役会の議題にあがるわけが無い(裏でされる)、実質は他の経営会議等決まっている(取締役会は単なる会社法上の儀式のケースが多い。特に大企業ではね)ということですね。

・ 確かに、社外取締役や一部の取締役が、取締役会で「ぎゃあぎゃあ」言えば、無理に決議する事無く、継続審議になるケースもあります。日本の取締役会では、やはりまだまだ全員一致が多いですね。勿論時には、反対取締役の意見を議事録に残して決議しないと、会社動かなくなる場合もありますけれども。

(2)  経団連側は、①社外取締役は機能を果たさなかったではないかと言っています。当たり前です、果たしません。常勤で社内の業務に関与し権限が無いと機能しません。そんなことは、エンロン事件等山ほど事例があります。

     ②の米国のガバナンスルールを日本に当てはめることは適当ではないと言っています。多くの大企業で執行役員制など、会社法上の委員会設置会社ではないにしても、米国型ガバナンスルールの猿まねを今までさんざんしてきました。今更手のひらを返して「よー言うわ」ですね。

 ③の監査役制度ですが、機能などしている分け無いでしょ。百も承知でよくぬけぬけ言うわね。ここ1-2年やっと先進事例が出てきましたね。荏原の大森監査役ですね。「不正暴けず、逆にスパイ扱い」とか日経(日経ビジネス?)に書いていましたね。これが実態ですね。

     では、どうすれば良いのでしょうか。私は、個人的にはドイツの共同決定法による制度、即ち取締役会の上部に監査役会を置き、大企業の場合メンバーの半分は、従業員の代表を選任するのが良いと思っています。しかし、こればかりは今までの制度の歴史・経緯、企業構造、企業に対する一般の考え、コンセンサス等がありません。

     所有と経営、所有と支配が分離しているとはいえ、株主が取締役を選任します。この最も基本原則が日本では機能していないのが問題なのです。

     現経営陣、その中でも人事権を持つ実力会長・社長の顔色を見て、自由に意見を変える、他部門の案件に口だしすると自分の案件で逆襲されるので黙っている等という品性下劣な「ちんぴら取締役」が多くいます。これを少しは改善する必要があるのです。

     提案としては、まず①定款による累積投票排除を会社法で認めない事です。こうすれば、楽天もTBSにうるさい取締役を派遣出来たんですけどね。 議決権比率10%以上の株主は、取締役指名の義務を負わせる事です。まあ、10%以上ももっておれば経営に無関心では居られません。株主としても現実的力を発揮できます。10%も持っておれば、いつでもその会社に聞きたいこと問い合わせても、法令上問題有ること、あるいはまずい事以外は、かなり教えてくれますね。普通の数単元保有の個人株主と扱い方が違いますし、かなり内部情報も、取ろうとすると取れますね。

○ 累積投票とか10%以上の株主の指名権等というと、村社会の長老の寄り合いである経団連傘下有力企業の経営者が強行に反対しますね。これこそ保身ですね。長年かかってやっと階段を上り長老になったんですからね。こういう経営者は器量がありませんし、村の外から来るうるさい人を排除したがりますね。金融審・企業統治研のメンバーには企業の人も入っています。日本の会社の将来のあるべき姿を描いて、反対意見を封じて、しっかり押し進めようとする胆力のある人がどれだけ居るのでしょうね。


株式交換と債権者保護手続

2009-05-17 21:36:50 | 商事法務

       株式交換・移転及び事業譲渡では、一般的に債権者保護手続は要求されていません。しかし、例外的に完全子会社となる会社が新株予約権付社債の債務を、完全親会社となる会社が承継する場合、その社債権者は以後完全親会社からしか弁済を受けられませんので異議を述べる権利を与えられていますね。また、親会社が子会社株主に交付する対価に、親会社株式以外の財産が含まれている場合(対価総額の5%以下の場合を除く)には、親会社の財産が減少するので、親会社の債権者は異議を述べることができます。

       799 Iでは債権者が異議を述べることができる場合を規定し③では以下のように規定しています。株式移転の場合は、810 I ③ですね。

III 株式交換をする場合において、株式交換完全子会社の株主に対して交付する金銭等が株式交換完全親株式会社の株式その他これに準ずるものとして法務省令(施行規則198条)で定めるもののみである場合以外の場合又は第七百六十八条第一項第四号ハに規定する場合(=完全親株式会社が新株予約権付社債の債務を承継する場合): 株式交換完全親株式会社の債権者

       債権者保護手続が不要の理由として、株式交換等しても当事会社が消滅するわけでもなく、また財産に変動がない、完全子会社の債権者は原則として影響を受けない。従い変動が考えられる上記の場合だけ、債権者保護手続を要求したと説明されます。

       おかしな考え方ですね。企業財務について十分な知識を持っていない人の発想ですね。親子関係ができると、親会社からの融資・保証もありますし、子会社の資金繰りがうまくいっている会社で親会社の資金繰りがうまくいっていない場合は、その逆も考えられます。親が、子どもの資金を宛にして資金を吸い上げることもあるのです。即ち、財務構造が大きく変動するケースが多いと言いますか、あるいは財務構造を変える為に行うこともあるのです。財産に変動がないので影響を受けないなどとどうして言えるのですか?親子一体であるいは親の意向で資金操作できるようになるんですね。

       ということで、やはり株式交換・移転の際にも、債権者保護手続をすべきものと思います。債権者保護手続も随分簡略化されました。原則は、官報公告&知れたる債権者には個別に債権者異議申述催告書を送付して異議の申述を催告しないといけませんが、例外の方法がありますね(昔はなかったですが)。即ち、官報に加え会社公告紙(日刊新聞)か電子公告で公告すればよくなりましたね。例外の方法を行えば良いのですね。

公告方法を、官報と規定している会社は、組織再編の総会特別決議の承認を取得する、一つ前の議案で、公告方法を、日刊新聞紙に変更しないといけませんけれども、個別催告手続よりはるかに楽ですね。個別の催告手続は大変です。債権者名簿を作成して催告書を送ります。郵便代もかかりますしね。債権者が多数いるときは、手間も大変です。勿論、これらは登記の添付書類になりますからね。また、債権者が異議をとなえることは、現実的には非常に少ないですね。

○ 現実的には、債権者にも株式交換・移転の組織再編のときには、挨拶状をおくりますし、重要な債権者にはきちっと説明しますからね。まあ、実は公告などまず見てませんね。でも制度としては、債権者保護手続(現実的に機能しているかは別として)があっても良いと思います。


米国連邦破産法について②

2009-05-10 21:47:04 | 商事法務

       前回連邦破産法(倒産法)の骨組みを述べました。今回は、Chapter 11(更正)について調べましたので、その概要を書いてみたいと思います。

(1)  手続の開始

債務者又は一定の要件を満たした債権者が破産裁判所への申し立てにより開始。大半は債務者の自己申立(Voluntary Case)なので、以下は自己申立のケースを念頭に置いて記載します。

自己申立と同時に救済命令(Order for Relief)は発せられる(債権者による強制申立=Involuntary Caseでは、Order for Reliefは自動的には発せられない。債務者の異議申し立ての場合は、Trialの後一定の状況があれば発する事になります)。救済命令は

、単なる手続の開始決定であり、自動停止(Automatic Stay)という効果が生じるこれにより担保権実行などの手続が出来なくなる。尚、債務超過・支払不能は、自己申立の要件とはなっていない。

(2)  債権者委員会(Creditor’s Committee)-無担保債権者による組成等

無担保債権者の中から、債券額上位7名が、裁判所により選任。利害関係人から要求されたときは、他の債権者委員会(例えば担保債権者委員会)や株主委員会が組成される場合もある。債権者委員会は、債務者の調査をしたり、必要有る場合には管財人の任命を要求したりと、倒産事件の管理運営に重要な役割を果たす。債権者集会が開催され、債権者委員会の委員長(Chairman)又は連邦管財官が、その集会の議事運営を行います。

(3)  管財人(Trustee)-選任されない場合もある

  原則として、管財人無しに、債務者自身が裁判所の監督のもとに、債務者の財産を引き続き占有し事業を継続します(=Debtor in Possession)。しかし、利害関係者等の申立により、裁判所が選任の必要有りと判断した場合は、連邦管財官又は破産裁判所が、管財人を選任します。その他、詐害行為(Preferential Transfer)、不適切行為等が疑われるときは、SEC/連邦管財官/利害関係人の申立に基づき、調査の為に検査官(Examiner)が裁判所により任命されます。

(4)  債権の届出と分類

 債務者が、債権者リスト、債権・債務リスト及び経理状況報告書を作成し提出します。これが倒産債権としての届出がなされたものとみなされ、債権者自身が改めて届出の必要はありませんが、慣行として(やはり心配だから)届けているようです。倒産債権は、種類毎に、担保債権、無担保債権、社債権などに分類(class)されます。この分類が、更正計画案(Plan)に大きく影響します。この分類毎に同一に扱われるわけですね。

(5)  更正計画案(Plan)-原則債務者が作成

更正計画案は債務者が作成し裁判所に届出し認可Confirm)されますが、管財人が選任されたとき等は管財人が作成します。正式な更正手続に入る前に更正計画案(Pre-filing Plan)を作成し、多数の合意を得たあと、少数の異議有る債権者に強制力を持たせるために、正式に更正手続を裁判所に申立認可を貰うことも結構行われているようです。今回のクライスラー等はこのケースだと思います。

  更正計画案は、Class毎の債権者により承認(Acceptance)されますね。債権者の過半数&債権額の2/3以上の賛成で承認ですね。

(6)  更正計画案の認可(Confirmation)と実行

 裁判所により、更正計画案が認可されると強制力を持ちます。債務者は、その計画通り実行する義務が生じます。この認可により、債権者へのそれまでの債務は免責(Discharge)されるわけですね。


米国連邦破産法について

2009-05-04 09:19:19 | 商事法務

       最近話題の米国連邦破産法について、よく報道されていますが、どうなっているのか知りませんので、少し調べて見ました。これは私の勉強ノートですね。

       旧連邦破産法は、1898年に公布され、1938年にはChandler Actとして知られている第10章会社更正(corporate reorganization)が追加挿入されました。これが日本の会社更生法(昭和2767日法律第172)のもとになったわけですね。

現在の法律は、1978年に大改正され1979101日より施行されたBankruptcy Reform Act of 1978及びその後の一連の改正を経て、今日に至っています。Bankruptcy=破産と訳しますが、清算型手続と再建型手続を含んでいますので、Bankruptcy=倒産のほうが良いですね。

       会社法は州法なのに、倒産法は連邦法ですね。倒産は、当然全米に及ぶからでしょうね。合衆国憲法に根拠がありますね。そうかといって州法で倒産に関する法律がないかと言うと、有るようですね。即ち、連邦倒産法でカバーされない倒産手続は州法でカバーする訳ですね。その手続とは、和議(Composition)、債権者の為にする包括的譲渡(general assignment for the benefit of creditors)、あるいは収益管理人の選任(appointment of receivers)等ですね。

       合衆国憲法8条を一部抜粋すると以下ですね。

Section. 8. The Congress shall have Power To lay and collect Taxes, Duties, Imposts and Excises, to pay the Debts and provide for the common Defence and general Welfare of the United States; but all Duties, Imposts and Excises shall be uniform throughout the United States;

To establish an uniform Rule of Naturalization(帰化), and uniform Laws on the subject of Bankruptcies throughout the United States;

帰化と同じ条項に規定されています。面白いですね。どうしてそうなったのかご興味のある人は、勝手に調べて私に教えて下さい。

       連邦倒産法の構成は、以下のChapters(章)からなっています。

     Chapter 1 総則 (General Provisions)

     Chapter 3 訴訟手続 (Case Administration)

     Chapter 5 債権者、債務者、及び財団 (Creditors, Debtors, and the Estate)

     Chapter 7 清算 (Liquidation)

     Chapter 9 地方公共団体の債務整理 (Debt Adjustment of a Municipality)

     Chapter 11 更生 (Reorganization)

     Chapter 12 定期的収入のある農家もしくは漁師の債務整理 (Adjustment of Debts of a Family Farmer or Family Fisherman With Regular Income)=1986年に追加

     Chapter 13 定期的収入のある個人の債務整理(Adjustment of Debts of an Individual With Regular Income)

     Chapter 15 国際倒産 (Ancillary and Other Cross-Border Cases)

章が奇数しかないのは、将来の追加の為に空けてあるのですね。そして86年には12章が追加されました。1/3/5章は通則。7章は清算型手続、11章は再建型手続ですね。条文は、Chapter 1なら101条からスタート、Chapter 7 = 701条、Chapter 11= 1101条からスタートするようになっていますね。

全文は、コーネル大学ロースクールのWEBに掲載されていますので、読みたい方はご覧になっては如何でしょうか。↓

http://www.law.cornell.edu/uscode/11/usc_sup_01_11.html

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