まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

表明保証その他について

2017-04-30 11:10:33 | M&A
○ 前回株式取得・買収契約(=SPA)の構造について書きました。今回は、その契約の中で重要な売主の表明保証やその他注意点等について具体的に2-3の例を挙げて解説しましょう。

 売主の表明・保証例
5.6 (前回のBlogの条文番号) Financial Statements
Set forth on Schedule 5.6 (SPA添付のSchedule)hereto are;
(i) the unaudited balance sheet and profit and loss statements of the Company as at and for the six (6) months ended June. 30, 2017, and
(ii) the audited balance sheet and profit and loss statements of the Company as at and for the year ended Dec. 31, 2016.
All of those financial statements have been prepared in accordance with generally accepted accounting principles (GAAP) applied on a consistent basis throughout the periods indicated and present fairly the financial position of the Company as of the respective dates thereof and the results of its operations for the periods then ended.

Except as reflected in such financial statements or as otherwise referred to in this Agreement or the Schedules hereto, the Company has no material debts, obligations, guaranties of the obligations of others or other liabilities, contingent or otherwise.
→簿外負債は無い旨の保証文言は必須

5.12 Product Warranties
There are no material claims outstanding, pending or, to the best knowledge of the Sellers and the Company, threatened for breach of any express warranty relating to any Products manufactured, sold or delivered by the Company.
→下線部は表明・保証責任の限定要因。「Knowledge qualifier」と言います。弁護士が意地になって拘る文言ですね。実際上は、この条項で訴訟が起こらない限り(起こる可能性は殆どない)、下記の2) or 3)ならあまり気にする必要はない。
1) To the constructive knowledge of Seller=知っておくべき知識と書いても、相手は受けない。
2) To the best knowledge of the Sellers
3) To the knowledge of the Sellers (上の2)との差異は、まあ「気持ち」ですね)
4) To the actual knowledge of Seller
5) To the actual knowledge of A-san, B-san and C-sanとしてきた企業もありますね。←これでは範囲が狭すぎますね。

5.24. Disclosure (入札方式の売却では、記載した表明保証以外は一切責任を負わないという規定が入ってきます。従い、下記のような条項を主張しても、なかなか入りませんね)
The representations and warranties contained in this Agreement and the information contained in the Schedules, in the certificates required to be delivered pursuant hereto and in other written documents furnished to the Buyer in connection with the transactions contemplated hereby are true and correct in all material respects and don’t omit to state any material fact necessary to make the statements contained therein not misleading. All information contained in any document which has been given or confirmed in writing by the Sellers and/or the Company or their directors, employees or advisors to the Buyer or its directors, employees or advisors in the course of the negotiations leading to this Agreement and due diligence investigations carried out by or on behalf of the Buyer was when given, and remains, true and accurate in all material respects and is not misleading whether because of any omission or ambiguity or for any other reason. There is no fact known to the Sellers or the Company which materially adversely affects or in the future may (so far as the Sellers and the Company can now reasonably foresee) materially adversely affect the Business or the condition, properties, assets, operations or prospects of the Company.

No Material Adverse Change /Effect (No MAC or MAE:重要な悪影響の無い事)
契約締結からClosing迄の間に、対象会社にMACが起こればClosingをしないという条項。定量化は難しいですね。Force Majeure (不可抗力)は、契約実行が不可能な事。MAC・MAEは、対象会社の企業価値が著しく毀損される事象が起こる事と一応は、区別できるが、実際は難しいかもしれない。経済状況の相当の悪化はForce MajeureではないがMACになるか?⇒普通はならないと思われます。

 売掛金と棚卸資産(流動資産)
DDでは回収見込みのない売掛金(年齢調べ重要)が入っていないか、また棚卸資産に不良資産(動きの無いもの)が入っていないか要チェックですね。金額と同時に、どういった管理がされているかのチェックも重要ですね。全部はチェックできないのでランダムチェックとなります。棚卸資産と帳簿は一致しないのが常識ですが、大体一致しているのか、かなり違っているのかきちんとチェックしましょう。→帳簿・数字が信用できるかを調査する。帳簿がいい加減なら全部いい加減なので、その場合は買収の中止も考えないとね。

● 税務申告と支払
税額確定時期と納税時期はずれます。後から追徴・加算税が出てくる。補償条項(期間は税務時効まで)でカバーすることになります。

他にもいろいろありますが、弁護士さんの邪魔をするのもこれぐらいにしておきましょう。

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株式取得・買収契約(SPA)の構造

2017-04-04 22:57:48 | M&A
○ 今回は、株式取得契約の構造・全体像の話です。これは一例です。定義の後すぐに、2条で株式売買を記載するのが一般的ですが、そのあとは人により記載の順序が違います。表明保証・Closingの前提条件、Closingという順番で書く人もあります。それぞれ書く人のスタイルというがありますのでね。

○ 僕が、draftしたSPAで順序を大幅に変えた弁護士がいました。全く失礼な弁護士ですね。中身はあまり変わらないのにね。その弁護士はRep & Warrantyで、流動資産の回収・売掛金のRep & Warranty Clauseを書いたら、その項目に買掛金を入れてきました。大手弁護士事務所の弁護士で、M&A専門とか書いていましたが、Rep & Warrantyを何のために書いているのか、基本的理解ができていないですね。

○ また、確定価格の売買価格を書こうとしたら、買主である当方を無視して勝手に弁護士に連絡して、契約書の価格条項を変えた、東京駅近辺のブティック型FAがいましたね。月の途中のClosing日現在で、株価の算定を一定の方式で見直して、事後に株価を最終にするとのアイデアですね。これは確かに理論的です。Closing日現在の価格を算定するわけですから。しかし、実務的には100%間違いです。例えば、株主総会の議決権行使をする株主は、総会開催日の株主が理論的です。しかし、そんなことできますか?基準日現在ですね。一般的には、事後調整はShare Purchaseの時はやらない方がいいです。勿論、SPA締結から日時が過ぎて、財政状態がかなり変化したときは別ですけれどもね。

○ では、本題の契約書の構造ですね。重要な事はDDの結果を、closingの前提条件・売主の表明・保証に記載する事ですね。生産設備・生産・販売の状況を詳細把握して、買収後の経営(改善点・相互補完等)もイメージすることですね。

1. 定義と解釈

2. 株式売買
2.1.  株式の売却
2.2.  売買価格・代金支払(価格調整)
2.3.   質権等担保の不存在

3. クロージング実行の前提条件
3.1. 買主の義務履行(代金支払)の前提条件
3.1.1 表明保証の真実・正確性(契約時とClosing時)
3.1.2 規定事項の履行
3.1.3 取締役会等手続等の履行
3.1.4 継続的情報提供等
3.1.5 第三者(銀行等)の同意
3.1.6 取締役の辞表提出(Closingの時)
3.1.7 差止命令の無いこと
3.1.8 許認可取得(Change in Control条項等)
3.1.9   登録・許認可(企業結合)
3.1.10   Transaction Documents(JV契約・取引契約等)
3.1.11 No Material Adverse Change (No MAC)

3.2. 売主の義務履行(株式売却)の前提条件
3.2.1 表明保証の真実・正確性
3.2.2 規定事項の履行
3.2.3 取締役会手続等の履行
3.2.4 差止命令の無いこと

4. クロージング
4.1. クロージング日
4.2. クロージングの手続き(上記3の証明書提出等)
4.3. クロージング後の手続(登記手続等)

5. 売主の事実の表明と保証(DDで調べた結果を反映)
5.1. 対象会社の組織・存在の有効性 
5.2. 資本金・発行済株式と持株比率等
5.3. 売却対象株式の完全な所有権保有.
5.4. 売主は正当な会社で本契約締結権限有
5.5. 第三者(銀行等)の同意の必要性
5.6.  財務諸表は真実正確
5.7. 資産の正当な所有権(担保権はScheduleに記載)
5.8. 不動産の正当な所有権(担保権はScheduleに記載
5.9. 機械・装置の正常稼働
5.10. 売掛金と棚卸資産(流動資産)
5.11. 製品の安全性・品質事故は2年間起こしたこと無
5.12. 製品の品質保証Product Warranties
5.13. 訴訟の有無(ある場合はScheduleに記載)
5.14. 法令順守している。 
5.15. 関係機関の許認可
5.16. 労使関係が正常(争議Scheduleに記載)
5.17. 従業員の厚生年金付保・ビザ取得等
5.18. 銀行等との担保契約一覧をSchdule記載(それ以外無)
5.19. 利害関係者との取引(利益操作?。あればSchedule記載)
5.20. 税務申告と支払(納税義務の履行。当局との争い無し等)
5.21. 火災保険等の付保
5.22. 環境関連許認可(一覧表はScheduleに)
5.23. DD実行日より契約日迄に重要な変更は無い
5.24. 開示情報は真実正確で全ての主な事項を網羅(普通は、売主はこの条項は受けない)

売主の表明保証は、案件ごとに考える。上記は、一般的な事だけ記載しました。

6.買主の事実の表明と保証
 
7.クロージング前後の約諾事項
7.1.  事業の正常な継続
7.2. 売主の約諾事項
7.3. 情報・人へのアクセス保証
7.4. 一定事項の買主への通知
7.5. 従業員引抜禁止
7.6. (一部買収=JVA等の)関連契約の締結(Closing時)
7.7. 現行の親会社サービスの継続

8.競業避止義務(売主の同種・同一事業の禁止)
      
9.補償
9.1. 売主の補償 (税務追徴・従業員訴訟、表明・保証違反の場合の補償。)
9.2. 買主の補償
9.3. 補償の上限(米国では、売却代金の2-3割)/下限有り

10.守秘義務
11.プレスリリース

12.契約解消 (Closing前のみ) Closing後は、補償
13. 紛争解決
14.準拠法(その会社の所在地) 
15.その他(費用・通知・変更・分離性・譲渡禁止等)

Disclosure Schedule ⇒DDでの発見事項を記載。Schedule記載により売主の表明・保証責任違反を免責とする効果があるので注意。契約時で確定。Closing迄にupdateを許容すると、免責追加となる。

まあ、これぐらいでしょうか。



コメント (1)
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