○ 株主総会を開催するには招集手続が必要ですね。これをきちんとしないと、総会決議取消事由となる場合があります。しかし、全株主の同意があれば招集手続を省略して行っても有効であると最高裁の判例で認められていました。今度の会社法にはきちんと規定されました。300条ですね。「前条の規定(招集の通知)にかかわらず、株主総会は、株主の全員の同意があるときは、招集の手続を経ることなく開催することができる。ただし、第298条第1項第3号(書面による議決権行使を認める場合)又は第4号(電磁的方法によって議決権を行使を認める場合)に掲げる事項を定めた場合は、この限りでない。」。
○ しかし、「前条の規定」は、招集手続のすべてをカバーしていませんね。即ち、前条以外の招集関連の手続は、行わなければならないということになりますね。基準日の規定(124条)ですね。まあ、こんなことを言うのは、かなりクレーマに近くなってきましたね。普通、定款には、定時株主総会の基準日の規定を記載しています。ですから定時株主総会では問題はありません。しかし、緊急に株主総会を開催する必要が生じたときですね。即ち臨時株主総会ですね。124条1項及び3項では、以下の様に規定(一部省略)しています。
1項 株式会社は、基準日を定めて、基準日において株主名簿に記載され又は記録されている株主をその権利を行使することができる者と定めることができる。
3項 株式会社は、基準日を定めたときは、当該基準日の2週間前までに、当該基準日及び前項の規定により定めた事項(基準日株主が行使することができる権利の内容)を公告しなければならない。
尚、976条では、公告若しくは通知をすることを怠ったとき、又は不正の公告若しくは通知をしたときは、100万円以下の過料に処すると規定されています。
○ まあ、株主が数人以下の会社が、基準日の公告をまともにやっているかと問われると、殆どやっていないですね。招集手続もきちんとしていない会社が基準日を決めて公告しているとは、考えられませんね。また、一声かければ委任状もって集まれる数人の株主に対して公告する意味もありませんね。
○ 参考までに、最高裁の判例は以下ですね。「招集権者による株主総会の招集の手続を欠く場合であっても、株主(代理人も可)全員がその開催に同意して出席したいわゆる全員出席総会において、株主総会の権限に属する事項につき決議をしたときは、右会議は有効に成立する」最判S.60.12.20民集39巻8号1869頁)。多分このときも、基準日公告もしていないでしょうね。
○ 上記は全員出席総会でしたが、実態としては、株主全員の同意書を取得し、株主総会も、実際開催せずに書面で議事録を作成して、総会を開催していた例が多かったですね。この実態が今度の会社法では反映されましたね。
○ 基準日の事を無視して、整理すると以下の様になります。
① 300条は招集手続の省略ですね。全員の同意があるときは、招集の手続を経ることなく開催することができるとしています。即ち、全員出席とは書いていませんので、一部の株主が総会に欠席する場合でも、その株主の同意があれば、招集手続無しで開催出来ますね。
② 最高裁の判例では、招集の手続を欠いても、株主全員がその開催に同意して出席する全員出席総会は有効に成立するとしていますので、有効ですね。300条は招集手続の省略ですので、但し書き以下もあてはまりません。即ち、書面決議・電磁的方法による決議も出来るとしていた場合でも、全株主が出席している以上、総会としては有効ということになりますね。
③ 従来、全株主の同意を得て、株主総会自体を開催せずに書面で決議していた例が多いと言いましたが、今度の会社法には、これを認める規定が出来ましたね。319条の株主総会の決議の省略の規定ですね。即ち、「取締役又は株主が株主総会の目的である事項について提案をした場合において、当該提案につき株主の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたときは、当該提案を可決する旨の株主総会の決議があったものとみなす。」また、320条には、株主総会への報告の省略の規定があります。即ち「取締役が株主の全員に対して株主総会に報告すべき事項を通知した場合において、当該事項を株主総会に報告することを要しないことにつき株主の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたときは、当該事項の株主総会への報告があったものとみなす。」ですね。
○ では、もとに戻って基準日・基準日の2週間前の公告との関連はどのように考えれば良いのでしょうか。まあ、300条には、前条とだけ書いていますが、株主全員が同意する以上、基準日公告をする必要もありませんので、124条の規定は適用されないと考えるんでしょうね。
○ 株主が、数社のときで、株主がまずあるいは殆ど変動しない会社に、そもそも基準日・基準日の事前公告が必要かどうかですね。非公開会社(=全株式譲渡制限会社)では、譲渡承認も必要ですし、会社の知らないうちに株主が変動し突然名義書換請求されるわけでもありませんね。`124条1項の変更アイデアは「基準日を定めたときは、当該基準日の二週間前までに、当該基準日及び前項の規定により定めた事項を公告しなければならない。ただし、公開会社でない株式会社については、基準日現在株主名簿に記載され、若しくは記録された株主に、基準日後通知することをもってたりるものとする」ぐらいで良いのではないかと思います。遵守されていない基準日公告の規定を、実害の無い範囲で実態に合わせるということですね。
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